平小次郎将門
たいらのこじろうまさかど
精悍な顔立ちに、戦人に相応しい屈強な体格をした中年男性。
腰には注連縄(しめなわ)を思わせる腰紐を締めて、甲冑と洋服を併せたような恰好をしている。
荒事の渦中にいる身の上なため、多彩な携帯品を所持している。懐には戦闘を想定して、多種多様の式術(しきじゅつ:文字状の回路を介して様々な効果を発現させる技術)を施した巻物の他、体力や魂魄(こんぱく:万物構成の一つであり、汎用性に優れた元素)を補給する携帯食も持ち合わせている。
ある戦いの後では、菓子と思われる食べ物を頬張っていた。
平家(へいけ:平安時代に登場する氏族の一つで、多くは関東を中心に領地をもつ武士)の一員であり、平国香(たいらのくにか)の甥にあたるが反旗を翻して戦を繰り広げている。
その威光(カリスマ)や、「新皇」になって民を正しき道へ導く理想に惹かれた猛者たち「坂東火雷十天衆(ばんどうからいじってんしゅう)」を仲間に、着々と密々に“ある計画”を進めている。
一見すると戦争を起こす横暴な人物に思われるがそんな事はなく、先ずは互いの理解を進めて慎重に事を進めたいという思慮を備えた人物。実際に、主人公たち・桃と小紅(と偶々に居合わせた妖怪・ぽむな)を前にした時は話し合いから接触を始めようとしていた。
彼の人柄を一言で表すなら「良き王であろうとする武士」
彼が統治する「坂東(ばんどう)」の為に、残念ながら愚鈍で将門曰く「阿呆ども」が多い貴族には既に見切りをつけて、京(みやこ)で歌詠みに励む鮟鱇貴族共を倒し、己が「新皇」になろうと野望を燃やしている。
将門の第一印象について、主人公の坊主・桃は「常人なら偉くなるため 何をするかを考えるが この男はその逆の発想」「勝つためにまず王になる 将にして軍師の思考を併せ持つ戦人(いくさびと)」と称して、合理性の塊の様な男と思わせた。
だが「坂東(ばんどう)」を一途に思うだけでなく、厳格な面もあり、対する相手が助けるに値するか品定めをして関わりを持つ現実的な思考を併せ持っている。
人として崇高な度量があるだけでなく、高い戦闘力も持ち合わせている。体術だけで禍神(まがつがみ:強い思いを持って死んだ生物が化けた異形の存在)をぶっ飛ばしたり仲間「坂東火雷十天衆(ばんどうからいじってんしゅう)」が製造した武器を活用して、彼の鬼技(おにわざ:超能力)「風雲虹来(ふううんこうらい)」で止めを刺すといった、力技でも己が筋を通せる相当な技量を秘めている。
だが、最も恐ろしく脅威であるのは、大願成就を成すために残酷な手段も取れる人間性に在る。
- 人物像は、モデルである平将門の史実にある真面目で英雄的な生き様が反映されている。また彼の鬼技「風雲虹来」は、将門を主人公とするNHK大河ドラマ『風と雲と虹と』のタイトルに因んでいると思われる。
- モデルとなった平将門には相馬小次郎や滝口小次郎と言う通称があり、「坂東の虎」とも称されていた。また本作「月歌の始まり」で用いられている平小次郎将門も名乗っていたらしい。
- 初登場した天慶二年十一月に起きた一波乱は、現実の史実にある「平将門の乱」を基にした描写がされている。
なお、歴史上の人物をモデルにするにあたり、平将門は東京千代田区大手町にある首塚「将門塚」にまつわる怨霊伝説など、数々のおどろおどろしい伝説を持つ武将であるため、作者・小雨大豆は将門公を描くにあたりお参りを済ませてから臨んでいるとのことである。
九十九の満月:本作から数百年くらい後のお話が描かれる妖怪漫画
イスカンダル(Fate)・・・屈強な風貌、王の威厳、己が征服の信条を通す姿勢といった類似項の多い王様。
ファニー・ヴァレンタイン・・・全ての行動と心は統治する領土(国)の為に正義を実行する姿勢、そのためなら残酷な事もいとわない行為もする主義など、人間性に類似項の多い米国の大統領。