概要*
当初の題名は『日本神話・虹のかけ橋』であり、昭和35年から企画が進行していた。日本神話のスサノオの八俣大蛇退治伝説を子供向けに脚色したアニメ映画作品である。
監督には新東宝から移籍してきた芹沢有吾が抜擢された。脚本に池田一朗、アニメーションを森康二を筆頭に古沢日出男、月岡貞夫、熊川正雄、大塚康生らが担い、劇中音楽を伊福部昭が担当した。
監督の芹沢は本作について
「少年スサノオの姿を借りて、母性に対する人間精神の成長を描くのが狙い。古事記や日本書紀にうたわれているような、単なる英雄崇拝でなく、新しいオトギの世界を作りたいと思っている。近代的な動画のヌーベル・バーグが私の抱負だ」〈『日本アニメーション映画史』有文社1977年 109頁より〉
と語っている。芹沢監督の狙いのとおり、本作は母イザナミをなくしたわんぱく少年のスサノオが、父イザナギの下をはなれ、兄のツクヨミや姉のアマテラスに助けられながら仲間たちとともに旅を続け、クシナダヒメとの出会いなどを通じて、成長していく冒険譚として完成した。
製作体制*
製作体制において画期的だったのは、作画監督という職分が誕生したアニメーションだったということである。作画監督には森康二がその任にあたり、8人の原画家の原画をチェックし、画面全体の統一感を出すことに成功した。作品全体の総作画枚数は原画、動画を合わせて25万枚に及んだ。
特に、アメノウズメの舞による天岩戸開きのシーンとクライマックスのスサノオと八俣大蛇の対決のシーンは、超絶技巧の作画と伊福部昭の音楽が見事にシンクロし、日本アニメ史に残る名シーンとして知られる。
劇中音楽*
本作は伊福部昭が音楽を担当した唯一のアニメ映画であるが、伊福部は映画音楽の作曲で最もやりがいを感じた仕事として本作の名を挙げている。後年、本作品の劇中曲は『交響組曲わんぱく王子の大蛇退治』として伊福部本人の手によって編曲された。