概要
国境警備隊の役割は、国境における犯罪、つまり非合法な出入国(密出国、密入国、偽造パスポートやビザ)や、密輸などの取り締まり、また亡命の阻止などを目的とした監視、パトロール活動を行うことである。
国や地域によっては国境の検問所などで合法的な出入国手続き、つまり出入国者のパスポートやビザを確認して出入国審査、許可を与えたり、あるいは所持品や貨物の検査を行ったりといった役割を受け持つ。(これは、日本の場合は入国管理局や税関の役割である)
国際法においては一般に準軍事組織とみなされ、戦闘員の資格を持たない。つまり敵国の兵士を殺害する権利も捕虜になる権利もない。武器使用については、警察官と同じく法の定めに従う正当防衛のみが認められる。「準」軍事組織であると呼ばれる理由は、政府が事前に正規軍に組み入れると宣言した場合に限り、戦闘員としての資格が得られるからである。
しかし実際には国によって、軍隊に準じた装備と体制を持った組織であったり、或いは比較的軽装備で警察のような法執行機関としての趣が強かったり、或いは軍隊がそのまま国境警備にあたって税関などが入出国管理を行うため国境警備隊的な部隊があっても、独立機関としての国境警備隊が存在しないなど、国によって事情は様々である。
日本の場合、陸上の国境線が存在しないため諸外国の国境警備隊に当たる組織は存在せず、諸外国の沿岸警備隊に当たる海上保安庁が海上の排他的経済水域や国境線、領海の警戒監視活動にあたっている。また、2020年には、沖縄県警警備部に国境離島警備隊が設立された。ただしこれは陸上の国境線ではなく尖閣諸島など国境の離島を警備するための隊である。
余談
- 北をカナダ、南をメキシコと接するアメリカには『合衆国国境警備隊(U.S.Border Patrol)』が置かれている。ところが、どちら側も安定的で特にトラブルが起こらないカナダとの国境と比べると毎日のように密輸や密入国が行われるメキシコ国境はとてつもなく激務だとか。
- 日本にも、かつて国境警備隊が存在した。樺太の南側と、当時日本が統治していた朝鮮半島に陸上国境があったためで、終戦とともにすべて撤収・解散している。
- かつてソビエト連邦が存在した頃、彼の国の国境警備を担っていたのは、高名なKGBであった。諜報機関や秘密警察など後ろ暗いイメージが付きまとうが、緑青色の徽章をつけた制服を着た"KGB職員"が警備犬を連れて日がな一日長い国境を見回っていたのである。
- 事実上の国境である軍事境界線(38度線)を挟んで北朝鮮と対峙している韓国は、国境(?)警備は軍の仕事なので国境警備隊は存在しない。と思いきや、島根県の竹島に『独島警備隊』なる国境警備隊を置いている。なんでも軍隊の場合は国際問題(武力による不法占拠)になるが、「警察(的な組織)」であれば”国内を統治”しているとアピールできるからだそうで…