概要
寝ている竜の涎(よだれ)が固まったものであるといわれる大理石のような模様を持つ蝋状の香で、7世紀頃からアラビアで用いられるようになったといわれており、エタノールに溶かしチンキとした高級香水として使用された。
中国では上記の竜が棲むボルネオの一島で採取されるといわれ、神経や心臓に効く貴重な漢方薬ともされた。日本では室町時代の書物に記録があるため、そのころに伝来したものであると考えられている。
アラビアではアシボビュックというアフリカ南部の諸島部に棲む怪鳥の糞が日光と空気にさらされたものであると信じられており、その希少性から一攫千金を求めその鳥が棲む島に危険だと知りながら旅立つものが絶えなかったという。
フランス語でambre gris (アンブル・グリ 英語ではアンバーグリス)と呼び、これは「灰色の琥珀」という意味であるため伝聞において本当の琥珀と誤解されることもあった。
実は・・・
その正体はマッコウクジラの腸内に生成される結石で、食べられたタコやイカの嘴、魚骨などが後に排出するために固められたものであると考えられている。
体外に排出された結石は比重が軽いため、海に浮かんだ状態で日光と酸素による酸化によって生成され海岸に打ち上げられる。
そのため採取は偶然によるものとなり非常に高価であった。
しかし17世紀以降に商業捕鯨が始まるとその正体が知られるようになり、解体によってそれなりの量が採取されるようになったが、1986年以降は商業捕鯨が禁止されたために運頼りなものに戻っている。
現在では類似した香りの香料が合成され代用されている。
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龍涎香:文化・創作での扱い