概要
連続テレビ小説第102作目。2020年3月30日から11月27日まで放送された。
主人公は窪田正孝演じる「古山裕一」。
ナレーションは声優の津田健次郎が担当し、男性ナレーターは2作前の『なつぞら』を担当したウッチャンナンチャンの内村光良以来1年ぶり。
なお、後述の通り男性主人公・男性ナレーションの組み合わせは、(主人公がナレーションを兼任していた)『走らんか!』以来25年ぶりとなる。
近代歌謡の巨星「古関裕而」の人生をモデルとし、その足跡と夫婦の絆を描いていく。
作品名の「エール」は「応援」の意で、東日本大震災から10年の節目を目前に「福島を応援したい」との思いを込めて企画され、福島出身の主人公を模索する中で福島の偉人であり多くの応援歌を作った作曲家の古関裕而に着目した。
テーマ曲『星影のエール』は、福島県で結成された音楽グループGReeeeNが担当している。
従来作と異なる点として、土曜日の放送はその週の月~金放送のストーリーを振り返る総集編(ダイジェスト)となっており(以降の作品もこの形式をとっていく)、バナナマン日村勇紀が「朝ドラおじさん」としてワイプで出演する。
その日村氏も、第23週にて本編に登場した。
2020年6月29日以降の放送は新型コロナウイルスの影響により撮影が中断されたため、本放送を中断して当面の間再放送される事になった(ただし土曜日は総集編の放送を行わず、その分次の週の放送回を早出ししている)。
この前後でも新型コロナウイルス関連情報を放送する為、ダイジェスト再々放送を中心に放送を中止する日が発生。4月7日の12時台の再放送も国会中継(緊急事態宣言発令の事前説明)で中止された(翌日12時台に2話分再放送)。
その後撮影が再開。9月14日の放送から本放送が再開される事が発表され、11月下旬に放送終了する事が決定し、放送回数が2週間(10日)分短縮される事になった。
2020年11月26日に本編が終了し、最終回となる27日に出演者が歌を歌うコンサートを行った(28日が本編の振り返り)。これにより、それ以降の作品も開始・終了が通常と異なる時期になる状態が2年ほど続いた。
あらすじ
時は大正。
福島の老舗呉服屋の長男・古山裕一(石田星空)は不器用で内気、いじめられがちな少年であった。
しかし担任の藤堂先生(森山直太朗)の勧めで作曲を始めると、秘めた才能を発揮。
一方、父の三郎(唐沢寿明)と母のまさ(菊池桃子)は店の経営に行き詰まっていた。そこに裕一の伯父・権藤茂兵衛(風間杜夫)からある申し出があり…。
ある日、音楽家を夢見る裕一は、ガキ大将の村野鉄男(込江大牙)の秘密を知ってしまい!?
登場人物
- 古山裕一(演:窪田正孝(幼少期:石田星空))
福島出身の老舗呉服屋の長男。
不器用で内気、そのためいじめられっ子で近所のガキ大将や悪ガキからたびたび標的にされていた。
生真面目だが内気さが災いし、優柔不断で押しに弱く挫けやすい。しかし誰に対しても優しさを忘れず、人と寄り添おうとする誠実さも併せ持つ。
近所の教会のミサで西洋音楽に触れ、そこから音楽を知って秘められた才能が芽吹き始める。
独学であったものの、小学校で既に作曲の才能を開花させるが、周囲の期待から一時はその才能に蓋をして跡取りとなるべく、商業学校を卒業後は伯父の経営する銀行で商売の修行に入る。
しかし銀行の先輩たちの後押しで国際作曲コンクールに応募すると入賞を果たし、同時に彼のファンとなった女性との文通で女性との恋に落ちる。
その後、文通相手だった関内音と対面して気持ちを通わせ、一波乱ありながらも無事結婚。声楽家を目指す音と共に音楽の道を目指し、上京後はコロンブスレコード所属の作曲家として活動していく。
なお彼の名字は「ふるやま」ではなく「こやま」と読む。
- (関内→)古山音(演:二階堂ふみ(幼少期:清水香帆))
父を尊敬し、小学校時代に学級劇で『かぐや姫』を提案して演じて以来、声楽家を夢見るようになる。
芯が強く、思い切りのいい強気な性格。同時に正義感が強く口性ない性分で、理不尽な我慢や遠慮というものに激しく不満を募らせ、ひと悶着起こすことも少なくない。
新聞で祐一が国際作曲コンクールに入賞したことを知り、「日本人の西洋音楽が海外に通用する」ことを知ると共に、その偉業を達成した祐一の熱烈なファンとなる。
