概要
『黒に染めろ』とは、Dr.Poro氏による「スプラトゥーン」を題材にした二次創作の漫画シリーズである。
ナワバリバトルが実際にスポーツとして発展、確立されたインクリング達の世界を描いており、本編を未プレイの人でも楽しめる作品となっている。
ここでは同氏による続編『黒に染めろネクスト』についても記載する。
特徴
作中世界はsplatoon本編とは設定が幾分か異なっており、インクリング及びオクタリアンの生態や、彼らが辿ってきた歴史・文化にも相違点が散見される。
特に違うのはゲームのインクでは使われない色である黒が「不吉」として明確に法で禁じられている事。
黒いインクは安価でお金のない若いプレイヤーにとって禁じられた事は痛手であり、使われなくなって更に安価になった黒を純色のインクに混ぜ入れて嵩増しして使うことが流行った結果、その黒さの度合いで各町の貧富の差が浮き彫りになることと成り、やがてスラムへの差別を産んだ。この差別が第一部の話の中心となる。
第二部であるネクストでは第一部の設定を元に世界観を広げる形で物語が進行し、やがて第一部も含めた壮大な『神のシナリオ』が明らかになっていく。
登場人物
主人公
グロー・B・クロウ
ナワバリバトルで使用されるインクが最も黒に近い=最も貧しい貧民街であるブラック・バスに生まれた若き天才インクリング。ブキはわかばシューター。バトルの腕には相応の自信を持つが、スラム生まれの為、自分に対しては若干卑屈な面があるため前述のバトルの腕を一対七、スペシャルなし、更に壊れてサブのボムが出せない状態で無傷で全員をキルした直後に「運が良かっただけ」と称したり運命や神様といった存在や、それに沿う事を好んでいる。
ナワバリバトルの後は神様へのキス(人差し指の中程にキスして天を指差す行為)をするルーティンがある。
またスラムの生まれゆえに、先述の「運が良かった」発言の際に「運だけで1on7を無傷で勝利できる訳ないだろ!」と怒鳴られ「"偶然"そんな実力が身につく訳ない!お前ならプロにだって…」と言いかけた友達に「俺達は"偶然"スラムに産まれたんだ」(スラムのインクリングは公式戦に出られない)と切って捨てる程プロの世界を諦めている。
しかし、ある日生涯のライバルとなる『レッド・G・ウルブス』と出会い、彼女とのバトルによってプロへの意欲を持つ。その後、行きつけのブキ屋の息子でプロチーム『O・オコゼ』のオーナーであるトニー・D・ヴァルガスに誘われ、プロの世界に入るも、スラム出身である事がバレた結果、激しい差別に晒される。(なお、トニーは当然知ってのことだったため平然と認めた上で「チームを勝たせられるなら虫ケラでもスタメン」と言い切っている)
スラムとバレてからの初の公式試合当日、前半は罵声やチームメイトの無視などによるあまりのアウェー感で全く集中出来ず素人同然の拙い動きだったが、異様な雰囲気を察したレッドがチームメイトから「スラムが紛れ込んだらしい」と聞いた事でスラムの激戦を思い出したレッドがデス直後という極めて居場所を特定しやすい状況を利用した結果、遂に対面し、スラムルール(7歩幅分距離をとり、コインを弾いて地面に落ちたらスタート)で開始した1on1の熾烈な72秒で史上初となるレッド・G・ウルブスのキルに成功。72秒で差別を一掃し、歴史を塗り替えた。
その後暫くプロでレッドと人気を二分する選手(二つ名は"白熱する烏")として活躍するも、五年後、故郷に蔓延していた麻薬の副流煙によって体調が悪化し、余命宣告を受ける。
その後無理を圧して特別番組を組んでもらい、番組に出演(この時すでに映像越しでも分かるほどの「ヤバすぎる顔色」だった)、公共の電波に乗せて「スラムへの差別は撤廃してくれたが、まだ撤廃したい差別がもう一つある、黒への偏見だ」「黒は故郷の色で、俺の色で、追悼の色だ」「だから俺が死んだら世界を黒に染めろ」と言い残し、直後に病死。享年28歳
プロとして活躍した期間が五年と短いため塗り替えた記録はひとつもないが、それでも彼の銅像が建てられ、そのポーズには彼のトレードマークである「ナワバリバトルの神様へのキス」が選ばれた
ネクストではもう一人のグローのみに見える亡霊として存在し、7年に渡って彼と戦っていた。
グロー・L・セツナ
グローの命日である『法律の休日』に生まれた為、グローの生まれ変わりと称され彼の名前を名付けられた少年。ブキはグローと同じくわかばシューターでこれは「グローを超えるわかば使いになる」という決意の為。
作中「グロー」と言う名前が出た場合は「グロー・B・クロウ」を指し、「セツナ」と呼ばれた時は「グロー・L・セツナ」を指す
単純かつ負けず嫌いな馬鹿。数日前の自分の発言を素で忘れ、おはじき無しでは十の位も数えられない。得意科目は給食と豪語する。
