概要
「罪人を裁くには罪人以上の咎を負う覚悟が必要なんですよ」
人物
名門・佐々木家の嫡男で、鉄之助の異母兄。右目にモノクルをかけている。
見廻組の局長を務めており、バラガキ篇にて初登場。「剣をとれば二天、筆をとれば天神」という文武両道な生粋のエリートで、通称「三天の怪物」。作中ではほぼ無表情で半眼かつ常に敬語で通す。ゆえに、感情の機微が非常に読み取りづらい。表向きは金払いが良く、謝罪をキッチリ行うなど礼儀正しくふるまうが、本性は傲慢かつ冷徹。また、プライドが高いのか事あるごとに「エリート」を自称する。真選組のファンを公言しているが、それは嫌味でしかなく、真選組を「貧しく無能な人間が江戸を護っている奇跡の集団」と評している。
異母弟の鉄之助を利用し、攘夷志士と真選組をまとめて潰そうとするなど、目的のためには手段を選ばない。また野心家であるらしく、高杉と密かに通じており、心中では仕えている幕府や佐々木家を見限っている。彼曰く「私が付き合ったのはもっと馬鹿げた大法螺」。
エリートの名に違わず戦闘に秀でており、剣と銃を同時に操り土方に対し終始優勢に立ち回り続けた。一国傾城篇では定々によって暗殺されかけるが、銀時達の国盗り合戦の助太刀に入ったりと、一筋縄ではいかない様を見せる(本人は「呉越同舟」と言ってはいるが…)。
「一度こういうの言ってみたかった」という理由だけで「大人しく武器を捨て投降しなさい」と言ったり、物言いしてくる信女に対して「拗ねちゃいますよ」と返すなど、妙に茶目っ気がある。
メール
重度の携帯依存症であり、メールのときだけ性格が一変してしょこたん風の言葉使いになる。土方の携帯を出会い頭にかすめ取って「サブちゃん」という名前で自らのメルアドを登録する、潜入していた銀時を相手に何度もしつこくメールを送って鬱陶しがられる(銀時曰く「ギザウザス」)など、積極的にメル友を増やそうとしていた。一度、銀時に支給した携帯電話を捨てられたが、一国傾城篇で場内にて銀時とすれ違う瞬間にすでに文章(メル友申請)を記入していた携帯電話を手渡ししている。
後に、銀時に殴られて気絶した喜々の様子を写メで信女に送ったりと、SNSなら炎上しかねないこともしでかしている。
余談
見廻組の隊服は、真選組の隊服を参考に作ったとのこと。その見た目はベタを塗り忘れた真選組の隊服のようにも見え、作中で異三郎が「作者にもエコ」と発言している。
キャラのモデルとなった歴史上の人物は佐々木只三郎。
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以下、ネタバレにつき閲覧注意
その真意と結末
実はかつて江戸を跋扈する攘夷志士との潰し合いを目的に、ならず者を集い浪士組(のちの真選組)として組織することを立案した張本人である。この頃は松平に弄られて動揺したりと、今では見られないような佐々木の姿を見ることができる。その中で若き日の近藤と出会い、彼の侍像に感銘を受けると共に、てんで纏まりのなかった浪士組の隊士たちが近藤を筆頭に団結していく姿を目の当たりにして、密かに憧れと対抗心を抱いていた。皮肉にしか聞こえなかった「真選組のファン」という言葉だが、それは紛れもない彼の本意であった。
そんな中、当時の幕府にとって邪魔者である一橋親子の暗殺計画が浮上。視察のための遠征の道中を狙う計画で、護衛として公儀お抱えとした真選組を起用し、暗殺成功の後は捨て駒として全ての責を負わせるという内容だった。そしてその暗殺の下手人として選ばれたのは奈落に拾われ、殺し屋として育てられた年端もいかぬ子供たち。その中には骸(後の信女)の姿もあった。
佐々木は新婚の身で、なおかつ近いうちに父親となる身だった。その事もあってか、彼は松平と共謀して一計を案じた。あえて一橋公遠征の噂を攘夷志士に流布し、扇動することで暗殺より先に彼らの襲撃を受けるように仕向け、暗殺計画を未遂に終わらせる。こうすることで真選組のみならず幼い子供が人殺しに手を染めぬよう彼らも守ったのである。
だが、その一部始終が朧に知られ、佐々木は報復として出産を終えて上京途中だった妻と幼い実娘を殺害されてしまう。この一件から、このような蛮行を行う国と愛する者を守れなかった自分自身を憎み、自身ごとこの国の全てを壊すことを決意。妻子殺害の下手人としてその場に居合わせた骸を自身の復讐のための道具として傍に置き、その剣を使わせる。そして最後には、自身もその剣に斬られるつもりだった。
当時の現場状況から、実際には骸が自身の妻子を守ろうとしていたことにも気付いており、そのためか彼女に亡き自身の娘につけるはずだった「信女」という名を与えるなど、次第に情が移って行く。
さらば真選組篇では、脱走した近藤らを始末すべく部隊を率いて黒縄島に上陸。土方と激突するが、今回は近藤を取り戻さんとする勢いを前に劣勢に立たされる。しかし、そこへ駆けつけた松平公は既に佐々木の真意を見破っていた。
その後、牢を脱出した近藤との会話からそうした自身の心境を自覚する。さらには自身の真の計画を悟った奈落の大軍が参戦したこともあり、近藤らと共闘。満身創痍になりながらも自身を救いに来た信女と再会し、無言のまま自身を介助する鉄之助と共に脱出用の船へと乗り込むが、搭乗口で手負いの敵兵に背後を取られたことをいち早く悟り、信女と鉄之助を身を挺して庇う。だがそこに虚の放った砲撃が直撃し、佐々木は上昇中の船から落下してしまう。
その中で走馬灯のように思い出されるのは、娘の名前を考えるのに苦心していた記憶だった。
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筆を取る佐々木。部屋には書き捨てられ散らばった紙。
妻とのメールのやり取り。いくら案が出されてもしっくり来ない佐々木。
“ 名前に込めたい意味がありすぎてまとまらない エリートすぎるから ”
だがその後、佐々木はふと思う。
“ 何だって いいか… ”
“ 元気に 生きてさえくれれば ”
“ あとは信じよう 私(エリート)の娘だもの ”
微笑む佐々木。机の上には大きく書かれた「信女」の文字。
“ メールしなきゃ ”
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最期は、自身が「信女」という名に込めた願いがちゃんと「娘」に届いていたことに満足げな笑みを浮かべながら…
“ 信じてよかった ”
“ 友達がたくさんいて 皆と仲良くできて 優しくて 頑固な ”
“ 信女さん ”
“ メール やっと届きましたよ ”
まるで優しい父親のような言葉と共に、佐々木は夜明けを見ることなく暗闇に消えた。
没後、佐々木の一件を聞いた喜々が激昂し警察組織そのものを一新しようと動き出すものの、ついに内部の不満が爆発。前例を見ない反乱が、反幕勢力を大量に生み出すきっかけとなったことが語られた。また、この一件により見廻組は事実上の解散を迎える。残された隊員たちは、近藤に恩義を感じ江戸を出奔する真選組についていく者も多かったという。
そして、物語は烙陽決戦篇へと繋がっていく。