「知らざあ言って聞かせやしょう」
概要
歌舞伎の演目『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうし はなの にしきえ)の登場人物。
知名度の高さから単に「弁天小僧」とも呼ばれる。
弁天小僧の出がある場のみを上演する際には『弁天娘女男白浪』(べんてんむすめ めおの しらなみ)と題名が変わる。
その中性的な美貌を生かした女装で、相手を油断させるのが常套手段。
「知らざあ言って聞かせやしょう」の名科白が有名。
何度も映画化されており、市川雷蔵や美空ひばりなどが主演をつとめた。
…というギャップ萌え展開、日本人の男の娘好きは、江戸時代から続いているのである。
弁天小僧と尾上菊五郎家
この演目は弁天小僧の名前・菊之助から尾上菊五郎家にとっては家の持ち芸であるため、途中のセリフ
「ここやかしこの寺島で 小耳に聞いた祖父さん(じいさん)の」
という所では演者によってセリフが変わる。菊五郎家では、祖父を尾上菊五郎とする必要があるため、当代菊五郎はそのまま「祖父さん」と言うが、その子息・尾上菊之助は、祖父が尾上梅幸であるため、「とっつぁんの」と変えている。また、祖父の尾上梅幸も先代菊五郎の養子だったため「とっつぁんの」と言った。
他にも他の家で弁天小僧を演じる場合、「音羽屋の」と、菊五郎家に遠慮して屋号を呼ぶのがほとんどだが、生前の十八代目中村勘三郎が弁天小僧を演じたときは、母方の祖父が六代目菊五郎だったため、そのまま「祖父さんの」と言った。
劇中劇
定番演目であるため、漫画やアニメやドラマなど、各種フィクションの中でも「劇中劇」としてキャラクターが演じることがある。
『昭和元禄落語心中』(TVアニメ5話)では、菊比古がこの弁天小僧を鹿芝居で演じる場面が、自分が目指す芸道(落語)に開眼する大きなきっかけとして描かれる。