運動神経はグローが認める程だが、その単純かつ猪突猛進な性格が災いし考えなしに突っ込むのが基本で、学校のナワバリバトルでは50連敗を喫していた。
16歳の誕生日、レッドと戦う際にグローに身体を貸し、その感覚を覚えた事、そしてグローの頼みでチームの監督を引き受けたレッドの指導によって才能が開花。生前のグローを思わせる程の実力を身につける。
その他登場人物
レッド・G・ウルブス
プロチーム『T・オトシゴ』に所属するインクリングの女性。別名:赤い狼
プロ入りしてから一度もキルされた事が無い程の圧倒的な実力から本気で戦う機会が無く、閉塞感を抱えていたが、偶々立ち寄ったスラムで出会ったグローとの運命的な出会いと全力のバトルによって鬱屈としたものを吹き飛ばし、一時はグローと戦う為だけにプロを辞めてアマチュアに転向するといい出した。
その後、プロの舞台でスラム出身として罵声を浴びるグローと再会するなり、邪魔しようとした敵プレイヤーを見もせずにキル(直後敵であるグローも、敵の前で延々と話すレッドを不審に思い遠方から声を掛けていた敵プレイヤーの近くの高台めがけてボムを背面投擲、起爆寸前で落下した事で着弾後即起爆(ゲームでも同じ仕様、見ていたO・オコゼオーナーが独白している通り慎重に狙っても出来る技能ではない)という超絶技巧でキルする意趣返しを行なっている)、観客たちの罵声を無視して初邂逅の時と同じくスラム方式で1on1を開始。72秒の死闘の果てに敗北し、後日挑戦者としてグローと挑み、以後勝ったり負けたりを繰り返す
ネクストでは選手を引退して監督となっており、偶然ラーメン屋で相席になったグロー・L・セツナを煙に巻いたが、グローの誘導で追いかけてきた彼の『グローを超えたわかば使いになりたい』という台詞から彼の実力を確かめると称して戦い、あっさりと勝利するが、身体を借りたグローの動きと言葉に動揺し、敗北。グローの言葉に涙する。
その後、グローからの頼みもあって彼のチームの監督を務め、鬼教官ぶりを遺憾なく発揮し彼らを鍛え上げる。
ゼロ・クラウン
ネクストの終盤に登場するオクタリアンの女性。グロー以上のスピードを持ち、レッド・G・ウルブスをキルした史上三人目(一人目は勿論グロー、二人目はグローのチームメイト兼後に和解したとはいえグローがスラムであるとリークした人物。グローが亡くなった後長年の研究の果てに全員がかりでキルすることに成功している)であり、また彼女を凌駕する逸材。
関連用語
72秒の奇跡
グローとレッドの公式戦初1on1の決着にかかった秒数に因んで名付けられた伝説の名場面(通常1on1が10秒以上続く方が稀である)
この72秒間、グローとレッド以外の全プレイヤーはそのあまりの次元に、誰一人ナワバリを塗ることも動くこともできず静観、直前までグローに対してスラムと罵声をかけ、物を投げつけていた観衆も、実況すらも言葉を失い、ただ二人の戦闘音だけが響き続けていた。
何度も再放送されるほどの人気があり、この試合のこの場面だけを繰り返し見続ける程の熱狂的ファンがいるほどで、この場面と、この試合で披露された後述する"泳ぐ幻"を以て、グローはスラムへの差別を払拭
なおこの奇跡の後、「次の「o・オコゼ」VS「T・オトシゴ」線のチケットが完売するのに1秒かからなかった」、「その試合のチケットをダフ屋が250倍の値段で売り払った」「会場の熱狂を感じたいがためだけに会場外にチケット無しで数万人集まる」という伝説も作っている。
"泳ぐ幻(インクフィッシュ)
グローオリジナルの技、インクに潜ってから、その場から動かず身体の動きのみで完璧な潜影を大量に放つ、側から見ると大量のプレイヤーが泳いできている様にしか見えないが、中身は完全に空っぽ。
レッドを以てしても「この中に紛れて来られたら対応できない」と判断する程の精度で、やむを得ず今まで一度も使わなかったスペシャルウェポン(スーパーセンサー)を使わざるを得なかった。
初披露された後、幾人ものプレイヤーが再現を試みたが、誰一人真似することはできず、そうこうしている間にグローが病死してしまったため、完全に断絶してしまった。
これを教訓に「泳ぐ幻は見失う前に捉えよ」という諺ができる程(「知識や技術は時と共に失われてしまうものだから、完全に失われる前に受け継ぎなさい」という意味)。
法律の休日
グローが遺言にて「世界を黒に染めろ」と言い残した事で、彼が亡くなったその日のうちにハイカラシティ各地のインクリングが法律で禁止されている黒いインクを持って集結、「黒に染めろ」と叫びながら町中を無差別に黒く染め上げた事件を指す。
これ以後、競技でこそ使われないものの、黒を過剰に忌避する風潮が無くなった。
28ジンクス
所謂27クラブと同義語、ナワバリバトルの天才は28歳で死ぬというジンクスを指す。
