概要
アメリカ軍は第一次世界大戦、第二次世界大戦を通じて.30-06スプリングフィールド弾を採用していたが、フルオートで撃つと反動が強く制御が困難という問題が有った。
そこで.30-06スプリングフィールド弾を短縮した弾薬(7.62×51mm M80弾)を開発し、北大西洋条約機構(NATO)標準の小銃弾として採用させた。
しかし薬莢の容積は減ったが新開発の発射薬により威力も反動も.30-06スプリングフィールド弾とそれほど変わらなかった。
威力至上主義の一部の軍人を納得させる為とも言われる。
性能の近い.303ブリティッシュ弾の反動が強く、フルオート射撃に向かないのを知っていたイギリス軍はこの弾の採用に猛反対したが、結局アメリカ軍により強引に押し切られた。
その後のベトナム戦争でイギリス軍の主張が正しかった事が証明された。
確かに7.62mmNATO弾は高威力で飛距離も長かったのだが、遮蔽物の多いジャングルにおける戦いではその優位性が発揮されず、反動が大きくフルオート射撃では制御が効かなかった事から、AK-47の短小弾に翻弄される事に成った。
弾のサイズ自体が大きい事から重量が嵩む為、個人ではあまり多く持ち運べないというデメリットも有り、この点は至近距離でのフルオート射撃戦において深刻な問題と成った。
結局7.62mmNATO弾を採用したM14はベトナム戦争では活躍出来ず、短小弾である5.56mmNATO弾を採用したM16に主役の座を譲った。
この様に自動小銃のフルオート射撃で使うには難のある7.62mmNATO弾だが、単発で射撃するなら殺傷能力・飛距離・破壊力のバランスが取れた弾丸である為、なんだかんだで各国の軍事組織に採用されている。
現在もマークスマンライフルや狙撃銃、分隊支援火器等と呼ばれる銃に多く用いられている。
コントロールを容易にする為に火薬の量を減らした減装薬弾を用意している銃もある。
余談
- M14 - 7.62mmNATO弾を使用する代表的な小銃。
- FAL - .280ブリテイッシュ弾を採用する予定だったが、アメリカのごり押しで設計変更を余儀無くされた。
- セトメモデロ58 - 減装薬弾の7.62×51mmCETME弾を使用している。
- H&K_G3 - 試作時に7.92×33mm弾を使用する試作品も有ったが後に設計変更。
- 64式小銃 - M80普通弾を使用しているが日本人の体格では反動が強過ぎた為、通常は減装薬弾を使用している。規整子を調整すれば7.62mmNATO弾も使用可能。
- AK47 - 口径が同じなので、7.62mmNATO弾を使っているとよく間違われる銃。7.62×39mm弾を使用するので、全く関係ない。
- ロシアでも7.62mmNATO弾仕様の銃としてSVD派生型の「ティーグル」等が製造された。