概要
「シンカリオン_チェンジ_ザ_ワールド」の登場人物。
作中では既に故人。
本編から10年以上も前に突如出現した正体不明の敵「アンノウン」対策のために超進化鉄道開発機構(ERDA)を創設し特務ロボ・シンカリオンを開発した天才エンジニア、そして創設聡明期の本部長。
偉そうに思われるのが苦手な人物で、地位に反して物腰の柔らかそうなメガネの男性である。
彼の開発した0系型のプロトタイプ「シンカリオン0」は、現在でもERDA地下に残されている。
シンカリオンを「本人の意思無く乗っても力を発揮できない」ように設計した」との事。
大成タイセイ達が在籍する「私立大宮進開学園」の初代学園長。学園の部活「鉄道部」にも関わりがあり、創設者でもある。彼自身もかなりの鉄道好きで、部室内にある看板などの鉄道グッズも元々は彼の私物ゆえ、彼の没後にグッズの数々は施設に寄付された。
本編開始から約10年前、タイセイの姉・大成イナが中学1年生の頃に、シンカリオン運転士候補として工部レイジを勧誘している。彼がスカウトされた際、突然のことに戸惑うレイジに対し運転士不足は深刻な問題だと勝手にERDA加入を言い出したAIのテンダーを厳しく叱責するが、その表情は険しかった。
その後正式に運転士になったレイジと強引に入ったイナを加えてERDAはますます力をつけていく。だがそんなある日、突如様子がおかしくなり(具体的には、ひどく疲れきったように弱弱しくなった様子で)、レイジに
「アンノウンは危険な相手だ… でも諦めちゃいけない…」
「戦い続けてくれ… 何があっても… 頼む…」
と意味深なことを言い残す。
その日の夜アンノウンが出現。しかもこの時リョータが誤ってキャプチャーウォールに取り残された日である。レイジが出撃し、無事撃退し、リョータもシリンダーで囲まれていたため無事だったが、突如カドミチの元に、「チクゴが、アンノウンによって破壊された建物の付近で、発見された」と報告が入り、倒壊に居合わせた住民を庇ったと見られ、意識不明の重体になる(先述の通り第3話でカドミチがもうこの世にはいないと口述しており、その後落命したと思われる)。
テンダー
ブリキロボットをデフォルメしたようなデザインをした鍋島チクゴが開発したAI。
ERDAの各種パソコン画面を自由に移動しており、表情に変化は見られないものの、彼とは相棒のような間柄。
ちなみにイナのERDA加入には当初は反対派。
ERDAのセキュリティーの開発したものテンダーだったようで、それを突破した彼女からも論理構成の見事さを認められている。
なお、(当然却下されたが)イナが弟のお目付け役となるAIを開発したいのでプログラム見せてほしいと欲しいと頼んでいたことからビーナのモデルとなった存在だと思われる。
チクゴが事故に巻き込まれた時にテンダーもスマートフォンに入って同行しており、事件の時にタブレットが半壊したためにそのまま消滅した……かと思われたが……
名前の由来は蒸気機関車のすぐ後ろにある炭水車の英語名、テンダー(tender)である。
謎
彼の死はERDAの過去に取って大きなターニングポイントには違いないが、あまりにも不可解な点が多い。
- 彼が命を落とした日の様子
レイジが死亡直前に遭遇した鍋島チクゴ、その様子は驚くほどに憔悴していた。
アンノウンは危険な相手と呟いていたが、そもそも正体が分からないためほぼ手探りな状態なのが現状。
まるで「他者に話す事すら恐ろしいアンノウンに関するおぞましい秘密」を知ったかのようである。
- 死亡時の現場
そもそもアンノウンは出現が予測できない神出鬼没の敵で、ERDAは後手に回るのが常(人的被害が少ないのはキャプチャーウォールという異空間にとらえてからシンカリオンで討伐してるから)。
ゆえに鍋島チクゴが狙って現場に居合わせようとするならあらかじめあの場所でナニカが起こると知ってなければ有り得ない話である。
- テンダーの行方
彼(?)が消える時、現場に残されたタブレットにテンダーの姿が映り、プッツリと画面が消えてしまった。まるで現場から立ち去るように…
AIのテンダーがその後職務復帰したといった形跡は一切ない。データ破損等々で運用等々無理なら劇中で説明ありそうなものなのだが、そういった場面は一切無い。
話が変わるが敵サイドのシンカリオン、ハーデスシンカリオンの音声も三木眞一郎氏が担当しているので、一人二役に加えて機械ボイスまで兼任していることになる。
一応、これらは強引に解釈しようとすれば
『“たまたま”現場にいた鍋島チクゴが所持していたタブレット内にいた為、共に物語から退場した』
『一人二役をしていた三木眞一郎氏が“たまたま”敵サイドのロボットの音声も兼任した』
と解釈できる。
しかし、本当に“たまたま”なのだろうか…?
