概要
1994年3月21日の太陽の日に日本テレビ系で放送された、『ウルトラセブン』のテレビスペシャル。
いわゆる平成ウルトラセブンシリーズ作品の第1弾であるが、完全に『セブン』単独の世界観で描かれた後のOV作品とは異なり、他のウルトラシリーズに登場した怪獣・宇宙人に関するデータが劇中で紹介されている(ただし、これは他作品との繋がりを意識したものとは限らない)。
ウルトラシリーズのテレビ作品としては『ウルトラマン80』以来14年ぶり、『ウルトラセブン』としては実に26年ぶりとなる完全新作。スタッフの多くは『電光超人グリッドマン』から引き継がれている。
通商産業省(現・経済産業省)、資源エネルギー庁とのタイアップであり、内容は環境問題とエネルギー問題をテーマにした教育的な側面が強い。
『ウルトラセブン』が選ばれた理由は、太陽エネルギーを吸収する胸部のプロテクターを通産省関連のソーラーシステム振興協会が振興事業として進めるソーラーシステムに見立てたことによるもので、セブンのキャラクターを活かした特番によって子供たちやかつてセブンを見ていた大人たちにソーラーシステムを周知させるというものであった。
出演者も非常に豪華であり、テレビシリーズのオリジナルキャストである毒蝮三太夫とひし美ゆり子が同役で出演。ほかにも『ウルトラマン』のハヤタ・シン役の黒部進、フジ・アキコ役の桜井浩子、イデ隊員役の二瓶正也、『ウルトラQ』の万城目淳役の佐原健二、戸川一平役の西條康彦のほか、当時の円谷プロダクション社長・円谷皐がゲスト出演している。
本作ではモロボシ・ダンは登場せず、森次晃嗣はナレーションとセブンの声を担当している。
後にVHSとLDソフト化された際には「TVオンエア版」の他に、マスター映像を使用してカットシーンを追加し一部BGMを変更、LDにはさらにメイキング映像も収録した「完全版」が発売され、DVDにはその両方が収録された。
あらすじ
ある夜、宇宙での戦闘で傷ついた宇宙人が地球の重力に引かれて落下した。その宇宙人こそ、ウルトラセブンだった。
同じ頃、地球ではクスハラ博士を中心に太陽エネルギーの実用を目指してハイパーソーラーシステムを完成させていた。しかし、何者かの工作によりハイパーソーラーシステムは爆破されてしまう。
そんな中、かつてのウルトラ警備隊員アンヌの息子であるダン少年は、訪れた森で謎の妖しげな少女と出会い、さらに少女が指さした森の奥に怪獣エレキングを目撃する。偶然、近くを通りかかったウルトラ警備隊のトーゴー隊員とリサ隊員に知らせるダンだが、すでに少女もエレキングも姿を消してしまっていた。
一方、一連の事件を追うウルトラ警備隊のフルハシ隊長は、カジ隊員と共に地球防衛軍の格納庫に収容されていた仮死状態のウルトラセブンを目の当たりにする。セブンが地球を去った時のことを思い出し、ボロボロになるまで人知れず地球を守り続けてくれていたことを知り涙するフルハシ。セブンを蘇らせられないかと考えるが、地球に届く微量な太陽エネルギーでは生命維持が精いっぱいだった。
そして、ダン少年が夜の森で出会った少女の正体であり、ハイパーソーラーシステムの爆破の首謀者であるピット星人はエレキングを出撃させ、炭酸ガスで森林を破壊し始める。すぐさまウルトラホーク1号で現場に向かうフルハシとカジ。ピット星人の策略でエレキングのデータは削除されてしまっていたが、フルハシは角が弱点だと思い出し破壊に成功、形勢不利と判断したピット星人はエレキングを撤退させる。その頃、ピット星人の円盤がある森の中を探索していたダンはピット星人に捕らわれてしまった。
