強くなりたければ、肉を喰え
戦士たちよ───肉を掲げろ!
概要
小説家になろうで連載していた作品で、現在は完結済み。
2023年9月29日にGCN文庫より書籍化、ヤングアニマルZEROにてコミカライズ版が連載。
原作:駄犬 イラスト・キャラクター原案:芝
漫画:鈴羅木かりん
書籍版は途中から加筆の割合が多く、特に断りが無ければ、本記事ではWeb版の内容を記載する。
暗殺の脅威から身を守る為、仕方なく人体に有害なモンスターの肉を食っていた主人公が、いつの間にか最強になる…………のだが、彼を慕うあまり脳筋&蛮族と化した周囲の暴走に振り回されていくのが特徴。
ストーリー
※以下公式サイトより引用
ファルーン王国の第一王子であるマルスは、12歳ながら暗殺に怯える毎日を過ごしていた。
食事には高確率で毒が仕込まれているため、城外の森でモンスターを狩り、その肉を食べて飢えをしのぐ日々。
そんなマルスの前にある夜、大剣を担いだ赤髪の美女が現れ告げる。
「おまえ、見込みがあるな。私の弟子になれ」
たった一つの勘違いから、少年は(全く望んでないのに)最強の王へと成り上がる――!
登場人物
- マルス
ファルーン王国第一王子だが、権力を掌握しつつある宰相のガマラスに命を狙われており、毒殺を回避しつつ飢えをしのぐ為、夜な夜なモンスターを狩っては食して命を繋いでいた。
ある夜、人類最強格の剣聖、カサンドラに無理矢理弟子にされてしまい、本来有毒で食用に適さないモンスターの肉が、摂取し続ける事で強さの限界を超越できる事を知る。
耐性が付き始め、その上カサンドラの異常過ぎる鍛錬によって無双の強者となるのだが、その強さと人柄に心酔した周囲が暴走し始め、やがて大陸統一の野望を持つ狂王として誤解される等、被害者枠でもある。
とは言え、傍から見れば、『武力で王位簒奪&貴族血祭りにした挙句、他国にその強さを誇示しては返り討ちにし、属国にしては妻達とその間に生まれた子を王に据える』という、どっからどう見ても野心溢れる覇王にしか見えないのも事実。
- フラウ
マルスの婚約者にしてヒロイン。
生後間もない時期に魔法を炸裂させる等、魔法の天才として知られており、ファルーン王国の主力である魔法師団の中心人物。雷の魔法が得意なので、『雷帝』の異名を取る。
だが、本人は魔法にしか興味が無く、王国最強の称号もマルスとの婚姻もまるで眼中になかった。
しかし、実験の為に視覚共有をマルスに施していたので、そこからマルスの異常な鍛錬を知り、次第に興味を抱いていく。因みに魔法にしか興味がないと書いたが、実際は魔法の研究と実践の為なら、いくら人倫に反しようが気にも留めない典型的マッドサイエンティスト。その為、敵対者を自身の魔法の試し撃ちの為の実験体か木偶程度にしか考えておらず、暗殺者をゾンビ化させて送り返す等、いちいちやる事がえげつない。
彼女もモンスター肉で成長限界を突破し、マルスのクーデター計画(マルス本人は全く乗り気でない)を機に、完全にマルス側につく。
後に第一子を授かる。
- カーミラ
大国『ドルセン』の国王の妹である姫で、同時に最高戦力である「五天位」の序列三位に位置する実力者。
非常に傲慢で冷酷無慈悲な為、気紛れで人の命を奪う危険人物。
剣士としても魔導士としても才能に恵まれ、重圧をかける魔眼も生まれ付き持っており、才能にあぐらをかいて鍛錬を怠った状態でも凄まじい実力を秘めた魔法剣士。
野心家でもあり、玉座に座る事を諦めておらず、その為の踏み台として単身ファルーン王国に乗り込むが、上層部の戦闘狂達が想像を絶する程イカれている事に気付くも手遅れで、そのまま捕虜になり紆余曲折あってマルスの妻になる。
『狂乱の皇女』、または『ドルセンの不良債権』と悪名高かったが、無茶苦茶な鍛錬につきあわされた挙げ句、モンスター肉摂取の強制により、「望んだ物を食べられる環境が以下に幸福だったか」、身をもって知る事になり、おまけに夜にはケダモノになったマルスに完全に打ちのめされる始末。
フラウとの決闘で敗北後、彼女の事は「お姉さま」と呼び、夫であるマルスとの関係も、色々あって心がへし折れた事もあってか、意外と仲は良好。
