笑顔は子どもみたいにチャーミングです
かんしゃしかありません
曖昧さ回避
本項では1.について解説する。
NHKの連続テレビ小説『エール』第119回(2020年11月26日放送)で、西洋音楽の作曲家・小山田耕三(演:志村けん)がみせた笑顔。
同年3月による肺炎で逝去した志村けんだが、生前に収録され残っていた映像から、奇跡だと思える偶然によって撮られた画だった。
あらすじ(冒頭の回想場面)
ある日、作曲家を目指しているという青年・広松寛治(演:松本大輝)が主人公の作曲家・古山裕一(演:窪田正孝)を訪ねてくる。それは東京オリンピック行進曲の仕事を終え、年月がながれ病に伏す妻の音(演:二階堂ふみ)の療養に専念するため、東京を離れ静かな生活を送っていた頃の事だった。
この時に裕一は、まだ未熟だった自身を採用してくれた西洋音楽の代表的作曲家・小山田耕三(演:志村けん)からの手紙を思い出す。
まだ裕一が東京に居たある日の事、小山田の付き人・猿橋重三(演:川島潤哉)が小山田の手紙を持参して訪れた。裕一はその場で手紙を開き文面を読む。手紙には、裕一の類い稀な作曲の才能に気づきコロンブスレコードへ推薦した時の期待や、推薦した小山田自身の予想を超えて才能を伸ばす裕一への嫉妬、己の地位が若き才能で揺らぐのではないかの畏怖が綴られていた。そんな気持ちを密かに抱えていたからこそ、今まで裕一に辛く当たってしまった事、もし応援していれば貴重な逸材を更に成長されたかもしれない事、それが行えなかった後悔は己も愛する音楽を冒涜する行為だったと謝辞する言葉が続く。そして裕一が成し遂げた東京オリンピック行進曲(マーチ)を聞き、一人の日本國民(にほんこくみん)として、その偉業【音楽の深淵を知れる作曲】への賛辞を贈った―
" ありがとう "
" 最後に気が引けるが、どうか私を許してほしい "
" 音楽を愛するがゆえの過ちだ "
" 道は違えど、音楽を通して日本に勇氣(ゆうき)と希望を与えてきた同志として、今度は語り合いたい "
" 私は先に逝く "
" こちらに来たら聲(こえ)をかけてくれ "
小山田耕三
(この手紙を読む場面、外観は声に出さず古山裕一(演:窪田正孝)がナレーションのように朗読して言葉を現す演出がされている。出来るならば、演者・志村けんの声で朗読して撮られる場面だったかもしれない。)
本人に代わって裕一の純粋な思いを受け取り、顔が綻んだ猿橋は小山田を顧みてー
" いつも…(古山)先生の前ではしかめっ面でしたが、
笑顔は…子どもみたいに…チャーミングです "
そう告げた後、数秒の無音と共に西洋な室内に置かれた鏡に映る小山田耕三(演:志村けん)の子どもみたいにチャーミングな笑顔を見せていく画が挿し込まれ、目の前にいる自分と同じように日本を代表する作曲家が抱く感謝の気持ち・尊敬する作曲家の言葉は、確かに届けられたのだった。
主人公・古山裕一(演:窪田正孝)の前ではいつもしかめっ面だったが、手紙を届けに来た付き人・猿橋重三(演:川島潤哉)が「笑顔は子どもみたいにチャーミング」だったと語る場面の志村けんの笑顔は、今回が初出しの映像だったという。
脚本・演出に携わった吉田照幸は、本作『エール』の構想で「最後に志村さんをどうやって出すか」を練っており、2020年3月の事で変更がある中でも「手紙の内容を小山田が直接、裕一に伝えるシーン」は、最初からあったものとの事。
今回の初出し映像は、実際は「現場で他の人がNGを出した時に思わず笑っていた志村さんがたまたま映っていた映像」を編集担当が見つけたもの。更に奇跡と思われるのが、ミラーショットじゃなかったら今回の製作に使えなかったかもしれないということ。鏡に映り込んだ顔だからこそ、相手を惹きこみ思いを馳せることができる風景。偶然だからこそ自然な笑顔で撮れており、そんな「奇跡の画」だったから編集作業に至る事が出来たらしい。
猿橋重三(演:川島潤哉)の台詞でもあったが、演者・志村けんの人柄は仕事を共にした吉田照幸も「志村さんは、本当に子どもみたいな笑顔をされる方」と振り返った。
また志村けんは、主に動作(アクション)で相手を惹き付ける人物で、今回の数秒で魅せた笑顔は無音だが子どものような笑みを浮かべていくという粋な演出で、視聴者の中には釣られて朝から心を動かされた方もいたようだ(SNSに寄せられたコメントより)。