余談
名前の由来は鍋島駅、及びかつて国鉄佐賀線を走っていた急行「ちくご」から。
享年は49歳だが、この事実が明かされたのは27話と28話の間に放送された特別編『リサーチ ザ ワールド』である。これはタイセイ役の石橋陽彩と共にアニメ制作の裏側を見学するという特別編なのだが、ここで駒屋健一郎監督が見せてくれた27話のシナリオ(声優の台本になる前の初期の物)に記載された登場人物一覧の中に「鍋島チクゴ四十九歳」との記述があったという異例な判明経緯であった。
関連タグ
以下はシンカリオン チェンジ ザ ワールドの重要なネタバレが記されています。苦手な人はブラウザバックを推奨します。
真相
- 復讐の共犯者
ハーデスシンカリオンデストロイフォームをも退けたグレートドクターイエロー。これにはハーデスのAIも対策を必要として、自機のアップデートと併用して運転士の戦意を削ぐ作戦に出る。AIはERDA大宮本部のサーバーを乗っ取りメタバース内の訓練場に居たタイセイ、アカネ、リョータ、モリトの四人を閉じ込めしまう。そこで彼らが見たもの、それは工部レイジがアンノウンを率いるERDAの敵へと変わったきっかけとなったメタバース事故の続きである。レイジは7年もの間、メタバース空間に閉じ込められてしまい発狂、ついにはデータ世界ごと消去させられそうになってしまった。だがそんな彼に救いの手を差し伸べた存在が…それはテンダー!かつてのERDA創設者の秘書AIである。
一方、本部のサーバー奪還のため全力を尽くすイナたち。彼女が見たプログラムの手グセ、それは戦友でありプログラムでの好敵手でもあったAIテンダーのもの。
最終的にはサーバー奪還により四人は救出されたのだが、このメタバース世界とリアル両方での情報からもはや間違いない。ハーデスシンカリオンに搭載されたAIの正体にしてERDAへの復讐者レイジの最大の協力者、その正体はERDA創設者鍋島チクゴの秘書AIテンダーである。
さらに後々恐ろしい事実まで判明する。
ERDAが戦ってきた相手アンノウン。彼らの正体はテンダーが与えたプログラムで実体化した廃棄データたちであった。『what do you want to do?』と問いかけるプログラムを与え自我を持たせ、それを実体化させたのがアンノウンである。
しかしそうなるとテンダーは自身の生みの親が設立した組織やそれが関わる鉄道沿線をなぜ攻撃してるのか…?
