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ミュンヒハウゼン症候群

みゅんひはうぜんしょうこうぐん

周囲の関心を引こうとして、故意に自身を傷つけたり、根拠なく病気などと偽る精神障害
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概要編集

虚偽性障害のうち、身体的な症状(たとえば、熱が下がらない、頭痛が続く、吐き気がするなど)を強く訴える。時には具体的な病名について言及し、「この症状は(実際にはない、もしくは軽いもので特に継続していないのに)この病気ではないか?」というように医師に訴えることもある。そして、その訴えが長期にわたって慢性的に続いている状態を指す。

由来は虚言で有名な「ミュンヒハウゼン男爵」。


虚偽性障害編集

虚偽性障害というのは、病人や怪我人でないにもかかわらず、「患者になりたい(患者として心配してもらいたい)」などの理由から病気を意図的に装う精神障害のことである。

同じく意図的に病気のふりをする「詐病(仮病)」とは異なる。たとえば「学校に行きたくないからお腹が痛いことにしよう」や、「怪我をしたことにして保険金を巻き上げよう(当たり屋)」という、「社会的、経済的な利益を得ようとする」ものは詐病であるが、虚偽性障害は「病気になって周りに心配してほしい」、「注目を集めたい」というような考えから起こしてしまう行動であるといえる。


「実際に症状が出ているが、日によって症状の程度がまちまちで元気に見える日もある」という場合や、「本人は真面目に訴えているつもりだが、周囲の理解がなく認めてもらえない」という場合と混同されることもある。しかし、基本的には「症状がない、あるいは非常に軽度だが、針小棒大に症状を訴え、病気であることをアピールし、注目を浴びることに大きな喜びを感じる」というのが虚偽性障害の特徴である。


症状や行動編集

病気を訴え受診しても、実際に検査をすればとくに病気は見つからない。そのため多くの医師は「様子を見てください」と説明したり、本人が訴えるような症状を改善する薬を処方したりして、その場を収めようとする。

しかしミュンヒハウゼン症候群の患者は「自身が病気である(と言ってほしい)」と考えているため、新たな病気を模索したり、既に罹患したことがある病気の症状を大袈裟に伝えたりする。また、自分にとって満足する診断が出るまで病院をはしご(いわゆる「ドクターショッピング」)する者や、時には薬を乱用したり、自傷したりして「傷病を負っている状況」を自ら創り出してしまう者もいる。

極端な場合、採取した検体(尿や血液など)を病人のものとすり替える、正確な診断ができないように医師や看護師などを妨害しようとする、といった行動を起こすこともある。


病院や診療科をコロコロと変えることも多々あるため、自発的に「ミュンヒハウゼン症候群かもしれない」として精神科などで診断されるというよりは、ある病院で受診した際、不審に思った医師が過去の通院歴を調べてわかる、という場合や、通院・入院先での問題行動がもとでわかる、という場合がよく見られる。


自傷により意図的に症状を創り出そうとする過程で、薬や手術の副作用・後遺症が蓄積し、本当に病気になってしまうということも少なくない。


病的な(ここでは、自分の意思でコントロールできない、という意味)嘘つきとして捉え、「虚言癖」の一種とする見方もある。


原因編集

発症の原因は人によって様々だが、「幼少期に入院した際、周りがとても心配してくれた」(または、そのような兄弟や友達がいた)ということを訴える患者がいる。また、身体的・精神的虐待によるPTSDを抱えている患者もいる。

(ミュンヒハウゼン症候群が原因ではない場合も含めて)周囲との人間関係が不安定であることも少なくない。自己肯定感が低く、自己愛性人格障害境界性人格障害といった人格障害を併発していることも度々見られる。


代理ミュンヒハウゼン症候群編集

本人ではなく、自分の子供や配偶者、場合によっては患者など身近な人を故意に傷つけて、周囲の注目を自分に集めようという精神障害。

一見すると過保護と類似しているが、過保護は「愛するあまり、極端に行動を制限し支配的な言動をとってしまう」のに対し、代理ミュンヒハウゼン症候群は「献身的に看病する自分を注目して欲しい」という行動原理で動くという違いがある。


その特性上、「病気の子供を健気に看病する親」を装って、子供を病気だと偽り(場合によっては意図的に病気を発生させて)注目を集めようとする親が取り上げられることが多く、ここから児童虐待毒親と関連づけられることも多い。

例として、ある母親が自身の子供を難病であると訴え、子供に毒を与えたり無理矢理手術を受けさせたりした、という事件が実際にアメリカなどで起きている。(※後述)

日本でも自分の子供に無理に薬を飲ませたり毒物を点滴に混ぜたり、といった事件がある。また、2006年に発生した秋田児童連続殺人事件においても、犯人(亡くなった女児の母親)が代理ミュンヒハウゼン症候群ではないかとインターネット上で指摘する意見が多数出されていた。


関連動画編集


アメリカで2015年に起こった「ディーディー・ブランチャード殺人事件」を元に製作されたhuluオリジナルドラマ『The act』の予告映像。


ディーディーは健康体のはずの娘が重い病気であると主張し、ほとんど監禁するような形で長期間自宅で過ごさせ、身体的・精神的な虐待を日常的に加えていた。一方で家庭外では病気の娘を献身的に看病する母親として振る舞い、周囲から好意的に評価されるなど、代理ミュンヒハウゼン症候群の兆候が見られた。

ある時、娘はインターネット上の交流サイトで知り合った男性と恋愛関係になり、彼と結託して母親の殺害を計画。男性が実行役となり、殺害後に2人で逃亡するも逮捕・起訴された。


アメリカでは『The act』以外にもこの事件を題材に様々なドキュメンタリー、ドラマが制作されているほか、日本でもYouTube上などでこれを参考にしたと推測される動画がいくつか投稿されている。


関連タグ編集

精神疾患/精神障害 自傷


天久鷹央の推理カルテ:第一作目にこの症状を取り扱ったエピソードがある。


着信アリシリーズ:第1作目「着信アリ」において、この症状が物語の重要なキーワードとなっている。

関連リンク編集

MSDマニュアル家庭版「自らに負わせる作為症」

発達ナビ「ミュンヒハウゼン症候群とは?」

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