概要
『涼宮ハルヒシリーズ』で有名なライトノベル作家、谷川流の著作。イラストレーターはG・むにょ。
電撃文庫から2005年に発売された。
『天使』『悪魔』『死神』『幽霊』に出会ったことで非日常の世界に叩き込まれた少年と、彼の友人である淡白で冷淡な少年の行動を発端とした、妖しく残虐な世界を描いた物語。
谷川流の手掛けた作品には珍しく、グロテスクな表現や官能的な描写を含む。
また、いわゆるセカイ系の作品に対するアンチテーゼ的展開が織り交ぜられ、あらゆる意味で悪意や皮肉、メタ表現などが頻出する混沌とした作品となっている。
「なんかもう絶望的です。絶望万歳」
谷川流の小説は基本的に、多くのライトノベルによく見られるような『明るく軽い展開や萌え要素をジャンルに含んだストーリー』を基準にして書かれている。
しかし本作はそのイメージに反し、ダークな世界観やマイナスイメージの強い一部登場人物の行動、タイトル通り『絶望』を強調した黒い雰囲気に脚色された内容となっている。
その内容から本の帯では『鬼才が送る実験作』、一部ネット上では『谷川流の暗黒面を描いた小説』と評された。
登場人物
杵築(キズキ)
主人公の一人。高校生。
中学一年生の少女『ミワ』と交際している少年。
夏休みに親友『建御』からの電話を受けたことで、彼を苛む非日常の世界に自らも巻き込まれていくことになる。
不自然なほど淡々とした性格で、一切の感情がこもっていないような言動を作中では繰り返しているが……。
「キミが僕に何を言えばいいのか教えてほしいものだね」
建御(タケミ)
突然自宅に『天使』『悪魔』『死神』『幽霊』が出現したことで日常を破壊されてしまい、杵築に助けを求める。
倦怠感と憂鬱さに満ちた雰囲気が目立つ少年で、その言動は涼宮ハルヒシリーズの主人公『キョン』を思わせる。
「お前らは偽物なんだ」
烏衣ミワ(ウイ・)
杵築の交際相手の少女。中学一年生。
杵築には常に敬語口調で喋る。「うふ?」が口癖。
常に微笑みの表情を保ち続けており、平坦な態度を崩さない。
杵築及び、姉である『カミナ』とは夜な夜な退廃的行為を行う関係。
「わたしよりも重要な事柄がそんなにあるの?」
烏衣カミナ(ウイ・)
杵築の遠い親戚にして幼馴染の少女。
妹のミワ以上に笑顔に凝り固まった表情と『この世のどんな人間よりも澄み切った瞳』を持つ。
妹と杵築の情事を静観したり、作中で発生したある事件に対し資料を提供するなどミステリアスな行動が多い。
『この世界』に対して底知れぬ絶望を抱えており、世界を救う為に自分なりの考えに基づいて活動しているらしいが……。
「これは、あなたの絶望」
天使
一見すると浴衣姿に身を包んだ外国人のようだが、普通の人間がイメージする天使の姿になることも出来る。
世界の真理や人間の構造について多くの知識を持っているが、飄々とした性格をしており胡散臭い言動が目立つ為、どこまで彼女の言葉を信用すべきかは不明。
「名前なんかどうでもいいではないですか」
悪魔
装飾用のベルトやバッジをあしらった、現代風の黒い洋服を着た少年。
寡黙で口数が少なく、本編ではほとんどの時間をテレビゲームに費やしている。
法律に縛られない価値観を除き、一般的な悪魔らしい言動は一切見せない。
ちなみに、彼が作中でプレイしているゲームは、キャラクターや技の名前から『電脳戦機バーチャロン』と思われる。
「必殺技の出し方を教えてくれ。中ボスが倒せない」
死神
『幽霊』を追いかけて建御の部屋に現れた少女。
古風な喋り方をする生真面目そうな人格をしているが、その実態は全裸の幼女であり、積極的に自らの裸身を晒して人間の異性を惑わそうとしている。
天使と共に不埒な内容の対談にも興じるが、誰も自分の容姿に性的反応は示さず不満に思っている。
「参上つかまつる」
幽霊
肉体を持たない半透明の少年。服装を含めて全身が青白い。ちなみに両足は存在する。
元々人間であった為か、建御の前に現れた非日常の存在の中で唯一人、常識的な思想・価値観を持っている。
自分が死ぬ直前の記憶を失っており、幽霊となった直後に死神に狙われ『何故死んだのかも分からない内に成仏するのは嫌だ』という理由から建御の家に飛び込んだ。
気弱で繊細な性格であり、よく膝を抱えて座っている。
作中では彼の死の真相が物語の謎の一つとなっている。
《もう一度やり直したい。できるものなら転生したいよ!》