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概要
Adobe Flashは、Adobeが開発していた動画やゲームなどを扱うための規格及びそれを制作する同社のソフトウェア群の名称。
もともとFutureSplash社の「FutureSplash Animater」というソフトだったが、同社を買収したMacromediaによって「Macromedia Flash」と改名された。
後にMacromedia社もAdobe Systems社に買収され、終了時点では「Adobe Flash」となっていた。
2011年11月9日、同社はAndroidとBlackBerry Playbook向けFlash Playerの開発を打ち切り、今後いかなるモバイルデバイス向けにも開発する予定は無いという意向を発表した(iOSは元から提供なし)。
2017年には2020年末に提供終了のアナウンスがAdobeより告知され、長きに渡る役目に幕を閉じた。モバイルデバイス向けではAdobeAIRのみの提供となっている。
2020年12月31日のサポート終了後はネット文化に大きく影響を残した重要文化財である作品群が忘却されていく可能性があり、映像系ならば動画として残せるが、ギミック系やゲーム系は終了後は二度と動かせなくなる為、2020年12月現在ではFlash再生の互換アプリケーションの開発を有志が行っている最中である。
競合としては、MicrosoftSilverlightがあったが、こちらもHTML Living Standardに取って代わられた。
サポート終了後の対応
2021年1月12日以降はFlash Player自身がFlash実行をブロックするのだが、Adobeの更新プログラムは提供されなくなる。このままではセキュリティーホールになり、ウイルスの入り口となってしまうので手動でのアンインストールが推奨されている。
一応各ブラウザごとの対応は以下の通り。
IEと旧MSEdge | 2021年以降、WindowsUpdate経由で強制アンインストール |
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GoogleChrome・新Edge・Opera等 | 2021年1月以降に提供されるchrome88が適用され次第、強制アンインストール |
Firefox・Safari | アンインストール作業が必要 |
現在はアニメ制作ツールの代用ツールとしてAdobeAnimateをリリースしており、同等の機能と追加機能で制作可能になった。
作品の歴史
ここで語るのはこれらのソフトウェアを用いた作品等についてである。
黎明期
Flashが認知されてきたのはだいたい1999年ぐらいとされている。
フォークアーティスト「ゆず」が公式ページでFlashを用いたギミックを使用し、それが大きな反響を得たことが切っ掛けで、多くのユーザーが導入していった。
さらに「hatten är din」が日本上陸し、おもしろ動画ブームが到来。個人製作のFlashが徐々に増加していき、FLASH倉庫というお気に入りFlash作品をリンクで集め、紹介していくサイトが派生してきたのもこの時代からである。
2002年には2ちゃんねるに「FLASH・動画板」が設立、製作者たちをフラッシュ職人と呼ぶようになり、ここを中心にFlashは一気に隆盛し、同年、紅白FLASH合戦が開催され、そこから様々な作品、そして個性的な作品を作るクリエイターが世に出てきた。
発展期→絶頂期
FlashはMPEG等と違い、容量が軽いものが多かったため、気軽に見れるという利点があった。
それは同時に気軽に製作できるという事でもあり、アニメやPV・ゲームなど多くのFlashが製作された。それに伴い様々なイベントが続々と開催され、更にはFLASH★BOMB等、オフラインで規模の大きい上映会が行われ、その模様が雑誌で特集されたこともあった。
後に「Flash黄金時代」と呼ばれるほどに輝いていた時代である。
学生の頃に学校のPC室でFlashを見ていた人も少なくはないだろう。
転換期→衰退期
しかし、Macromedia社がAdobe Systemsに買収されたことから徐々に勢いを失い始め、2005年夏におこった「のまネコ騒動」がFlash界隈に対し暗い影を落とし、勢いは完全に失速。クリエイターも商業デビュー等様々な事情でその数を減らしていった。この頃になると新作Flashは時事ネタや政治宣伝のようなほとんど文字で構成される動画ばかりが作られ、力作は減っていった。
そして極めつけはYouTubeとニコニコ動画などの動画サイトの登場であった。
2002~2003年当時とはPC状況も変わり、回線・スペックの上昇からMPEGと言った容量の多い動画も気軽に見れるようになり、そして誰でも気軽に動画投稿・閲覧が可能な動画サイトの誕生、動画編集ソフト(特に無料で何でもできるAviutl)の普及によって、Flashアニメはシェアを完全に奪い去られてしまう。
