プロフィール
概要
阿良句の注射により死徒化した後、原理血戒のレプリカを注射したことにより死徒として位階を上げたノエル。
原理は『望郷の鐘』。
死徒化による知覚、知能、価値観のアップデートによって人間時代とは打って変わって人間を見下すようになり、心も彼女が恐れ憎んでいた本当の吸血鬼となってしまっている。
戦闘力は実質下級死徒レベルのヴローヴにも及ばないが、ロズィーアンの魔眼と言われる強力な魔眼を会得し、精神攻撃でシエルを苦しめた。
ただ、本来のノエルは死徒になる才能も乏しかったらしく、阿良句独自の特殊なアプローチでなければ食屍鬼にさえなれなかった可能性も高いことが仄めかされている。メンタル面も今までの鬱積から開放された為、テンションこそ高いが臆病だった所等は死徒になる前のノエルと変わっていない。
臆病さは生存(サバイバル)において大切なパラメーターという考えを持っていた遠野志貴は、ノエルのことを死徒になって力に溺れながらも自分の器というものをわかっているとのことで、彼女の臆病さをそういう所は素直にすごいと思うと評価していた。
武内崇によれば「デザインコンセプトは妖蝶で、単に少女時代のノエルではなく顔つきも死徒化によって変容している。ノエルの持つ暗い情念の孵化というイメージもあるかもしれない」と月姫Rのマテリアルでコメントしている。
他にもインタビューで奈須きのこが「蜘蛛の巣に囚われた蝶」というのもモチーフの一つで、主役のつもりでパーティに参加したが実際は脇役ですらなかったというコンセプトと言及している。
能力
死徒になったことで以前の10倍や20倍では利かない性能を有しており、中指だけで人を弾いて吹っ飛ばせるほどの力がある。
基本的な能力はエーテルで構成された鐘の付いた槍による攻撃と、音にまつわる超抜能力、死徒共通の能力である下僕の使役、ロズィーアンの原理血戒である薔薇の魔眼の劣化版。
槍を用いた白兵戦だけでなく、射出による遠距離攻撃も可能としている。これらの槍は複数連結させる形で展開することも可能であり、何重にも重ねることで線ではなく面としての攻撃に使ったり、地面に突き刺して囲うことで檻としても機能する。
この槍の鐘の音は戦場の構造を把握する為の探知波(ソナー)の役割があり、さらに槍による鉄柵を越えようとするものを音波妨害によって脳を揺らして思考と平衡感覚を狂わす機能を持つ。
また薔薇の魔眼により対象の精神を幻術に閉じ込めることで、シエルと志貴に自身の過去であるフランス事変を追体験させている。薔薇の魔眼は本来であれば閉じ込めた夢の中でロアの精神ごと遠野志貴を殺せるとされるほどに強力な魔眼だが、死徒ノエルのそれはメデューサの石化の魔眼のように目を合わせていない相手にも効果を及ぼす程度には強力なものの、志貴を殺すには至らず、シエルに対しては動揺を突いて効果を及ぼせた1回目と違い2回目はより強い魔力で呪いを洗い流され無効化されるなど、作中内外で語られる本来のスペックには大きく劣る性能となる。
それでもバッドエンドでは薔薇の魔眼で見た志貴の記憶を利用した幻術と思しいもので、志貴の意識がノエルから剥離された隙をついて槍の掃射で串刺しにして倒している。その後は精神を魔眼そのものに閉じ込めて、今度は志貴自身の過去(トラウマ)を見せていた。
過去の展開はノエルの意志で変えられるようで、少しずつ悲惨な過去に変えていくことで救いもない思い出になったら、それが本物だと組み込むことで心を壊していくという。
本来ノエルは死徒になっても臆病なため、その人間の一番重い所を利用する事は避けるが、相手の非人間性次第では最後の一線を越えさせて対遠野志貴の切り札を切ったとのこと。
月姫本編内では危険性という点ではヴローヴ・アルハンゲリに劣り、慢心した所を志貴に殺されかけ、復活したシエルには互角の戦いにすらならず一方的な殲滅戦になるなど弱いという印象が目立つ。
