CV:佐倉薫
概要
その正体は、5歳の女の子。
絵本や物語をこよなく愛する、少し内気な、ごく普通の少女である。
母親が作ってくれたぬいぐるみに「アンドリュー」と名付け、大切にしている。
ある日、ショッピングモールで『別れの戦記』の絵本を読んでいたときに偶然真矢と出会い、絵本をきっかけに会話を交わす中で「舞台」の世界を知り、自分が想像した物語を「えるノート」と名付けたノートに書き綴るようになる。
そんなある日、夢の中で、きらびやかな衣装を身にまとったお姉さんたちが、「自分がノートに書き綴った物語を舞台の上で演じる」という不思議な夢を見るようになる。
幼い少女は、ひとりでは舞台を見に行けない。かき立てられるように創作を続けたえるは、夢の中で、大きくなり、言葉をしゃべるアンドリューに出会う。
その夢の中で、「ひとりで舞台を見に行ける」大人の年齢まで成長した姿――それが本編に登場するえるの正体である。
第一章「スタァライトの消失」
物語を書き続けていたえるの夢の中に、自分では書いていない黒い怪物――「コロス」が現れるようになる。しかし、夢の中のお姉さんたちは、観たことのない怪物も格好良くやっつけてくれる。
「たくさんの舞台少女たちが一同に会する夢の舞台を、観たくありませんか……?」
そう何者かに語り掛けられたえるは、図書館で偶然見つけた『スタァライト』の絵本を元に、「世界から失われた『スタァライト』の物語を取り戻すため、怪物をなぎ倒しながら、頂上を目指す物語」を創作する。
これが、メインストーリー第一章の発端となった「『スタァライト』という物語の消失」の真相だった。つまり舞台少女たちはえるの筋書き通りに、「コロスを倒さなければ物語が失われる」という大きなストーリーを演じさせられていたにすぎなかったのである。
第二章「『削劇』と『Re LIVE』」
その物語を見たことで、「演者」という概念を知ったえるは、ますます「えるノート」に物語を書き綴っていくが、そこで「えるの物語に『キャスティング』されると、現実からその人や物語の存在が消失する」という現象が発生してしまう。
その発端として、「天堂真矢の演じる『別れの戦記』が見たい」とえるが願った結果、現実世界や人々の記憶から「天堂真矢」の存在が消失した。
しかし、かすかな違和感をもとにそのことに気付いたクロディーヌが、真矢がひとりで主役を演じる『別れの戦記』に飛び入りし、コロスを倒し「結末まで演じ切った」ことで、真矢の存在も、『別れの戦記』も現実世界に取り戻すことができた。
これが、メインストーリー第二章で起こった「削劇」、そして舞台を演じ切ることで物語が再生する「Re LIVE」の真相である。
このような危険な現象が発生することは、大人のえるも、アンドリューにとっても想定外のことだったようだが、夢の中からでは現実のえるに干渉することができない。そのため、華恋たちに「現実世界のえるを見つけ、えるノートを破り捨ててほしい」と頼むが、「えるの描く物語をもっともっと見たい」と望む舞台少女たちの声によって、それは却下された。
これ以降、あるるによって、大人の姿のえるは「えるる」と呼ばれるようになる。
第三章「『アルカナ・アルカディア』」
全国学生演劇フェスティバル、通称「劇フェス」を控えた各校の舞台少女たちは、キリンによって地下劇場へいざなわれ、「未知なる主役」への道をかけたオーディションの開催を宣言する。
その演目のタイトルは、『戯曲【A】(仮題)』。
「過去に存在したあらゆる物語への愛であふれ、未来永劫語り継がれる、永遠の物語」――主役はおろか、未だにこの世に存在すらしていないこの戯曲こそ、未来でえるが書き上げることになるはずの物語だった。
舞台少女たちとの出会いと交流、そしてフロンティア芸術学校の創り上げた『オズ~荒野の海賊団~』を目の当たりにして、『舞台少女』という存在に魅了されたえるは、舞台少女たちの生き様をテーマにした、今までにない超大作を描こうとしていた。
その壮大な物語は、幼い少女が書き上げるにはスケールが大きすぎる。かといって、戯曲を作るエネルギーが失われてしまえば、未来で完成するはずのこの物語は存在ごと失われてしまう――
舞台少女たちは、この戯曲を完成させるためのキラめきをえるに与えるために、レヴューでぶつかり合うことになる。
えるが書き上げる『戯曲【A】』と、劇フェスで上演される『アルカナ・アルカディア』は、同じ舞台少女たちを見て書かれる物語であるがゆえに内容が酷似しており、脚本担当の雨宮詩音とえるが出会ったときは、見ず知らずのふたりが同じ物語を描いていることに互いに驚愕していた。
「レヴュー・フロンティア」
そんな中、劇フェスで「たった一人の主役を奪い合うために仲間同士で傷つけあう」ことを拒絶した大月あるるは、美空、ララフィン、つかさ、静羽の4人と、「レヴュー・フロンティア」と称したレヴューでぶつかり合うことになる。
そのさなかに過去のトラウマを刺激されたことで、小さな子どもの姿になり、舞台の上から姿を消してしまう。
そんな彼女の前に現れたのは――
「煌く弾丸翼にこめて 可憐に咲かせる夢の華」
「現在が生み出す未来のSTAR つながる舞台で明日をLIVE!」
「フロンティア芸術学校 西野える めざせアルカディア! すすめフロンティア!」
フロンティア芸術学校の制服を身にまとった、未来の西野えるだった。
舞台を、舞台少女を教えてくれたあるるの心を救うために、ありえるかもしれない未来の可能性のひとつとして、「レヴュー・フロンティア」の舞台の上に登場。
「私はあなたのキラめきから生まれたあなたの娘」を名乗って、自分がかつて教えられたように、あるるに舞台のすばらしさを伝え、元通りの姿に戻すことに成功した。
なおこの時、「あなたが舞台に立たなくなったら未来の私が消えるかもしれないんだから、見捨てないでよね(要約)」と、あるるの最大級のトラウマを引き合いに出して脅しめいた発破をかけている。
その後、役目を終えて、「未来で待ってる」と言い残し、舞台の上から消えた。
エピローグ
「アルカナ・アルカディア」編のエピローグでは、本編から10年後、フロンティア芸術学校の舞台表現コースに入学した西野えるの視点で語られる。
10年前の「劇フェス」で演じられた舞台『アルカナ・アルカディア』を観劇した当時5歳のえるは、物語の主人公である『星』の役にあたるキャストやセリフが存在しなかった当時の舞台を見て、「この物語を完成させるのは私だ」と決意し、劇作家になるべく晴れてフロンティアに入学を果たした。
そして入学式前、空き教室にひとりたたずむ謎の女性と会話を交わし、戯曲を完成させるために、10年前の舞台へ飛び込むことを決意する。別れる直前、えるはその女性に、「自分が戯曲を書きあげたその時は、『未知なる主役』として、舞台に立ってほしい」と尋ねる。
「そんな未来って、ありますか? そんなお願いって、ありですか?」
余談
「アルカナ・アルカディア」では、0(愚者)~21(世界)までの大アルカナと、ヴィスコンティ・スフォルツァ版タロットカードに存在する「信仰」「慈善」「希望」の3枚を加えた計25人の登場人物が登場するが、演じる舞台少女は24人しかおらず、主人公にして物語の語り手である「『星』の少女」が存在しなかったが、ここに当てはまる最後の1人こそ、西野えるである。
「西野」という苗字は、『オズの魔法使い』の「西の悪い魔女」から取られていると思われる。