概要
1994年から開始されたメディアミックス作品『平成ウルトラセブン』において完結編として構想されていたものの、実現されなかった没シナリオ。
1997年にテレビスペシャル『地球星人の大地』の続編として構想され、同スペシャル内で行方不明となったウルトラセブンのその後を描いた物語で、『太陽エネルギー作戦』から続く平成ウルトラセブンの完結編として企画されていた。
オリジナル宇宙人メンジュル星人との戦いを通し、ウルトラシリーズでも屈指のスケールと衝撃的なラストを迎えるはずだった。
後に一部設定だけを抽出し、オリジナルビデオ作品『ウルトラセブン誕生30周年記念三部作』の第三部『太陽の背信』に流用された。
あらすじ
数百年前から地球各地で暗躍していた宇宙人、メンジュル星人。ケネディ大統領の暗殺、第二次世界大戦、湾岸戦争の裏側でこの宇宙人は暗躍しており、近年でも放火事件やビルの倒壊事件といった騒動を引き起こしていた。
星人の目的は、地球人から怒りの感情を引き出してエネルギーとして故郷である、人間の負の感情によって生まれた宇宙「第七宇宙」へと送り込むことにあった。星人は古来より数多くの悲惨な事件を巻き起こし、地球人たちから怒りの感情を引き出してはスターゲイトを通して第七宇宙へ送り込んでいたのだ。
怒りのエネルギーがもしなくなれば第七宇宙は消滅してしまう。メンジュル星人の目的は単に地球に混乱を起こすのではなく、第七宇宙に生きるすべての生命体を救うことにあった。
より多くのエネルギーを獲得すべく、星人はウルトラセブンを利用することを画策。恐怖幻影巨大怪獣バビルンを街で暴れさせ、現れたウルトラセブンと戦わせた。
バビルンには相手が最も恐れる存在の幻覚を作り出し、翻弄する能力がある。バビルンはセブンの記憶からエレキング、キングジョー、にせウルトラセブン、パンドンの幻覚を生み出し、セブンを翻弄する。キングジョーにはアイスラッガーも通用せずかつてのように格闘戦で圧倒され、エレキングの電撃とにせセブンのワイドショットを同時に受けたセブンは倒されてしまった。
バビルンでセブンを倒したメンジュル星人は落胆する人々から怒りの感情を抽出していった。さらに星人は全身から人間を凶暴化させるプラズマを放出し、さらに人間を暴れさせ各地に混乱を引き起こした。
絶体絶命の状況を打破すべく、セブンは再びバビルンに戦いを挑む。やはり幻覚の怪獣に翻弄され追い詰められていくが、怪獣たちが幻覚であることを察知したセブンは目を閉じ、心眼でバビルンの本体を見つけ出し、形勢は逆転。セブンの姿に人々は希望を取り戻し、第七宇宙は徐々にダメージを受けていく。このままでは第七宇宙が滅ぼされてしまうとメンジュル星人は巨大化。バビルンと2対1でセブンに戦いを挑んだ。
激しい戦いが繰り広げられる中、怒りのエネルギーが受けられず崩壊寸前の第七宇宙につながるスターゲイトがブラックホールになってしまい、地球のあらゆる物質を吸収しようと荒れ狂った。
メンジュル星人とバビルンは協力してセブンをブラックホールに落とそうするも、アイスラッガーとエメリウム光線の反撃を受け失敗。逆にセブンによって自分たちがブラックホールの中に飛ばされてしまい、セブンの光線によってブラックホールは消滅した。その先にある第七宇宙も光線の力で爆発を起こし、宇宙からなくなってしまった……
かくしてセブンの活躍で地球の危機は救われた。第七宇宙とそこに住む罪なき数多くの命という巨大な犠牲を払って。
解説
地球を救うためとはいえ、ウルトラセブンが一つの宇宙を滅ぼしてしまったという衝撃の展開であり、もし実現していたら平成セブンの中でも問題作として知られる『わたしは地球人』以上の問題作、話題作となったであろう。
結果として平成セブンはテレビスペシャルからオリジナルビデオ作品へとシフトしたことでこのエピソードは製作されなかったが、上記の通り一部の要素のみを抽出し、『太陽の背信』として製作されることとなる。
同エピソードに登場する怪獣バンデラスは滅亡に瀕しているバンデラス太陽系の太陽の化身であり、人間たちの欲望をエネルギーとしてスターゲイトを使って取り込み再び太陽として輝きバンデラス太陽系を復興させようとしている点が、第七宇宙を守ろうとするメンジュル星人と共通している。
最大の違いは、メンジュル星人の棲む第七宇宙はある程度安定した状態にありセブンとの戦いでエネルギーが得られず滅亡したがバンデラス太陽系は本編の時点ですでに滅亡し、住民たちはすでにほかの星系へと避難しているということが挙げられる。
そしてメンジュル星人は第七宇宙を守るため、バンデラスは自分がまた太陽になれば住民たちが戻ってくると信じウルトラセブンと戦うこととなってしまった。