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ロリータ(小説)

しょうせつのほうのろりぃた

アメリカの作家、ウラジーミル・ナボコフによる小説。日本では「ロリータ・コンプレックス」の語源となったことで有名
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曖昧さ回避編集

変態紳士のこよなく愛する方なら→ロリータ

ファッションスタイルの方なら→ロリィタファッション

お菓子が食べたいなら→ホワイトロリータ


あらすじ編集

大学教授のハンバート・ハンバートは、少年の頃に初恋の相手だったアナベル・リーとの死別が未だに忘れられず、一度は他の女性と結婚したがそれも上手くいかなかった。

そんな彼が、ある日、アナベル・リーと面影のよく似た12歳の少女、ドロレス・ヘイズ(愛称:ロリータ。作中では「ロー」と呼ばれている)に出会い、一目惚れしてしまう。

ハンバートはロリータに近づくために、彼女の母親であるシャーロット・ヘイズと再婚する。その後シャーロットが不慮の事故で亡くなると、ロリータを連れ、自分たちの関係が発覚しないようにしながら、一年にわたってアメリカ中を旅する。

やがて2人は地元に戻ってくるが、ハンバートの理想の恋人になることを拒んでいたロリータが、突然、姿を消してしまう。

それから三年間、アメリカ中を探し回っていると、ある男と結婚したとの報告と経済的な援助を求める手紙がロリータから届いた。ハンバートはロリータの元に向かい、再び一緒に暮らすように求めたが、断られる。ハンバートはそれでも財産をロリータに渡すが、その際、三年前にロリータを連れ去ったのがクレア・クィルティという男で、ロリータが彼によっていかがわしい映画に出演させられた上に捨てられたという事実を聞かされる。

ハンバートはクィルティと会うと口論の末に射殺し、獄中で病死する。一方ロリータも難産の末、息を引き取った。


評価編集

この作品は当初、アメリカのいくつかの出版社に持ち込まれたが、その倒錯したテーマが理由で断られ(その中の数社の編集者は、作者の意図したものがなんなのかを作品から読み取ったが、やはり一般の読者にはポルノ小説としか受け取られないだろうと判断したらしい)、結局、フランスの有名な(というよりも悪名高い)ポルノ出版社であるオリンピア・プレスから1955年に出版された。


物語そのものは、「男性がとある一人の若い女性、あるいは少女を自分の理想通りに育てようとし、やがて破滅する」という、いわゆるピグマリオンもので、このような作品は他にも谷崎潤一郎の「痴人の愛」や、戯曲「ピグマリオン」(オードリー・へプバーン主演の映画「マイ・フェア・レディ」の原作)などがある。

また、語り手であるハンバート・ハンバートがかなり性格の歪んだ人物であるため、信頼できない語り手の一例ともなっている。


作者のウラジーミル・ナボコフは「不思議の国のアリス」のロシア語版を出すだけあって言葉遊びには定評があり、「ロリータ」でも冒頭は、


Lolita, light of my life, fire of my loins. My sin, my soul. Lo-lee-ta: the tip of the tongue taking a trip of three steps down the palate to tap, at three, on the teeth. Lo. Lee. Ta.

(ロリータ、我が命の光、我が腰の炎。我が罪、我が魂。ロ、リー、タ:舌の先が口蓋を三歩下がり、そして三歩めにそっと歯を叩く。ロ、リー、タ )


と、「Lolita, light of my life, fire in my loins.」がLとFの音を重ねた文章で始まり、続けて「Lo-lee-ta(ロ、リー、タ)」の部分では「Lo」がロリータのことを、「Lee(リー)」がアナベル・リーのことを示している。

また、母シャーロットが「Lo!」と言って怒るとロリータが 「And behold」と返す場面があるが、これも「Lo and behold!(いやはや驚いた!)」という言葉を二つのセリフに分けた会話であったりする。


他にも、メリメの小説「カルメン」が物語の下敷きとして使われているのだが、ラストでハンバートがロリータを殺すのではないか、と「カルメン」を読んだことのある読者なら予想するように伏線を張りつつ(「カルメン」では、最後にヒロインのカルメンが彼女に夢中になっていたドン・ホセに殺されてしまう)、そういう展開にはならないというミスリードがなされている。


このように、あちこちに遊びが散りばめられているのだが、特に言葉遊びは英語でなければ分からず、日本語版は訳者が苦労している上に、性描写や陰惨な結末、ナボコフ特有の突飛な比喩なども相俟って、日本での評判は「わかる人にしか分からない」という惜しいというか残念なもので終わっている。


三日の誤差編集

研究者の間で議論されていることに、三日の誤差というものがある。

ハンバート・ハンバートが刑務所で手記を書き始めたのは56日前だとし、その手記を世に出した(という、作中での設定)ジョン・レイ・ジュニア博士によると、ハンバートが亡くなったのは1952年11月16日だとしている。ところが、1952年11月16日から56日を逆算するとハンバートが逮捕されたのは1952年9月22日になるが、その日はちょうど行方知れずになっていたロリータから手紙が届いた日であり、本来なら逮捕されたのはその三日後の1952年9月25日だったはずで、そこがズレれているというわけである。

作者、あるいはハンバートの勘違いとして一蹴する意見もあるが、例えば、ハンバートが「お尋ね者ドロレス・ヘイズ」という詩の中でロリータの年齢を5300日と書いている一行があり、試しにロリータの誕生日から彼女が失踪した日を計算するときっちり5300日になる。