クスハラ博士によるハイパーソーラーシステムの修復が進む最中、スパイカメラの偵察でウルトラセブンの生存を知ったピット星人。傷の修復が完了したエレキングにハイパーソーラーシステムを破壊させ、自分たちの円盤でセブンを抹殺するという二面作戦に出た。エレキングが迫る中、必死に修復作業に努めるクスハラ博士たち。一方、セブンが横たわる格納庫に到達したピット星人は、円盤から照射される太陽エネルギーを利用した光線で止めを刺そうとする。しかし、円盤内に捕らえていたダン少年が抵抗し、光線の装置を動かして逆に作用させたことで太陽エネルギーがセブンに注入された。
ついに復活を遂げたウルトラセブンは、ハイパーソーラーシステムを破壊する寸前のエレキングを止めるべく飛来。エレキングと激しい格闘戦を繰り広げる。エレキングに新たに実装された炭酸ガスと、巻き付いた尻尾の電撃に苦戦するセブン。その頃、ハイパーソーラーシステムの修復が完了し、エレキングのエネルギーを奪い取ることに成功。優勢にたったセブンは、アイスラッガーとエメリウム光線でエレキングに止めを刺した。
計画が失敗したピット星人は捕らえていたダン少年を人質に降伏を迫るが、すぐさま円盤内に突入したウルトラセブンによってダンは救出され、円盤ごとワイドショットで撃破される。そして、セブンは再び地球から飛び立つのだった。
登場人物
ウルトラ警備隊
演:毒蝮三太夫
今作の時点では隊長に昇格している。
傷つき横たわるセブンを見て「こいつは、地球人より地球のことが好きな、大バカ野郎だ!」と愛情たっぷりの毒蝮節で評した。
エレキングの出す炭酸ガスで高温になった地帯に突入した際には「俺は肉まんになっちまうよ」とボヤいていたが、エレキングの弱点が角であることを思い出す。
演:影丸茂樹
熱血漢の若手隊員。
ピット星人によってデータベースからエレキングのデータが削除されておりいくら検索しても見つからず、フルハシに「ガッツがねえんだよ、ガッツを出せ!」と言われ「ほれ!」と言いながらガッツ星人のデータを出して「笑えねんだよ」と引っぱたかれるというコミカルなシーンがある(なお、演者の影丸氏は後にGUTSの隊員を演じている)。
ピット星人がセブンに止めを刺すべく現れた際には、「セブンを残して俺が行けるか!」と言うフルハシに先に退避するよう命じられるが、「僕だって、隊長を残して行けません!」と言い1人で行こうとはしないなどすごくいいヤツだった。どうしてこうなった…。
トーゴー隊員
演:松山鷹志
副隊長格らしき隊員。
先輩であるアンヌと対面した際には敬意を払い、未来のウルトラ警備隊員を目指すダン少年に警備隊マークのバッジをプレゼントした。
ハイパーソーラーシステムの研究所に侵入したピット星人のスパイカメラを、リサ隊員とのウルトラガンのコンビネーションで撃ち落とし、物語終盤はクスハラ博士のそばについてハイパーソーラーの修理完了を待っていた。
リサ隊員
演:鈴木亜美(同姓同名の歌手とは別人)
紅一点の隊員。
研究所付近に現れたエレキングを防衛隊とともに迎撃するも歯が立たず、フルハシに泣き言のように「研究所を踏み潰されてしまいます!(ホーク1号では)もう間に合いません!」と連絡するが、復活したセブンが向かっていることを知らされる。
セブンとエレキングの戦いの最中、「ウルトラセブン!頑張って!」とTV第2話のアンヌをオマージュしたような声援を送るシーンがある。
クスハラ家
クスハラ博士
演:荻島真一
ハイパーソーラーシステムの開発者で、弟がアンヌと結婚し両家で太陽エネルギーを利用するソーラーハウスに同居している。
ピット星人からは「太陽おじさん」呼ばわりされており、自宅で催眠ガスにより眠らされ暗殺されかけるも、間一髪のところでウルトラ警備隊がダンを家に送って来たことにより難を逃れた。