- カサンドラ
マルスの師匠。
『剣聖の赤鬼』の異名を持ち、赤い髪と大剣が特徴。
その戦闘能力は最強クラスで、単独で国一つ滅ぼせる程常軌を逸している。
実はモンスター肉での強化をマルスよりも先に実践しており、知らずにモンスター肉を食していたマルスを気に入り弟子にする。
しかし、その実態はスパルタと言うのも生温い鍛錬の強制で、いくら耐性が付き始めても不味い事に代わりなく、しかも効率が悪いと言って生食を強制。
おまけに毒状態になる呪いの指輪や、重力魔法を装着者にかける囚人用のアイテムを付けさせ、極限まで肉体への負荷を高め続けて鍛錬を継続させ、サボったら最悪殺される。
とある理由から10年程歳をとっておらず、色々あってマルスの第三王妃の地位を得る。
書籍版では胎教として、臨月の状態でマルスとガチ戦闘をやらかし、途中で産気づいて出産したらまた戦闘を開始する等、色々とおかしい。
- シーラ
大国である『バルカン国』出身で、父親が国を守る大貴族の「七星剣」の一人であるSランク冒険者。
『双剣』の異名通り、二刀流の実力者であるが、ファルーンの影響によって各国の緊張が高まり、故郷から戻る様に促されてパーティーを解散。
元より実家を継ぐはずの弟よりも強かった為、故郷とのしがらみに辟易して国外で活動しており、なんとかして戻らない言い訳を考えていた時、丁度ファルーン王国で王妃を募集(という名のバトルロイヤル)を目にし、父に「ファルーン王妃になる」と言ってしまう。
マルスの噂は当然知っており、本当は結婚等したくなかったが、カサンドラが優勝した際、彼女も第四王妃に迎えられる事に。
あっという間に流されたが、子供が利用される事を恐れて懐妊を伏せていたが、バルカンとの戦争回避の交渉役として派遣された際、マルスの言葉を「懐妊の事実を知った上でバルカンを手中に収める為に派遣された」と勘違い。
被害を最少に抑えられる事もあり、生まれてくる子供を次代の王に据える為、実家を含めた勢力を味方にしてクーデターに成功する。
妃の中で唯一普通の感性なので、マルスとの関係自体は良好。ただし夜は身が持たない。
- オグマ
ブレーキの壊れた忠犬筆頭。
ファルーン王国のとある貴族の三男だったが、横暴で自由の無い貴族社会に嫌気が差し、実力主義の武闘派組織『ハンドレッド』を仲間達と創設。
マルスと出会いその実力に惚れ込み、更に強さへの渇望からモンスター肉の摂取まで始めた為、カリスマはあるが脳筋だった事もあってメキメキ実力を伸ばし、その結果クーデター時に仲間と共に貴族を血祭りに上げる暴挙に出てしまい、以降マルスの周囲の暴走に拍車が掛かっていく。
その後も主力の一人として戦場で活躍しているが、モンスター肉の摂取による強化を体系化してハンドレッドに組み込んだ事で、脳筋連中がマルスの平穏を悉くブチ壊していくハメに。
- ルイーダ
A級冒険者パーティー『銀翼の鷹』の元メンバー。
回復魔法が得意な僧侶の女性で、クーデター時には予備戦力として王国側に召集されるも、マルス達の異常な戦力に圧倒され敗北。
その後ハンドレッドに無理矢理スカウトされ、闘技場でハンドレッドのメンバーによる、ガチの殺し合いに等しいレベルの戦いによる負傷者、または死亡者の対処を任される。
当然モンスター肉関連でのあれこれにドン引きするが、毎日腕が飛び、完全な死体に仕上がったメンバーの対応に当たっていた為、強化と激務の連続で腕が上がっており、以前は無理だった蘇生魔法も確実に成功するレベルになっている。
思うところはあったが、何だかんだで現状を気に入る、というか慣れてしまった常識人枠。
- ガマラス
ファルーン王国宰相。ガマガエルめいた肥満体の男。王国の政治を牛耳って私し、無能な腐敗貴族達をのさばらせている元凶……と思われていたが、実際は高潔な愛国者であり、王国弱体化の原因である王侯貴族を道連れに自滅し、後顧の憂いを断とうとしていた真の忠臣。マルスの暗殺には直接関わっていなかったが、彼を危険視するが故に黙認していた。