この尋常ではないハンバートのこだわりを考えると、実はロリータから手紙が届いた1952年9月22日以降の出来事は起きていなかったのではないか?という意見があり、それを裏付けるかのように、ナボコフがロシア語版と英語版の決定稿を作る際に、入念にチェックしているにもかかわらず、この時系列の矛盾を訂正せず、むしろ強調するように修正していたことがわかっている。

こうしたのことから、ナボコフ研究者の間で「修正派」と呼ばれるようになったこのフィクション説は、容易に無視できない謎となっている。


エドガー・アラン・ポーとの関係編集

ハンバートの初恋の相手の名前「アナベル・リー」は、ポーの遺作となった詩「アナベル・リー」から取ったものであることはよく知られている(ただし、綴りは違う)。

「ロリータ」は当初「海辺の王国(The Kingdom by the sea)」という仮題がつけられていたが、これもポーの「アナベル・リー」の作中の舞台が「IT was many and many a year ago, In a kingdom by the sea(昔々のお話です 海のほとりの王国に……)」と、まさに「海辺の王国(kingdom by the sea)」である。

また、「アナベル・リー」以外でも、ハンバートが自分と同じような嗜好の持ち主でロリータを連れ去ったクレア・クィルティを殺害し、結果として自らの破滅を導くくだりは、ポーの小説「ウィリアム・ウィルスン(自分の分身を殺害した結果、自身の死を呼び込むという物語)」のパロディだと指摘されている。


ここでエドガー・アラン・ポーについて説明すると、彼は26歳の時、まだ13歳だった従妹の

ヴァージニア・クレムと、周囲の反対を押し切って結婚した(ただし、この時のヴァージニアの年齢では結婚は言うまでもなく不可能で、結婚誓約書には21歳と記されている)。

二人は夫婦というよりも兄妹といってよく、結婚する少し前にポーからヴァージニアに宛てた手紙でも、


My love, my own sweetest Sissy, my darling little wifey.

(僕の愛しい人、僕の優しい妹、僕の可愛小さな奥さん)


と、いかにポーがヴァージニアのことを思っていたかが窺え、一方のヴァージニアも24歳でこの世を去る前にポーに次の言葉を送っている。


「私が死んだなら、あなたを守る天使になってあげる。あなたが悪いことをしそうになったら、その時は両手で頭を抱えるの。私が守ってあげるから・・・」


ヴァージニアが亡くなって(1847年1月)から二年後の1849年10月、ポーはボルティモアのとある酒場で泥酔状態であるところを知人に発見されて病院に運ばれ、危篤状態が四日間続いた後の10月7日早朝5時に息を引き取る。この時、彼は青年時代の恋人だったサラ・エルマイラ・ロイスターと婚約しており、結婚式を間近に控えていた。

遺作の「アナベル・リー」は彼が死んでから二日後に地元新聞の「ニューヨーク・デイリー・トリビューン」紙で発表され、これはヴァージニアを思って書いた詞だと言われているが、詩「大鴉」や小説「ライジーア」など、ヴァージニアがモデルだとされる女性が登場する作品は他にもいくつか残されている。


「ロリータ」を語源とする言葉編集

ロリータコンプレックス編集

早くても9歳から14歳頃までの少女を対象とした性的嗜好の俗称。

和製英語だと言われているものの、日本でこの言葉の初出とされるラッセル・トレーナーの「ロリータコンプレックス」(1969年に日本語版が出版)という本が、もともとの英語版(1966年に出版された)のタイトルでも「The Lolita complex」であり、その上、「中年の男性に関心を抱く少女」というまったく正反対の意味で使われている。

それ以降の説明は、関連リンクを参考のこと。


ロリコン編集

言うまでもなく「ロリータコンプレックス」の略称でもあるが、Pixiv的には1980年代に「ロリコンブーム」というのがあったこと。それに加えて1988年~1989年にあった連続幼女誘拐殺人事件について知っておいてもよいだろう(特に後者こそ、マンガ・アニメ規制問題の元凶)。


フレンチロリータ編集

小説『ロリータ』のヒロイン・ロリータのような小悪魔的な魅力をもつ、フランスの歌手や女優を指した言葉。


ロリータアート編集

女性(あるいは少女)の持つ少女性を映し出した絵画、写真映画などの芸術文化。名前こそ20世紀半ばの小説から取っているが、歴史を辿れば19世紀の、ルイス・キャロルが撮影していたヌード写真なども有名。中には、まだ幼い自分の娘のヌード写真を発表したイリナ・イオネスコのように、後のその娘との裁判によって、1万ユーロ(約111万円)の支払いとネガフィルムの引渡しを命じられる羽目になったという話もある。


ロリータシンドローム編集

欧米における「ロリータコンプレックス」に該当する言葉で、思春期の少女を対象とする性的嗜好の俗称。フランスの思想家であるシモーヌ・ド・ボーヴォワールが小説「ロリータ」に影響されて書いた、「ブリジット・バルドーとロリータ・シンドローム」(1960年)が初出とされているが、「ロリータコンプレックス」と違い、年齢を厳密に区切ってはいない。


ロリィタファッション編集

フリルレースを多用し、少女らしさやフランス人形のイメージを装ったファッションスタイル



関連タグ編集

ドロレス・ヘイズ

ロリータ ロリ

ロリータコンプレックス / ロリコン ロリータシンドローム ペドフィリア

もうロリコンでいいや YES!ロリータNO!タッチ このロリコンどもめ!

おまわりさんこっちです おまわりさん俺らです


ロリィタファッション


ハンバートハンバート ← 日本の男女二人組デュオ。「当時、思いついた名前の中で一番おしゃれだったから」という理由で、小説の語り手である変態紳士の名にしたとインタビューで語っている。


紫の上源氏物語) ← 1000年以上前に完成していた日本版ロリータ

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