概要
矢車菊(ヤグルマギク、学名:Centaurea cyanus)は、キク科ヤグルマギク属の植物の一種。春に花を咲かせる一年草である。
花色は白、桃、紫、蒼、赤など各色あるが、花が青いものが描かれることが多い。
和名では、鯉のぼりの柱の先につける矢車に似ていることから「矢車菊」の名前になった。
矢車草(ヤグルマソウ)とも呼ばれるが、ユキノシタ科のヤグルマソウと混同しないようにヤグルマギクと呼ばれることが多い。
また、ヨーロッパ東南部や西アジアの麦畑の中に咲いていたことから、英名は「コーンフラワー」と呼ばれている。ナポレオンに侵攻された際、麦畑に隠れたプロシア(のちのドイツ)の皇后ルイーズがヤグルマギクの花で花輪をつくり子供たちの慰めにしたという逸話がある。
近似種に「イエローサルタン(黄花匂矢車)」がある。
ヴィルヘルム1世がドイツ皇帝に即位した際に、帝室の象徴に採用したため、慣習的にドイツの国花として扱われている。ドイツでは「カイゼル(皇帝)の花」とも呼ばれる。
日本では観賞用に広く栽培されるが、一部地域で野生化しており、外来種としての一面も持つ。
国花
ドイツ連邦共和国、フランス共和国、エストニア共和国、マルタ共和国
誕生花
花言葉
「優美」「上品」「華奢」「優雅」
「教育」「信頼」「デリカシー」「独身生活」「天上の人」
文化
- 学名の『Centaurea』は、ギリシャ神話に出てくる半人半馬の生物、「Centaur(ケンタウロス)」にちなむ。ケンタウロスの中の一人、ケイローンは医術の祖とされ、『教育』の花言葉にふさわしい賢人であり、ヤグルマギク属の植物で傷を癒したと言われる。
- 学名の『Cyanos』、また花言葉の「天上の人」は、ギリシャ神話のキュアヌスの伝説と関わりがある。キュアヌスは、女神フローラの信者で、彼は様々な花の花輪を祭りのために作って暮らしていた。キュアヌスはヤグルマギクの花が一番美しいと信じていて、彼が死んだときにはその花が周りに散らばっていたとされる。また、フローラは彼の体をヤグルマギクに変えたと言われている。
- 「独身生活」という花言葉は、つぼみがボタンの形をしていて独身の男性がこの花を襟元につける習慣があり、別名でバチャローズボタン(独身者のボタン)と呼ばれていたことからきている。
- その青紫色の美しさから、最高級のサファイアの色味を「コーンフラワーブルー」として引き合いに出される。(⇔最高級のルビーの色:ピジョンブラッド)
- ノヴァーリスの小説『青い花』(邦題;原題は「ハインリヒ・フォン・オフターディンゲン」)に登場する青い花はヤグルマギクといわれる。
- ツタンカーメン王の棺の上にはヤグルマギク、蓮、オリーブ等で作られた花輪が載せられていた。
- マリー・アントワネットが好んだ花であり、洋食器の『小花散らし』の模様は彼女がデザインしたヤグルマギクの柄に由来する。