概要
吉備国(岡山県)の穴海に棲む舟をも一飲みするという巨大魚で、悪楼とも表記される。また文献によっては大魚悪樓表記で紹介される事もある。
悪神の類いであり、『日本書紀』の「景行紀廿七年」に記述される惡神、吉備穴濟神、『古事記』の「景行天皇条」に表れる穴戸神はこの悪樓のことであるともいわれる。
伝承によると日本武尊が熊襲討伐の帰りにこの怪魚に襲われたが、日本武尊は勇敢にも暴れ狂う悪樓の背中にまたがり剣で退治したという。
このダイナミックな描写の伝承は、江戸時代の創作者の琴線に触れたようで、浮世絵や錦絵の題材とされた。
また須佐之男も戦ったことがあるという説もある。
しかし、上記のように『日本書紀』や『古事記』には悪樓という名は語られず、何故このような名で呼ばれ伝わっているのかは不明である。
昭和の民俗学者・藤沢衛彦の著書において、江戸時代に書かれた『金毘羅参詣名所圖会』の大和武尊の怪魚退治の図の説明文に、この名が関連付けられていたことが確認されており、藤沢はこの名は東夷や王族を意味する言葉であるとしている。
創作での扱い
名のある怪物なので、日本神話をモチーフにした作品や和風ファンタジーのモンスターとされることも多い。
- わんぱく王子の大蛇退治:スサノオにより退治される。
- ぬらりひょんの孫:最終決戦に陰陽師によって召喚される。
- 式姫Project
- 陰陽師(ゲーム)
- 陰陽師~平安妖奇譚~:雅楽の面のような意匠のある、凶暴で縄張り意識が強い怪魚。
- かくりよの門:幽世の影響で人型になった、巨大な三叉の槍を振るうあやかし。
- 戦国プロヴィデンス:水棲生物の女の子風で、地上征服のために上陸したが戦国の世にびびってしまい、さらに村人に迷子だと勘違いされてしまう。
- カムヤライド:粘土細工の怪物「国津神」の一体として登場。伝承通りオウスと戦い、彼に退治された──と思われたが、実は魚のような姿は擬態であり、オウスは巨大なタコ型の国津神の触手を一本破壊したにすぎなかった。