概要
ワタルはハクリュー2体とギャラドスの能力で、活火山の溶岩の熱にも耐える強力な泡のシールドに身を包む。更には不可視のバブルこうせんの攻撃を展開し、イエロー自身にもダメージを与えていく。それでも策を凝らしてワタルの強力なドラゴンポケモン達に立ち向かうイエローだが、未進化ゆえのパワー不足が祟り、手持ちポケモンの戦力差に顕著に表れ、次第に追い詰められていく。
万事休すかと思われたその瞬間、イエローを庇うように一人の黒服の男が現れた。
その男こそがサカキであった。
イエローはあくまでトキワ出身のトレーナーでなければワタルに勝てないと主張するが、サカキは彼女を窘めるようにこう告げる。
「…心配するな。オレもトキワのトレーナーだ!」
かつてトキワジムにて壮絶な戦いを経験したピカはサカキに激しく威嚇する。敵か味方かわからず困惑するイエローだが、ひとまずその場をサカキに託す。
かくして、カントー四天王のトップ・ワタル対ロケット団元リーダー・サカキの一騎打ちの火蓋が切られた。
サイホーンやニドクインなど自身が専門とするじめんタイプのポケモンを駆使し、不可視のバブルこうせんの仕掛けを早々に攻略するサカキ。しかしそんなじめんポケモンたちでも溶岩に耐える泡のシールドは突破できず、跳ね返されてしまう。
イエロー同様サカキのポケモンもパワー不足と看過したワタルは、ここぞとばかりに手持ちのドラゴンポケモンのはかいこうせんを一斉に乱射。
地盤が揺らぐほどのはかいこうせんの嵐に見舞われるサカキと手持ちのポケモン達。防戦一方と思われたサカキだが、この時ボールを一つ地面に落としており…
ワタルがサカキ達に集中砲火を浴びせている時、サカキは既にワタルの死角を見抜いていた。ワタルが気付いた時には遅く、先ほどサカキが転がしておいたボールのスイッチが入っていた。そして…
サカキ「真下がガラ空きだ!」
""ダブルニードル!!""
サカキの真の切り札・スピアーが猛スピードでワタルに向かって突撃し、ダブルニードルで一気に泡のシールドを突破してしまった。
ドラゴンポケモン達はそのまま撃破され、ワタルは先ほどの戦いでイエローのピーすけ(キャタピー)が張り巡らせておいた糸に絡めとられる形で一旦の勝負は決した。
その後スピアーは身動きの取れないワタルにサカキの指示で首元に毒針を突き立てるが…
解説
窮地に追い込まれた主人公をかつての敵キャラが助けにくるシチュエーションや悪役vs悪役という構図、コマ割りの秀逸さ、そしてサカキが本来専門とするタイプ以外のポケモンで逆境を一気にひっくり返すカタルシスなども相まって読者からの人気も高いシーンの一つ。
特にメディアミックスにおけるスピアーの活躍シーンとして非常に有名で、中には「世界一かっこいいスピアー」なんて声も。実際、第2回ポケスペ人気投票ポケモン部門では、サカキのスピアーが敵役ポケモンとしては最高位の13位にランクインしている。
「本来じめんタイプ以外は専門外だが、こいつは特別だ。自分と同じ生まれ故郷である、トキワの森で育ったポケモン」として、スピアーを特別視していることが、本バトルの直後にサカキの口から直接語られている。前述の通りトキワ出身のトレーナーでなければワタルに勝てないとされる中でトキワの森出身のスピアーが逆転の切り札となったのも、中々に意味深長なものがある。
更にはパワー不足で泡のシールドを破れなかった状況に対してスピアーを繰り出したことから、サカキが如何にスピアーを長きに渡って鍛え上げ、そして切り札として信頼を置いているかがうかがえる。
なお、「一見勝ち目がなさそうな状況の中で、相手の死角にボールを落としてからポケモンを出現させて奇襲を仕掛ける」という戦法は、かつて他ならぬサカキ自身がスピアーでレッドに対峙した際、彼のプテラで仕掛けられて撃破されたものである。トレーナーとしてはベテラン寄りでありながら若手のレッドからもノウハウを吸収する辺り、サカキもまた悪党でありつつも生粋のポケモントレーナーなのだろう。
余談
- サカキのスピアーはその後も定期的に登場しては活躍しており、後の章ではスピード勝負でデオキシスを追い詰める、その場に繰り出すだけでトレーナーを牽制するなど彼の懐刀として要所要所で存在感を示している。また、ORAS編では、短いながらもメガシンカした姿も披露した。
- 上記の通り、本章では凄まじい戦果を上げたスピアーだが、残念ながら本家ゲームでのバトル性能は本作には遠く及ばず、かなり厳しいと言わざるを得ない作品が少なくない。無論、活躍していた時期もあるので一概には言えないが…。上手く工夫しながら戦っていくか、今後の強化に期待したいところ。
- ちなみに初代赤緑のシナリオ本編なら、やろうと思えばスピアーでワタルのハクリューやカイリューを倒すことも不可能ではない。というのも、初代はAIの都合上「どくタイプに効果抜群のエスパータイプの技を優先的に使用する」「PPが切れない」という性質があるため、積み技かつエスパータイプのこうそくいどうをどくタイプのスピアー相手に永遠に使い続けてしまうからである。ただし向こうのレベルは高いため、こちらのスピアーもしっかり鍛えてから挑むことを推奨する。