概要
有兽焉とは、漫画家の靴下猫腰子が、漫画・アニメ制作会社「分子互动」と契約して連載中のWEB漫画である。微博(中国版Xのようなアプリ)上や、哔哩哔哩漫画というサイトで読むことができる。一部の回を除き、1話につき5コマの漫画が2パート(あわせて10コマ)で、週2回更新される。2025年1月7日現在では第988話までが公開されている。
温かみのある線で描かれた可愛らしい神獣たちによる、笑いと癒しを基調とした作品。登場する神獣の数は多く、神獣としての能力や経歴と各々の性格が合わさり、キャラクターはどれも個性豊かである。また、登場人物のほぼ全ては動物で構成されており、人間がほとんど登場しない(登場しても特徴のないシルエットのような形で描写される)。コメディや日常回が主だが、中には少し切ない回や主人公の過去に迫る回、謎の多いキャラクターの登場などもあり、魅力の一つとなっている。100話に一度シリアスになる傾向がある。
本作は、キャラクターの設定や世界観が「山海経」をはじめとする数々の中国の古典から引用されている。タイトルの「有兽焉」も、山海経にたびたび出てくる言葉である。意味は「獣がいる。」で、山海経ではその後に「そのかたちは〜。その名は〜。」と幻獣を紹介する文が続く。
中国漫画館のXにて、公認の日本語訳版が20話まで公開されている。日本語版のタイトルは『獣あらんや』。
公式の英語訳版は存在しないが、公式グッズ等で見られる英語名は『Fabulous Beasts』である。また、YouTubeで配信されているアニメ版は英語字幕をつけることができる。
2017年10月頃よりネット上で公開され、翌年2018年12月より書籍版も刊行された。
現在第8巻まで発刊されており、アニメ化もされている。
ストーリー
現代の中国南部、雲南省の「彩云山脉(彩雲山脈)」という人里離れた緑豊かな地には、とある小さな店がある。その名を「鹿人店」といい、店主の四不像のもとには、悩みを抱えた様々な神獣が集まるのであった。四不像の昔からの友である皮皮は、人間の追手から逃れて鹿人店で暮らすようになる。新しい仲間たちに囲まれ、よく食べよく眠り、楽しく平穏な皮皮の暮らしはいつまでも続く、はずだった…。
登場キャラクター
※アニメに未登場のキャラクターも記載するため、ネタバレを避けたい人は気をつけよう。
天禄(ティエンルー)
漫画、アニメともに第1話から登場。オス。本作の主人公的な存在で、貔貅という神獣。人間からは幸運を運ぶ神獣だと信じられている。四不像をはじめ他の獣たちからは「皮皮(ピーピー)」という、貔貅(ピーシゥ)の頭文字からとったであろうあだ名で呼ばれている。前述の通り四不像とは旧知の仲である。
青と白の毛並みと丸い耳を持ち、頭には一本の角が生えている。腿のあたりに青い丸の模様がある。普段の大きさは中型犬ほどだろうか?(公式の情報によれば53cmらしい。)
しかし、巨大な姿に変身することもでき、その際は狼のような容貌になり目つきも鋭くなる。ちなみに、指の本数は明確に定まっていないのか、絵によって三本だったり四本だったりとまちまちである。
やんちゃな性格で無邪気に振る舞う。また、食いしん坊で食べ物に目がない。胃袋が広大な空間になっており、金塊や宝剣など、宝物を食べることができる。好物は宝物と鶏肉のキノコ煮込み。
今は鹿人店で見張り番として暮らしているが、彼の過去には何か秘密があるようで…?
四不像(スーブーシャン)(画像右)
漫画、アニメともに第1話から登場。オス。四種の獣が合わさったような見た目をした四不像という神獣で、足が速く、かつては太公望の乗り物だったらしい。役目を終えたあとは天界で釣りをしながら怠惰に過ごしていたが、ある日「落ちぶれた神獣を助ける」という使命を与えられ強制的に地上へ送られる。その後しばらくは北京に店を置いていたが、現在は雲南省の彩雲山脈で鹿人店を営業している。
赤いマントにミステリアスな仮面という出で立ち。仮面の下はめったに見ることができない。全体的には二足歩行の鹿のような見た目をしているが、手(前脚)は蹄ではなく、猫や犬のそれのような形をしている。尻尾がとてももふもふである。また、四足歩行の鹿にそっくりな形態に変身することができる。
普段は鹿人店で骨董品を売りながら、時折やってくる神獣の悩みを聞いている。しかしお金にがめついところがあり、困っている獣に助けを求められても、助ける対価にお金や労働を要求する。なお、対価があれば解決の手助けはしてくれる。元主人の太公望に似たのか、釣りが趣味で、店の前にある池で釣りをしていることもある。
月兎の兔爷(トゥイェ)とは北京にいた頃からの付き合いであり、一方的にベタ惚れされている。
また、四不像は天界から青鳥(チンニャオ)という生き物のようなロボットのような存在を複数体与えられており、皮皮は青鳥に見張られているようだ。青鳥は四不像が天界と連絡を取るときにも使われる。
皮皮に対して何か隠し事をしているようだが…?
