概要
天子は初登場した『東方緋想天』において人為的に「 局所的な大地震 」を起こして博麗神社を倒壊させ、これが博麗霊夢を本格的に異変調査へと向かわせることとなる。幻想郷で異変を起こすこと自体も『緋想天』での天子の目的の一つであり、その能力は果たして巫女を動かすに十分すぎるものだった。
以後も天子が弾幕ごっこに挑む時にはこの能力も通して自在に大地を操り揺るがす様が描かれている。
その能力や弾幕スタイルもあってアリス・マーガトロイドからは「 地震野郎 」と呼ばれたりも(これに天子は「 人形野郎 」と返す。『緋想天』)。
大地を操る能力
天子の大地を操る能力はスペルカードを通しても表現されており、弾幕ごっこでも天子は要石と、天界から持ち出した緋想の剣も携えて大地を割り、隆起陥没させ、存分に力を振るう。『緋想天』では天子の能力は「 有効範囲は狭いが、幻想郷内なら遠隔地でも揺らすことが出来る 」とされており、また「 地盤沈下や土砂崩れなどの災害もお手の物 」でもあるなど、天災と言える水準のその能力の影響力の程が語られている。
また作中では先の博麗神社倒壊や弾幕ごっこなどでは「地震を起こす」能力が披露されているが、天子の能力は同時に「地震を鎮める」能力でもある。天子の一族である比那名居は要石を扱うことが出来、要石はまさに地鎮の要である。霧雨魔理沙はこの要石を天子のように乗る形で扱おうと試みたが、「 何故か乗れなかった 」としている(『グリモワールオブマリサ』)。
大地を操り要石を扱う能力については八意永琳も一目置くところである(『緋想天』)。
「HAARP」
天子は『東方憑依華』においても『緋想天』などで見られたような大地を揺るがすスペルカードや体術を披露している。『憑依華』は『緋想天』以後『東方心綺楼』からのシステムである空中戦を基本としており、本作での天子は『緋想天』でも見られたような要石に乗って弾幕ごっこに臨む。
『憑依華』当時の幻想郷は長期化している「都市伝説異変」のさなかにあり、具現化するオカルト・都市伝説の力を自らの力として応用する術が広まっていた。天子もまたオカルト・都市伝説とかかわりを持っており、『憑依華』での天子は都市伝説としての「HAARP」の力を用いている。
HAARPとは、本来はアメリカにおける地球の電解層の特性や挙動を研究することを目的とした計画で、独自の高周波送信機や天文台など独自の科学機器を有する。「高周波活性オーロラ調査プログラム」( High Frequency Active Auroral Research Program )の略称。
一方HAARPは陰謀論の一つとして語られることもあり、HAARPが保有する装置が電離層に影響を与え電離層の変動が地震を引き起こすとするもので、HAARPの大目標はアメリカ政府が軍事利用可能な気象兵器、人工地震兵器を確立するところにあるのでは、とするものである。
世界各地の地震(とりわけ被害が大きな地震)についてはHAARPによる人工的な地震なのではないか、とのストーリーがインターネット上などでまことしやかにささやかれている。しかし、風説であり、科学的な根拠が一切存在しない理論である。HAARPとは関係ないが、実際に人工地震が観測されたのは北朝鮮の核実験の地震(M6クラス相当)のみで、他に観測された例はない。
詳しくは『人工地震』を参照するといい。
これが天子の関わった「オカルト・都市伝説としてのHAARP」である。
天子にとってこのオカルト・都市伝説としてのHAARPにみる地震を任意に「起こす」能力はまさに先述の自らの能力とも符合するものであり、天子はこの「 大気圏を支配するオカルト 」であるHAARPもその力に、刺激に満ちた地上を満喫することとなる。
なおHAARPにみる「観測ではなく操作なのではないか」とする都市伝説について、天子もまたとある経緯、とある理由で同様に「観測ではなく操作なのではないか」と疑われたことがある(後述)。
霧雨魔理沙による考察
『緋想天』の経緯で天子と出会った魔理沙が天子の弾幕を通して天子の能力についても考察を寄せている(『グリモワールオブマリサ』)。
魔理沙は天子が大地を操る様を表現する複数のスペルカードを通して体験しており、大地が「 でこぼこ 」、「 ボコボコ 」になる様や「 際限なく盛り上がっていく 」様子を見たことを記述している。最後には「 こいつのスペルカードは基本、弾幕ではないな 」とまとめている。