一方でflashゲームは代替手段が乏しく、その後も力作がいくつか作られ続け、2010年代前半ぐらいまで生き延びた。
終焉
皮肉なことに、初期の動画サイトはFLV形式を使用しFlashの技術で動いていた。しかしAdobeもセキュリティの更新が追い付かず、Apple等の外部から激しい批判にさらされる事が多くなり、代替のHTML5による動画再生技術が十分に確立すると、2020年末には提供を終了するとのアナウンスを2017年に発表。YouTubeやニコニコ動画等の動画共有サイト、ほぼ全てのブラウザゲームも対応する約束を期限前に果たしたため、その役割を早くに終える事となった。古いサイトの作品もブラウザでは閲覧できなくなった。
.swf拡張子を目にすることが無くなった後も、Flashのソフトウェア自体はアニメーション作成に長らく用いられていたのだが、この頃には他のソフトウェアでもベクターイラストや疑似3Dの動画が量産されており、完全に過去のものとなってしまった。
そして2020年12月31日、Adobe Flash Playerの開発、提供終了。日本のインターネット聡明期を支え、Flash黄金期と呼ばれる一時代を築いた1つのソフトウェアが幕を閉じた。
しかしながら、日本におけるネット動画文化の下地を形成した一要因である事は間違いなく、クリエイターを生み出すサイクルとして結果を残したのは特筆すべき点である。登竜門となるコンテンツの形が主に3DモデリングやUnityによるゲーム制作へと変化しているものの、基本的に新規参入者への戸口が大きく開かれている点はFlash時代から変化の無い事と言えよう。
Flash作品の歴史
初期の頃は「ドラサイト」に代表されるような、アニメや漫画の画像を用いたギャグ作品や楽曲、音声を切り貼りした俗に言うMADテープの動画版やhatten等の海外の楽曲の空耳が主流であった。この辺は後のニコニコ動画でも流行したジャンルであり、当初からこれらの需要があったことが窺える。
また、海外製作では小小作品という棒人間が激しいアクションを繰り広げるアニメーションが人気を博した。
2ch台頭後はFlashではAAキャラが用いられることが多かった。これはAAにある程度のキャラ付けが成されている上に知名度もあり、1から設定するよりも楽に使えるといった利点があるため。
2002年に製作された「num1000」はわずか1分余りの作品にもかかわらず、流れるような展開や矢印や文字を用いた演出が大いに受け、ソース公開後は様々な派生作品が作られる大ブームとなった。また、アニメのOPをAAで再現したFlash作品も多く作られた。
AA系で代表的なのはみ~や氏製作の「Nightmare City」であろう。
トレス疑惑等叩かれる要素もあったが、それを差し引いてもこのクオリティは今見ても色あせない。
後にカギ氏が「NANAME CITY」としてパロディするなどこの作品が齎した影響は大きい。
逆にオリジナルキャラのFlashアニメーションを製作する人も多く、個人製作ながら商業作品さながらの高いクオリティの作品を作る人もいた。「秘密結社鷹の爪」・「3歳シリーズ」・「WALKING TOUR」等は実際に商業化された。
しかし、商業化の流れに異を唱える人は少なくは無かった。前述の「のまネコ問題」はその象徴と言える。
「もすかう」や東方系作品がヒットしたあたりを最後に、Flash文化はのちのMAD動画やMMDにも影響を残しつつ静かに消えていった。
Flash黄金時代
ニコニコ動画でFlash作品につけられる事が多いタグ。
人によってその範囲が分かれるが、大体hatten伝来~2002年の第一回紅白FLASH合戦あたりから、2005年の「のまネコ」問題、もしくは2007年のニコニコ動画開設までとされている。
pixivでは
Nightmare Cityを初めとしたAA作品系の絵に付けられる。
また、カギ氏・TETLA氏・み~や氏・森井ケンシロウ氏・G-STYLE氏・森野あるじと言ったFlash職人もイラストを投稿しているようだ。
カギ氏(現・カーギィ氏)
主な作品:「NANAME CITY」「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」「患部で止まってすぐ溶ける ~狂気の優曇華院~」「ウサテイ」
TETLA氏(現・宇田てとら氏)
主な作品:「えふえふシリーズ」「チルノのパーフェクト算数教室」
み~や氏
主な作品:「Nightmare City」「ガラクタノカミサマ」「二つの翼」
主な作品:「no concept」「プーキー」
主な作品:「3歳シリーズ」
森野あるじ氏(2024年現在・めろpan及びれもんpan名義で成年漫画家として活動している)
主な作品:「つきのはしずく」「YUKINO」「The Mother Mars」「HANOKA ~葉ノ香~」
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