波紋使いたちの前に顕れる、永遠の時の淵──────
〔グアテマラ編 序文〕
〈悪霊〉が目を醒まし、時が燃え尽き、そして永遠の夜が訪れる。
〔ペルー編 序文〕
鎮魂歌──────それは波紋のように広がる夜の絶叫
〔完結編 序文〕
あらすじ
1973年、アンティグア。
グアテマラの古都であるこの街で、スピードワゴン財団職員のJ・D・エルナンデスは謎の連続殺人事件を追っていた。
犠牲者は銃のようなもので何度も撃たれているが、現場からは銃弾が一切発見されていない。この「見えない銃弾」の正体を探るべく、エルナンデスは裏通りの顔役であるオクタビオ、そして彼を補佐するホアキンを始めとする現地協力者を得て、調査を進めていく。
最初は事件に「波紋」が関係しているのではないかと疑っていたエルナンデス。しかし、彼を待っていたのは波紋ではない新たな「驚異の力」だった…
主な登場人物
リサリサ
第2部「戦闘潮流」の登場人物で、波紋法の師範代。本作ではかなりの高齢で、完結編では98歳。
J・D・エルナンデス
本作オリジナルキャラクター。スピードワゴン財団職員。
オクタビオ・ルナ・カン
本作オリジナルキャラクター。裏通りの顔役。
ホアキン・ルイス=ホルーダ
本作オリジナルキャラクター。オクタビオの古くからの親友。
余談
完結編では、あのオランウータンがスタンド使いになった原因を知ることができる。
また、2024年4月18日に『ジョジョの奇妙な冒険 無限の王』と題して、グアテマラ編〜完結編がまとめられ、ハードカバーで販売が開始された。
結末
ここから先、重大なネタバレにつき注意。
「あ、ぼくか。」
「ぼくが「無限の王(エル・アレフ)」なのか?」
辺り一帯を永遠に夜にし、闇の中から世にも恐ろしい超生物を生み出す〈驚異の力(ラ・マラビジャス)〉である「無限の王(エル・アレフ)」の本来の能力は、完全に独立した自我をそなえ、血も肉も精神もともなう友達を生み出すことであった。
そして、ホアキンは「無限の王」の真の持ち主であるオクタビオが、孤児院時代に自らの能力で生み出した友達であり、いわば「無限の王」そのものだったのだ。
「夜」の能力は、アルホーンによってオクタビオやホアキンが矢で刺された時に目覚めた「無限の王」の新たな能力であり、ジョジョの奇妙な冒険本編の呼び名にならうならその名前は「エル・アレフ・レクイエム」である。
そのことに気づいたリサリサはオクタビオとホアキンにそれを告げるが、オクタビオは既にそのことにうすうす気づいていたのか、ホアキンに「おまえがそれに気づこうと、おれたちは二人で一つだろ」と話す。
だが、リサリサはそれに反論する。オクタビオの能力でありながら本体に反抗する姿を見せたホアキンは「私たちや私たちの子孫が未来に向かっていくための灯」にもなるとホアキンの説得を試みる。
その瞬間、足場が崩れ、リサリサとオクタビオが転落。
ホアキンがとっさに助けたのは────
リサリサの方だった。
自力で這い上がってきたオクタビオが、リサリサに凶器の義足をふるう。
だが、ホアキンがオクタビオを突き飛ばす。
一度ならず二度までも、本体の望みにあらがって。
「おまえが、おまえがどうしておれを・・・」
「ごめんよ(ロ・シエント)。」
「だけど、もうこうするしかない。」
リサリサが自身の能力「ザ・ハウス・オブ・アース」でオクタビオに拳の乱れ撃ちをくらわすが、ホアキンが本体のオクタビオをかばうように、一蓮托生の人生を全うする覚悟を決めたように、オクタビオの前に身を投げる。
「ヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワヤワアアアアアァァアア──────────────────」
二人は超生物の海へと落下していった。
彼らの行方は未だ知れない。
死んでしまったのかもしれないし、今もどこかで生きているのかもしれない。
だが、森(セルバ)を覆っていた永遠の夜は明けた。
その後、マラリアにかかったことで老いが急に押し寄せてきたリサリサは小高い丘にある療養施設に住むことになる。そこを訪ねた息子、ジョセフ・ジョースターは、リサリサからオクタビオとホアキンの話を聞いて「同時発生しているこの現象の世界で最初の事例なのかもしれん」と語る。彼の能力は「隠者の紫(ハーミット・パープル)」という紫色のいばらのようなスタンドで、カメラなどを用いて念写を行うことができる。「オクタビオとホアキンはなんどか訪ねてきてくれた」とリサリサは語るが、それが正式な面会なのか、それとも夢の中でのことなのかは、リサリサは語らなかった。
ジョセフ・ジョースターは、リサリサに1つの質問を投げかける。
「この能力にあなたならなんと名付ける?」
彼は財団の用いる「幽体(アストラル)」や「驚異の力(ラ・マラビジャス)」という名称があまり気に入らないようだ。
その質問にリサリサはこう答えた。おそらく、二人で生き、二人で消えてしまった男、互いによき友であった若者たちに思いをはせながら。
「────友達、かしらね」
いつでもそばに立っていて(STAND BY)くれる友達。
ジョセフは、母リサリサの言葉からある名称を思いつく。
そして、同じく能力に目覚めた彼の孫にこう語るだろう。
そばに現れ立つ(STAND BY)というところからその像(ヴィジョン)を名付けて
「幽波紋(スタンド)!!!」
※なお、生粋のジョジョラーならば気付いた方もおられるだろうが、ザ・ハウス・オブ・アースのラッシュ時の叫びはリサリサの「無用! たかが20歳前の小僧からいたわられるほどやわな人生は送っていない!」というセリフの「やわ」から取られたと考えるのが自然であろう。