- 鍋島チクゴの『願い』
タイセイとモリトが駆るユナイトシンカリオンとの死闘の末、乗機を放棄してレイジと共に逃走したテンダー。
しかし激闘続きだった事に加え元々活動限界が近かったテンダー。そんなテンダーに問う、最期に自身は何をしたかったのかを語りだす。
25年前、鍋島チクゴは秘書AIテンダーを作り出した。仕事も順調で彼らの関係もビジネスパートナー兼友人として関係も良好。それから数年後、テンダーは問う、『チクゴ、あなたの願いはなんですか?』。秘書AIとして仕事だけでなくパーソナルな願いをも叶えたくテンダーは質問。だが仕事が全てでパーソナルな願いは今の所無かったチクゴだったが、昔話をするつもりで自身が大事にしていた幼少期のノートを取り出した。そこには子供の頃に夢見た0系新幹線とそれが変形したロボットの落書きがあった。彼は新幹線が変形した正義のロボットとそれで戦う運転士たち、そしてその組織のトップになりたかった子供の頃の夢を語りだす(運転士ではないのは運転指令所で働く人たちの特集番組に感銘を受けたのが鉄道好きになったきっかけだったから)。
だがテンダーが願いを聞いた後、アンノウンが出現し始めた。
なんとテンダーが廃棄されていたデータをアンノウンに変えていた…
そう、全てはテンダーが鍋島の願いを叶えるためにやった事だったのだ…
ある種の善意の暴走であり、テンダーはチクゴの願いを純粋に聞き入れた上での今回の行動であり、上記のアンノウンの誕生に加え、人類の対抗策としてシンカリオンの開発への意欲促進やERDA設立まで全てテンダーが仕組んだことだった。真相を知った彼はテンダーを止めようとするが、止められなかった…友達だから…
そしてレイジに「アンノウンは…危険な相手だ…」と言い残し、テンダーがアンノウンを出現させると予告した敦賀へと向かう。
「テンダー……こんなのは、僕の願いじゃ無いよ
……もう僕の願いなんて叶えなくていい、好きに生きるんだ」
彼が亡くなる前、巻き込まれた幼い少女を逃がし、真相をERDAの皆に話さず、そのまま建物の崩壊によって…
彼が亡くなって目的を失ったテンダーはデータをメタバースに移して彷徨っていた。アンノウン襲撃がなくなりERDAは規模を縮小。組織を存続させるべく悩んでいた時に意識をメタバース空間に閉じ込められたレイジを発見。その後も世間に対してERDA存続を促し続けるため今まで通りアンノウンを使い、襲撃していたのだった…
そしてカオスシンカリオンとユナイトシンカリオンの決戦直後、レイジと共にメタバースに避難させた。
何度も攻撃された為、基礎プログラムにダメージを受けてしまい、レイジと最期の時間を交わし、そこで真実を伝えた。
そしてレイジに現実世界に戻るように言い、「レイジ、これからは好きに生きてください」と伝え、レイジを元の肉体に戻すと消滅していった。
全てをやり遂げて消滅したテンダー。そしてその間際に見たものはバグか、あるいは生き抜いた末に魂を得て天国に辿り着いたのか…
「ああ… チクゴ!」
- 真相に関する余談
敵サイドのシンカリオン、ハーデスシンカリオンの音声も三木眞一郎氏が担当しているので一人二役に加えて機械ボイスまで兼任していたのだが、おそらく『内蔵AIがERDA創設者の秘書AI』という展開を見据えての兼ね役だったと思われる。
ちなみにテンダーが現代の本編で姿を現したのは31話なのだが、一つ前の30話EDのクレジットでのハーデスシンカリオンのAI役に「テンダー」と記載されていたのでこの時点で視聴者には物語の裏でテンダーが動いていたのはバレバレである(各アニメサイトの31話あらすじもテンダー表記だったことを考えると公式もこの頃からもう隠す気はなかったのだろう)。
主人公組織の後ろ盾組織トップということで鍋島チクゴも本作の黒幕候補に挙げられていたのだが、いざ過去回であまりにも不可解な死に方をした事で『テンダーが真の黒幕説』『レイジがメタバース世界に閉じ込められた事故はテンダーのマッチポンプ説』とテンダーは凄まじいほどに視聴者から疑われる事になった。
当初はテンダーがレイジの事故の犯人で彼のERDAに対する怒りや絶望を掻き立てる為に引き起こしたと思われていたが、特に言及は無かった事からテンダーはレイジを本当にやっと見つけたのだろう。
何より亡きチクゴの願いを具現化させ、決して正しいとは言えないやり方だったとはいえERDAの存在を守りたかったのは本心だったのだろう。
そして、レイジはただのシステム事故に巻き込まれたのか?それとも……
尚、テンダーがどうやってアンノウンを廃棄データなどから出現・実体化させられるのか、いつそんな方法を会得したのかなどは、未だに不明であるが…真相やいかに?
ネタバレに関する関連タグ
全ての元凶…彼はこんなことになることを望んでいなかった…
マッチポンプ…このような事実が判明したら、おそらくはシンカリオンを見る目も変わってしまったのかもしれない。だからこそ、ERDAは……。
報連相…もしチクゴが「報連相」をしていたら避けられたのかもしれない悲劇だと言えるだろう。