……が、後にMELTY BLOOD:TYPE LUMINAで語られた彼女のスペックは、ロアによると死徒としての階梯はⅥ階梯、瞬間的な話であればⅦ階梯にも届き、存在規模はロアを上回る他、マシュ・キリエライトからは人間を超越した魔力反応から、幻想種で例えるのなら魔獣、幻獣クラスの脅威(同作品内では、軋間紅摩が血の質は幻獣クラスと例えられた)と判断されるなど、下級死徒の中では低くはないどころか高い部類に属するというものであった。
魔術や科学、星の神秘の力に依らず、ただそこにいるだけで世界を侵す毒である死徒の在り方も体現するなど能力だけなら一人前の吸血鬼であるが、それでもなお小物臭さを拭いきれないあたりがノエルの凡人たる所以ということなのかもしれない。
シエルとの関係性
ノエルとシエルは、元々同じフランスの小さな田舎で生まれ育った幼馴染。
シエルの父が経営するパン屋のケーキを、ノエルの父が経営するレストランで販売するぐらいには親同士の交流があり、その派生から両者も知人程度の関係性が築かれていった。
その頃のノエルは肉体の成長が遅くて、自分よりも年下のシエルの方が肉体の成長が早く、それを少し、いや割と恨めしそうにしながらも長い付き合いを続けていた。
そして、そんな嫉妬しながら嫌いにはなれない知人と、レストランに訪れるちょっと気になる少し年上で東洋系の男性との他愛ない話をする日常がずっと続くとなんとなく思っていたノエル。
…しかしその小さな幸せは、シエルがミハイル・ロア・バルダムヨォンの十七番目の転生体として覚醒したことによって粉々に砕け散った。
結果、多数の祖が集まった『フランス事変』により母が殺され、教会に逃げ込んだ父も自分諸共ロア(シエル)によって真祖が来るまでの玩具として弄ばれて絶命。
自身も上記の男性に逃げる為の囮として放り投げられるが、その時点で死体同然の有様だったため逆に自分だけ助かり、その後ロアが討たれた事で唯一、生き延びた。
だがノエルの不幸は続き、『フランス事変』を生き残った者が聖堂教会からしたら死徒という怪物に汚染されたと認定して、そのまま修道院で死ぬまで管理しようとしていた。地獄を生き抜いた先の運命を嫌ったノエルは、自分に才能なんて無いと知りながらも仮初の自由の為に代行者になる。
そんな中で死んだはずのシエルが突如生き返り、処刑と拷問の果てに埋葬機関に入った頃に二人は再会。
早々に立場が危うくなっていたノエルは入ったばかりのシエルに弟子入りを懇願。向こうも罪悪感からそれを承諾し、師弟としてタッグを組むようになった。
この時のノエルは自分の家族と人生を壊したシエルへ激しい憎悪を抱き、代行者として幸せ無き機械のように吸血鬼を狩るだけの存在となった彼女にざまあみろと思う一方、贖罪のため茨の道を進むシエルの事を尊敬もしていた。
【自分の人生を壊した事は絶対に許さない。だがそれはそれとして一緒に頑張っていこう】と、そう思うようになった。
そして、月とスッポンどころではない心身の力量差から、自分がどうしようもないぐらいに壊れた時が自分達の関係の終わりだとノエルは願っていた。
だがシエルルートにて、もういない筈だった"少女としてのシエル"が遠野志貴により戻ってきた事で、その願いさえも粉々に砕かれる事になった。
やがて、ノエルは死徒となり、ノエルはシエルのことを赦すことが出来ず、シエルもノエルを救うことが出来なかった為、もはや二人は殺し合うことしか出来なくなってしまっていた。
余談
夜の虹のノーマルエンドは「ノエルのことがあったから、誰かが貧乏くじを引いて何かを失わなければ嘘になるから」あの帰結になったという。
奈須きのこは応援したい人物に彼女の名前を挙げている。理由はヒロインとしての勝ち筋が見えないかららしい。