どちらもオスで、二匹は兄弟である。金角が兄、銀角が弟。角のあるチンチラのような姿をしている。体色は名前の通り金色と銀色。かつては人間に近い姿をしており、天界で働いていたが、仕事でヘマをしたことで地上に追放された。四不像に騙し取られた角を返してもらうべく、鹿人店で働いている。
兔爷(トゥイェ)
オス。月出身の兎。四不像のことが大好きで、いつも恋人のように振る舞っている。理容、料理、建築となんでも器用にこなす。
どちらもオスで、二匹は兄弟である。二两が兄、八斤が弟。龍の胴体に猫の頭を持つのが二两、猫の胴体に龍の頭を持つのが八斤であり、それぞれ龙猫(ロンマオ)、猫龙(マオロン)と呼ばれることもある。雲南省に伝わる魔除けの屋根飾り「瓦猫」と龍の間に産まれた子であるため、このような姿をしている。
吐宝鼠(トゥバオシュ)
第28話から登場。アニメでは第8話から登場。メス。人々から必要とされる限り口から宝珠を吐き出せる、吐宝神鼬という神獣。昔は主人のもとで、困っている人々に宝珠を分け与えていた。しかし今では主人に捨てられ、現代の人々には必要とされないため、宝珠を吐けなくなり困り果てて鹿人店にやってきた。そこで宝珠を食べたがる皮皮と出会い、誰かに必要とされる喜びを取り戻したのだった。
饕餮(タオティエ)
オス。悪名高い猛獣「四凶」の一匹である。胴体がなく一頭身で、胴体を奪うために他の獣を襲撃していた。
松鼠大哥(ソンシュダーグァ)
战虎(ジャンフー)
花蕊鸟(ファルイニャオ)
凤皇(フォンファン)
比比(ビービー)
比翼鳥という神鳥のオス。比翼鳥は二羽で一緒に跳ぶが、比比にはパートナーがなかなか見つからなかった。その時出会ったのが鳳凰で、一目惚れして以来熱狂的なファン。兔爷とはオタク友達。
谛听(ディティン)
オス。冥界の幹部。他者の思考を聞くことができる能力を持つが、24時間誰かの思考が聞こえてくるせいで不眠と脱毛症に悩まされ鹿人店を訪れた。
非人哉に登場する白泽を深く尊敬しており、時にストーカーまがいの行動をしている。
小髅(シャオロウ)
メス。谛听が地面に埋めた骨からなぜか誕生した。裁縫と商才に長けており、集めた毛皮でビジネスを行う。
擎火(チンフォ)
谛听の兄弟
核桃(フータオ)
オス。二本の尾を持ちユキヒョウに似た、孟極という神獣。鹿人店に送られた段ボール箱の中に入っていた。要するに捨て子である。福仔や翔太と友達になる。
福仔(フーザイ)
メス。日本出身の狐。フルネームは「稲荷 福」。福仔という愛称で呼ばれている。初めて中国を訪れて雲南省で迷子になっていたときは、中国語がわからず日本語で話していたが、後に中国語を勉強して習得した。
翔太(シャンタイ)
オス。日本出身の狐。フルネームは「稲荷 翔太」。福仔と同じ名字だがきょうだいではなく、幼馴染である。福仔に惚れている。
牧(ムー)
オス。日本出身の狸。小さな神社を持っていたが、地震で壊れてしまい、稲荷神社の保護のもと再建中。翔太と一緒に中国に来た。
慕容雪川(ムーロンシュエチュアン)
オス。美美(メイメイ)と呼ばれることもある。上流社会に憧れる狐。アシンメトリーな毛色が特徴的である。もともとは普通のアカギツネだったが、あるときから狐の精になり、変化の術も使えるようになった。上流社会の仲間入りを果たすため、今日も鹿人店で従業員として働いている。
巴陵君(バーリンジュン)
オス。巴蛇という大蛇の神獣。白い鱗と青い舌を持つ。小蛟の師匠である。
小蛟(シャオジャオ)→巴狗蛋(バーゴウダン)→巴赫(バーハ)
