概要
江戸時代のうち、元禄(1688~1703年)と前後する時期の文化。17世紀後半から18世紀初頭にあたる。
この時代の江戸幕府は武断政治から文治政治に移行し、儒教が奨励され、各地で藩校や寺子屋などの教育機関が作られ、文化振興が進んだ。
元禄文化のそれまでの文化との違いは、現世(浮世)肯定的で非宗教的なところにある。富を得た豪農や豪商が贅を尽くした豪華な絵画(狩野派や琳派など)や工芸品を作らせた一方で、人々の哀歓を描いた浮世絵や浮世草子が創作された。庶民の暮らしも豊かになり、俳諧や和歌の創作、箏や三味線、尺八の演奏といった趣味を楽しむ余裕ができた。人形浄瑠璃や歌舞伎がいちおうの大成をとげたのもこの時代である。街頭の大道芸、または酒宴や芝居小屋などの座敷芸として滑稽な話題を聴かせる「落とし噺」も人気を呼んだが、寄席芸として「落語」と呼ばれるようになるのはまだ先の時代のことである。
この時代の都市文化の中心は京・大坂である。当時の江戸はまだまだ後進地域であり、江戸が上方をしのぐ文化の中心地となるのは19世紀の文化・文政年間(化政文化)を待たなくてはならない。