彼へのファンレターを切っ掛けに文通を始めるが、周囲に諭されて筆を断つ。……が、それをきっかけに今度は祐一が福島から押し掛け、彼からの熱烈なアプローチと想いを受け入て結婚を決める。上京後は東京帝国音楽学校の声楽科に進学し、夫を支える傍らで夢の実現のために勉学とオーディションの日々を送る。
- 村野鉄男(演:中村蒼)
モデルは作詞家の野村俊夫(福島県福島市出身)。裕一の幼馴染で、福島三羽ガラスの一人。
- 佐藤久志(演:山崎育三郎)
モデルは歌手の伊藤久男(福島県本宮市出身)。裕一の幼馴染で、福島三羽ガラスの一人。
- 藤堂清晴(演:森山直太朗)
裕一の小学生時代の恩師。
幼いころの裕一の、音楽の才能を見出す。
インパール作戦のさなか、裕一と再会するが、戦死。
参考リンク→登場人物 相関図|NHK連続テレビ小説『エール』
余談
- 男性主人公&男性ナレーション
本作は2014年の『マッサン』以来約6年ぶりの男主人公となったが、主人公もナレーションも女性の傾向が強い朝ドラにあって「主人公とナレーターが共に男性」だったのは1995年後期の『走らんか!』以来25年ぶりである。
ちなみに『走らんか!」は主演の三国一夫が直接ナレーションも担当していた。
次作『おちょやん』では女性主人公+男性ナレーションとなっている。
なお、後述の通り、終盤津田はゲスト扱いで出演しているが、津田の演じた役=ナレーションの人物ではない。
「主人公もナレーションに加わっていた」のは2017年の『ひよっこ』(※特殊な形ではあるが翌18年の『半分、青い。』を含めることもある)が現状では最後である。
- 時代設定
今作の時代設定は大正〜昭和だが、冒頭では原始時代から、さまざまな時代を経て、現代の令和時代までが映し出されている。「はるか昔から音楽がいかに人生の中に存在しているか」を表現したものであり、音楽を、一人一人にある人生の流れを描いた本作のテーマを象徴するオープニングとなっている。
- 志村けんの遺作
志村はかの山田耕筰(正確には山田耕筰がモデルの「小山田耕三」)を演じたが、第1話が放送される前日の9時間半前の3月29日に亡くなった。本作が遺作となる。
ちなみに志村の訃報は第1話が放送された数時間後に報道されたが、彼が出演していた箇所は予定通りに無事放映。初登場した5月1日の放送ではオープニングで追悼テロップが表記された。また、志村の登場は10月1日の放送が最後の出演だった・・・と思われたが、終盤に奇跡と思える形(偶然撮れたショットでのライブラリ出演)で再登場する演出がされた。
- 主役の名前
主人公「古山裕一」とヒロイン「関内音」。
この二人の名字を合わせると「古関」、「内山」となり、モデルの古関裕而・金子夫妻の名字になる(金子夫人の旧姓は「内山」)。
なお「金子」はかねこではなく「きんこ」と読む。
- 老舗呉服屋「喜多一」
裕一の生家であるこの呉服屋は福島市大町にかつて存在した「喜多三」がモデル。
福島駅東口に近いオフィス街(通称「レンガ通り」)の辺りにあったが残念ながら現在では跡地になってしまっており、その場所にはささやかな記念碑が建っている。
- 君の名は
コロンブスレコード(モチーフは日本コロムビア)で裕一と同期となる作曲家「木枯正人」(モデルは古賀政男)役でRADWIMPSの野田洋次郎が第28話から登場。
RADWIMPSといえば新海誠監督の映画『君の名は。』の主題歌『前前前世』及び挿入歌、劇伴担当で知られるが、裕一のモデルとなった古関裕而はNHKのラジオドラマ『君の名は』の主題歌を作曲している。さらに、木枯の登場シーンでは「君の名前は?」というセリフを発しているなど、まさに「君の名は」つながりを感じさせるものであった。
- 声優の顔出し起用
本作のナレーションを務める声優の津田は、劇中でも終戦後に自暴自棄となっていた久志の博打仲間「犬井」役で顔出し出演。視聴者だけでなく声優ファンたちを驚かせた。
第111回のラジオドラマ「君の名は」の収録シーンでも登場人物の後宮春樹の声優役として三木眞一郎、氏家真知子の声優役として恒松あゆみ、ナレーションを担当するアナウンサー役として尾田木美衣が出演している。
なお、声優を本業とする人物の顔出し出演自体は、本作の1年前の『なつぞら』でも行われている(主人公がアニメーターという設定から、アニメ関連のネタが多数取り上げられている)。
関連タグ
ちくわ・・・作中、豊橋名産のちくわがたびたび登場する。
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