オス。最初は龍になりたがっている蛟として登場した。巴陵君の弟子。
永夜(ヨンイェ)
メス。巴陵君に一目惚れし、それ以来彼を追いかけている。巴陵君と一緒にいるために、小蛟の妹弟子になった。
刍狗(チュゴウ)
小山雀(シャオシャンチュエ)
オス。山神。刍狗と結ばれて3匹の子供がいる
獬豸(シェジー)
公平を司る神獣。
穷奇(チョンチー)
荔枝(リージー)
メスの麒麟。他の神獣や人に触れられると体が黒くなる体質で誰とも慣れ合えず困っていた。そこで出会った天狗の壮壮はなぜか触れても黒くならなかった。
壮壮(ジュアンジュアン)
葡萄(プータオ)
虹虹(ホンホン)
夹竹桃(ジュンジャオタオ)
猫猫泪(マオマオレイ)
盘湖(パンフー)
花椒(ファジャオ)
令狐紫(リンフーズー)
诸犍(ジュジーエン)
始麒麟(シーチーリン)
糖麒麟(タンチーリン)
四一星(スーイーシン)・兎三星(トゥサンシン)・皮七星(ピーチーシン)・凤星星(フォンシンシン)
始麒麟の卵から孵った麒麟達。
以下、記述にストーリーのネタバレ(特に上古編・中古編)を含む。
辟邪(ビーシェ)
天禄(皮皮)の兄。いろんな理由で天禄の体の中にずっと隠れていた。
幼少期、谷に落ちてしまった天禄を探していた時に手伝ってくれた四不相に小梅花(シャオメイファ)という愛称をつけられる。
帝江(ディージャン)
混沌(フンドゥン)
メス。四凶の一つに数えられる神獣。生まれた頃から目が見えず耳が聞こえなかった。
金十(ジンシー)
四不相(スーブーシャン)
白い麒麟。谷に落ちた天禄を探している辟邪と出会い、兄弟のいない孤独を感じていた四不相は救い出した天禄と本当の弟のように可愛がった。
梼杌(タオウー)
擎天树(チンティエンシュ)
棉桃(ミィエンタオ)
云豆(ユンドウ)
烛龙(ジュロン)
犼(ホウ)
王多足(ワンドゥオズー)
関連動画
第1話
第8話
別名・表記ゆれ
FabulousBeasts Fabulous_Beasts 獣あらんや
外部リンク
余談
作者の名前「靴下猫腰子」は、シュエシアマオヤオズーと読む。広報の際などは靴猫(シュエマオ)先生と呼ばれることがある。「靴下猫」はおそらく日本語と同様に「靴下猫(足先だけ色の異なる模様の猫)」を、「腰子」は「レバー、腎臓」を指す単語である。この名前が何を意味するのかは一見すると謎だが、2015年のインタビュー記事では「レバー "を食べたい" 靴下猫」という意図のネーミングであることを本人が明かしていた。なお、彼女のSNSのアイコンは黒猫のイラストであるが、咥えているのはレバーではなくエビである。
靴下猫腰子は有兽焉のサイン会をたびたび行っており、サインとともにファンにリクエストされたキャラクターを描いて渡している。哔哩哔哩動画にはその様子を撮影した動画がいくつかあがっているが、素早く淀みなく、もちろん下書きなどもなく、いつも通りの可愛い絵を描き上げており、一見の価値あり。あの更新頻度にも納得がいく速筆さである。
漫画・アニメ制作会社「分子互动」の手がける他のIPには、中国で人気のWEB漫画『非人哉(フェ〜レンザイ)』や『万聖街』などがある。なお、有兽焉の物語はそれらと同じ世界で展開されているらしく、一方のキャラクターが他方の漫画にゲスト出演することも稀にある。
靴下猫腰子先生原作の漫画、『薜定谔之羊』も同じ世界線で制作されており、こちらもゲスト出演がある。また、『薜定谔之羊』の漫画を描いている冬弘大白鹅先生による有兽焉キャラクターの公式擬人化ビジュアルも公式微博アカウント、漫画にて公開されている。