概要
蒸気機関を搭載した車両に石炭と水を供給すべく連結される車両で、テンダー(Tender)ともいう。
テンダー型蒸気機関車に連結されているイメージが一般的だが、操重車(鉄道用のクレーン車両)やロータリー除雪車も動力近代化前は蒸気機関を使用していたため炭水車を連結していた。
石炭ではなくバガス(サトウキビの搾りかす)焚き蒸機や重油専燃蒸機の物も、炭水車と総称される。
前者は石炭よりカロリーが低いので航続距離に比してバガス積載スペースが大きめに取られており、後者だともちろんの事ながら、炭庫ではなく重油タンクと水タンクを載せている。
なお前者はサトウキビが豊富に入手できる現場である製糖工場内での特殊仕様機であり、後者も燃料効率改善策として研究が進められたものの、最終的には同じく油を燃料とするDLにより機関車ごと置き換えられる形となった。
pixiv内では一般的なイメージ同様蒸気機関車の炭水車に関連したイラストが投稿されている。
付随装置
炭水車も他の車両に付随しているとはいえ、鉄道車両として本線上を走行するため基礎ブレーキ装置や前照灯、尾灯、連結器を装備しており、ATS車上子など保安装置の車上装置を装備していることもある。
蒸気機関への供給設備として炭庫(石炭を積む場所)と水槽(水タンク)は当然のことながら、勾配区間など出力を多く食う区間で運用される機関車に用いられるものは重油タンク(重油を供給して熱量を稼ぐ)を併置していたり、復水式蒸機(シリンダーを駆動した後の蒸気を捨てずに水に戻して再利用する)用の物では復水器を搭載したり(ただし蒸気を水に戻すための冷却用ブロワーの動作にも蒸気を要するので、かなり燃費が悪くなる欠点があった)と、補器も装備している車両もある。
またC56の炭水車はバック運転の多い簡易線区に入線する事を予め考慮してあり、後方視界を確保する為に両側を大きく切り欠いた設計になっていた。
火格子面積の広い大型蒸気機関車用のものだと自動給炭機を備えていて、機関車と直結した自動給炭機のスクリューシャフトを組み込んでおり、これで石炭を動力で投入するようになっているものもあった。
他にも外国では、貨物運用時の車掌乗務の為に車掌室を設けているものもあった。
超特急「燕」牽引時のC51は当初は長距離の高速運転で水が足りなくなるので追加の水槽として水タンク車(のちの水運車ミキ20)をも併結された。また走行中の乗務員交代用に水運車は車体側面、炭水車は炭庫中央にそれぞれ簡易通路が設置されていた。
ちなみに、重両列車において加速力や引き出し能力を強化する目的で、「ブースター」もしくは「パワードテンダー」といって走行用動力付きのものも試作・試験されたが、台車内の狭いスペースに小型とはいえ蒸気エンジンを押し込んでおり、手入れが面倒な上に信頼性も低いことや、速力が出てからは死重になることもあり主に北米で少数使用されたのみに終わった。
この「ブースター」は炭水車より、機関車自身の従輪に取り付けられる事のほうが多かった。効果の割りに保守に手間が掛かり、信頼性に難点があった。
日本でも満鉄向けに戦時中に試作されたものの、戦争には間に合わなかった。
あれ?台枠は?
一部の炭水車では、戦時設計で資材や工数を節約すべく、「船底型テンダー」と呼ばれる台枠の無い構造が採用された。
強度不足で文字通り「勝つまで数年持てばいい」のかと思えばさにあらず、通常は台枠に載っている水タンクなど自体が強度を負担する構造で、整備体制が整っていればちゃんと無煙化まで使用できた。
戦中戦後に製造された蒸気機関車の保存機には、このタイプの炭水車が付いている物もあるので、興味のある方は見てみよう。
型番
いちおう炭水車にも固有の型番があるのだが、一般にペアを組む車両の銘板が取り付けられるため炭水車に記された刻印や炭水車の製造・配属などの履歴を調べないとそう簡単に判らない。