ハイパーソーラーでエレキングの熱エネルギーを吸収できることを思いつき、「太陽エネルギー作戦」を実行してセブンの窮地を救った。
演:ひし美ゆり子
警備隊を退役後にクスハラ博士の弟と結婚し、息子をもうけダンと名付ける。夫は火星探査中の設定で登場せず。
セブンと久しぶりの再会を果たすがモロボシ・ダンを意識したような言動は見受けられず(演じたひし美氏の著書によれば、息子のダンもいるのであえてそのようにしたが後悔しているとのこと)、ピット星人に捕らわれた息子・ダンの救出をセブンに依頼し、無事にダンが戻ってきたことで「セブン!ありがとう!」と感謝の言葉を述べた。
演:青木海
アンヌの一人息子で小学4年生。
好奇心旺盛かつ賢い少年で、天体観測や森の探索が趣味。
ピット星人の人間態である少女を森の妖精ではないかと考える少々メルヘンチックな面や、従姉のトシコが入浴していることを知っていながらトーゴーに浴室に入るよう促すイタズラを働く子供らしさも見せる。
ピットの1体に気に入られて宇宙船に拉致されてしまうも、セブンを攻撃する光線兵器のレバーを動かしエネルギーに変換してセブンを復活させるファインプレーを見せる。エレキングが倒された後は人質として利用されるが、セブンに救出された。
トシコ
演:沢口遥
クスハラ博士の娘で、ダンの従姉でありアンヌにとっては姪。
クスハラとともにアンヌ親子と同じ家で暮らしており、入浴しているところを不用意に浴室の扉を開けたトーゴー隊員に見られてしまうハプニングが…。
その他
少女(ピット星人・人間態)
以前に地球侵略を企てた2体組と同様、今回も2体組が同じ人間の女性の姿に変身しているが、前回に比べると若干年齢が上めの妖しげな雰囲気の美女になった。
宇宙船に搭載した太陽エネルギー光線でセブンに重傷を負わせ、ハイパーソーラーシステムを破壊。さらにクスハラ博士の家のパソコンからTDFのデータベースに侵入してエレキングのデータを削除し、果ては博士を暗殺しようとするもこれは未遂に終わった。
エレキングを操り地球侵略を企てておきながら、エレキングの角を破壊した地球人を「本当に野蛮なんだから」と呆れたように評している。
1体は比較的温和な性格(もちろん危険な侵略者に変わりないが)で、ダンのことを気に入ったのかやたらと構っており、宇宙船に拉致するなどちょっとあぶない感じになっていた(関連書籍によれば、侵略する星の住人と接触しペットとして飼い慣らそうとしているらしい)。
もう1体は少々過激派らしく、ダンを「処分」するよう相方に命じたり、セブンが復活しダンに「バチが当たったんだ」と言われて低い声で「うるせえ」と怒り電撃でお仕置きしている。
第17支部格納庫の隊員
演:松岡稜士
フルハシとカジを傷ついたセブンのもとへ案内し、回収の経緯と現在の状態を説明した。
オオタキ主任
演:大滝明利
研究所の廊下で、ピット星人のスパイカメラからビームを浴びて吹き飛ばされた。殉職したかどうかは定かではない。
演者の大滝氏は、セブンがエレキングの尻尾電撃に苦しめられるシーンにてセブンのスーツアクターも担当している。
オペレーター
演:倉光伸枝
防衛軍のウルトラ警備隊本部で、ハイパーソーラーシステムを破壊した侵入者が映る防犯カメラの映像解析を行った。
地球環境保全委員会議の出席者
教授:竹内均(特別出演)
クロベ・ススム:黒部進(特別出演)
サイジョウ・ヤスヒコ:西條康彦(特別出演)
サクライ・ヒロコ:桜井浩子(特別出演)
サハラ・ケンジ長官:佐原健二(特別出演)
ニヘイ・マサナリ:二瓶正也(特別出演)
ヨシダ・テルミ:吉田照美(特別出演)
ツブラヤ・ノボル:円谷皐(特別出演)
ナレーター
森次晃嗣(セブンの掛け声を新録、話し声も担当)