その参考度についても「 真似できそうにない 」、「(参考に) なるわけがない 」としているなど、手の届きようのない能力であるとしている。
また魔理沙は要石について、今日では博麗霊夢の愛用品にして博麗神社のご神体である陰陽玉も連想している。
なお<乾坤「荒々しくも母なる大地よ」>の評価項目では天子が要石もろとも大地を勢いよく踏みしめるのと交換に大地の一部を隆起させる点をして魔理沙は自分にもできるかとの自問にこれは無理だとしているが、その理由には解釈によっては乙女を感じさせるものがある。
乾と坤の能力
天子にみる「大地を操る」と記述される能力と関連して、天子の他にも大地に関連した能力と共に語られる存在ある。
例えば八坂神奈子や洩矢諏訪子の能力についてそれぞれ「乾を創造する程度の能力」、「坤を創造する程度の能力」とされており、いずれも天地に関わる能力である。両者に見る「乾」と「坤」はそのまま「天」と「地」であり、「乾坤」と合わされば「天地」である。
『東方非想天則』では諏訪子は大地を割るだけではく植物も瞬間的に芽生えさせるなど大地の創造を通して大地の上に芽吹く命にも関与する様を表現している。
『憑依華』では夢の世界の天子が「大地を作り直す」という生命を含めた世界を一から創造し直す趣旨の発言をしており、これは大言壮語の口上の一端とはいえ大地を操ることが大規模な破壊と破壊の後の創造も視野に入れることのできる強大な能力であることを示している。
また特殊な経緯の存在ではあるが「 最凶最悪の妖怪 」の「 太歳星君の影の一つ 」だとする「大ナマズ」がやはり「 大地を揺るがす 」能力を持っている(大ナマズ、『非想天則』)。
『憑依華』においてもとある経緯で大ナマズが天子と共に登場しており、登場の場面こそ天界ながら同作でもその巨大な体躯をもって大地を揺るがせている。
この他の能力
天子は「大地を操る」という能力以外にも他者の性格を見抜くという才も披露している。
これは緋想の剣に見る「気質を見極める」ことと天子の「気質に合わせて気候・天候に影響を与える」という能力の両方に通じており、具体的には「 天気予報 」という形で結実している。
これについて文々。新聞(第百二十四季 葉月の一刷)が天子へのインタビューも交えて報じている。
『緋想天』での天子の異変では個々それぞれの気質が天候を変化させており、特定の個人の周辺に不自然な自然現象を発生させていた。一方でその仕組みは必ずしも異変で引き起こされた特殊な事態というわけではなく、天子によれば人間はもともと「 天気を操る 」こともあるという。実際に西行寺幽々子は異変の力も応用しながら任意に天候を操っており、これには天子も驚いている(『緋想天』)。
この天気を操る際に影響するのが「 性格 」である。天子はその一例として「 雨男 」、「 晴れ女 」などを挙げているが、これにはそれぞれの性格が影響している、としている。そして天子はそういった性格部分が「 見える 」のだとしている。
天気に影響する性格を見ることはつまり天気をみること、ということで性格診断を基本とした「 天気予報 」となるのである。
文々。新聞によれば、この天子の活動は人間の里で噂になっているとのこと。
ただしこの「予報」は、聞いてもいないのに言い放ってくるような「 押し売り 」でもあるようで、天子は的中率の高さも相まって「 怪人 」呼ばわりされている。
そしてこの「 押し売り 」であることと的中率によって「実は予報などではなくこの怪人(天子)がいやがらせ目的で天気を操っているのでは」と疑われるようになった。
例えば通りすがりにいつもの天子の様子で「貴方の天気は○○です」と宣言めいて言い放たれ、実際にその通りになれば誰しもが訝しむところだろう。
射命丸文が天子に個別に取材したところによれば天気の操作などはしていないとし、天気に直結する性格が見えてしまうのだからどうしようもないのだとしている。
一方で予報を疑われたりすると意地になるようで、そういったときには「強制的に天気を発現させてやるわ」ともしているため、ケースによっては操作がないわけでもないようである。
天子が天気予報を行う目的は、基本的には暇つぶしとはしつつも「 少しでも誰かの役に立てれば 」との言葉も見られている。
先述のHAARPと天子の共通点としての「観測ではなく操作なのではないか」というのはこれのことで、奇しくもHAARPも天子も地震だけでなく気象(天気)観測にも関連し、そしてそれぞれの疑いをもたれてもいるなど、両者の奇縁は複数の接点をもつ。