該当例は上記の通り「白熱する烏 グロー・B・クロウ」の他に片手でリッター3Kを振り回したうえで無視認で狙撃キル、更に空いた片手でクイックボムを使いそちらでもキルを取るという独自戦法ワンハンドドラッグショット(泳ぐ幻と同様彼以外使用できない"見失われた幻")を得意とした「リッター3Kの神様 チャールズ・M・カフェオレ」が該当し、他にもジンクスとして成立する程度には何人か該当者がいる模様。
謎のモニュメント
貧民街ブラック・バスに存在する謎のモニュメントにしてグローとレッドが出会った運命の場所、天を仰ぎ見る魚の様な見た目をしているが、誰が、何のために、いつ作成したのか完全に不明
素材が地球上のものではない事だけはわかっており、大昔に落ちた隕石という説が有力だが、それ以外は誰かが念入りに消したとしか思えない程一切の情報がない。
スラム三強
第二部のスラムナワバリバトルにて特に有名な三人。
「シリアルキラー ジュビア(楽しそうにキルするため、チャールズのフォロワーであり、リッター3Kユーザー)」「ラッキーマン ラグロ(成績は凡、塗りも並なのに彼が所属しているチーム何故かがほぼ毎回勝つため)」「オールラウンダー ロッケンベルグ(いつもロッケンベルグブランドの服を着ているため)」を指す。
ヴィンセント
スラム三強が一人、「ラッキーマン ラグロ」ことラグロ・A・レオンが、ラッキーの真の姿であるアイデア(味方にわざと負けさせることで敵に前線を上げさせ、敵陣を裏どりしたうえで残り1分になるまでなにもせず、一気に塗り返して勝つという戦法)を見破られていたことで出した奥の手。
その正体は自作したフデ系ブキのような何か。名前の元ネタは実在した画家『ゴッホ』。筆先は細長く、持ち手が日本刀の柄になっており、傍目から見れば剣に近い。
肝心の性能だが、ダイナモローラーが可愛く見えるほどの多量のインクをチャージャー並の射程で放ち、遠距離でも当たれば即死という、フデ系ブキからは全く考えられないチートスペックを誇る。
しかもフデ特有の範囲攻撃の強みはそのままなので、一対多に持ち込まれても横なぎ払いでチャージャーの火力を叩きつけて軽々と返り討ちにできてしまう。
更にそのままフデでの塗りも高速で行え、カバーできると弱点がない
……ように見えるがそれはラグロが勢いに乗せてブラフで誤魔化しているだけであり、実際は多量のインクを使うからこそのゴリ押し火力であるためあっという間にインクが尽きてしまい、継戦能力が低い。
また、それ以外に飛ばし方がチャージャーの様な発射ではないばら撒き型であるため仕様上、重力の影響をもろに受けて下から上への攻撃時、射程が短くなり攻撃が届かなくなるというラグロ本人も知らなかった致命的な弱点があり、作中ではレッドにこれを見抜かれて高台のチャージャーに封殺されてしまった。(制作者さえ気づいていなかった欠点をたった1R=3分で見抜いた点でレッドの化け物さ加減が高まった)
どう考えてもレギュレーション違反間違いなしな性能だが、その点に異議を申し立てている者が居ない事からキチンと事前に申請していたらしく、その上ならルール上問題ない模様。
特に勝手に既製品を弄った著作権侵害の代物ではなく完全オリジナルという点も許可された一因になっていると思われる(素人が完全オリジナル品を作ったところで普通は市販品の劣化か焼き増しになるのは容易に想像がつく)
その活躍やインパクト、製品性の高い秀逸な性能や見た目などから、試合後に見ていたトニーに促され「初月利益の半分」を手数料としてその場で商品ライセンスを取得、選手ではなく技術者として就職する事となる。
なお、当初はテストとして「1時間もすれば手が早い企業が勝手にライセンス登録しているはず」と急かした上で「販売利益の半分を永続的に支払う」という奴隷契約同然の圧倒的に不利な条件で契約させようとしていたが、「1時間あるなら家帰って飯食ってからでも間に合う」と圧を跳ね除け、察してトニーを止めに来ていたレッドに概算を出してもらい「この条件は場合によっては年1000万単位の借金をするようなもの」「手数料が高過ぎる上に継続的な利益から割合の利益を払い続ける事自体ナンセンス」と看破し反論した事で「初月のみ」での契約になったが、見抜かなければ本当に奴隷契約して一生搾取する気だった模様。
ちなみに、このブキが掲載された6年後の2023年に、名前の由来が全く同じフィンセントなるフデが実装されており、また、ブキの使い方やインクの軌道がワイパーに似ていたためヴィンセントが登場した回に預言者タグがつけられることになった。なお、ゴッホのフルネームとしてはフィンセントが正式である。
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ジャッキー・ロビンソン:グローと同じく差別と闘い、そして勝った野球選手