ハンドレッドによるクーデターで処刑されそうになるが、マルスの鶴の一声で助命され(実際は政治に関わりたくなかったが故に、マルスは彼に丸投げした)宰相の位にとどまる事に。そのことに甚く感銘を受け、従来以上の愛国者&忠臣として辣腕を振るうようになった。因みに過剰労働の結果、贅肉は削ぎ落とされ、長身痩躯の仄暗い雰囲気を纏う美中年に変貌した。
- ファルーン王
マルスの実父。王国が腐敗貴族で弱体化する事になった全ての元凶。悪人ではないのだが、国王としてはあまりにも資質を欠いたとしか言えない絵に描いたような暗君。最終的にクーデターに際してマルスに即座に譲位した。
- ファルーン王妃
マルスの実母で作中では故人。野心家かつ自己中心的な毒婦で、王妃であるのをいいことに、自分の親類縁者を要職につけて傍若無人に振る舞ってい、結果的に国家を疲弊させた弩級の国賊。最終的にガマラスの策謀で王妃の座から引きずり下ろされ、「病死」した。
しかし王妃派閥の貴族は、マルスを旗印に逆襲を試みていたが、結局マルスにとっては「自国を害した腐れ寄生虫」でしかなく、容赦無く粛清された(因みにマルスは有能な最低限の貴族は残すつもりだったが、貴族大嫌いのオグマら忠犬連中が一族郎党皆殺しにしまくった)。
用語
ファルーン王国
本作の中心となる王国で、勇者が建国したと伝えられている。
貴族が王国の腐敗の温床と化しており、マルスも宰相一派の策略で命を狙われていた。
が、何やかんやでクーデターが成功すると全てが一変、平穏を望み玉座に興味の無かったマルスを嘲笑うかの如く、盛大に勘違いして暴走した周囲の人間達により、大陸全土統一を成し遂げる事になり、上層部の大半は戦闘狂か修羅しかいない魔境と化す。
ハンドレッド
オグマが仲間と創設した組織。
形式ばかり重視する貴族社会を嫌悪し、実戦形式で実力主義を重視している。
強さの順で数字が与えられ、当初は本名ではなく数字で呼び合っていた。
マルスが実力を見せた事で全員が彼に心酔し、やがて貴族達が無視できない規模にまで成長。
モンスター肉よる強化方法を組み込んだ事で、弱者のままでいる事を何よりも恥じる戦闘狂集団と化しており、調査の為に潜入した王国騎士団の要人まで取り込み、実質マルスの私兵としてクーデターを実行する。
ちなみにマルスは1の称号よりも上の0の称号として、ゼロスの名を与えられている。
カドニア王国
大陸制覇の最初の犠牲。
ハンドレッドを筆頭にモンスター肉強化を実践した強者達により、国内のモンスターが絶滅寸前、あるいはファルーン王国を回避しようとする等、生態系に洒落にならない変化をもたらした結果、隣国のカドニアにモンスターが流れ込み被害を被り、カドニアの王が賠償金を要求。
責任を感じたマルスはこれを呑むが、元々緩衝地帯としてモンスター討伐は義務である為、周囲の人間達は責務を放棄して金を要求するカドニアにブチ切れ、更にマルスの言葉を深読みした騎士団が、カドニアの制圧こそマルスの真意と捉えてしまい、あえてスタンピードを起こして王を暗殺する盛大なマッチポンプの結果、属国となってしまった。
とは言え、後の描写から王家の人間は大半が碌でもないようで、どちらにしろ命運が尽きる可能性があった。
ドルセン
合法的に掌握された?大国。
女神の末裔とされる王族の統治の下、長い歴史と列強国としての軍事力を誇る大国。
国土はファルーンの5倍。
緩衝地帯であったファルーンとカドニアの事実上の併合により、逃亡したカドニアの第一、第二王子達の懇願により、ファルーンとの小競り合いに発展。
国の最高戦力である勇士、『五天位』の内2名も派遣したが、結果は五天位を含め、多くの兵が戦死する大敗となり、国家間の軍事バランスが揺らぐ程の損害を被る事に。
その後のカーミラの一件に対し、ドルセンのメンツを保ちつつ穏便に済ませる為、マルスとカーミラの婚約が決定。
彼女の兄である国王は、ファルーンの強さとイカレ具合にドン引きしつつも受け入れる。
その後国王の弟がクーデターを起こし、国王が死亡した事でカーミラがドルセンに進軍。
有象無象の連合軍を壊滅させ、カーミラは国母の地位に就く事に。
書籍版では、国王の証である指輪がマルスを介してカーミラに渡り、ドルセンへの進軍の正当性が保証されている。