概要
サザンオールスターズの活動の中で初めて2枚組でリリースされたオリジナル・アルバム。1985年9月14日にCD・レコード・カセットテープで発売。以降も数度の再発売が行われ、2014年12月17日からはダウンロード配信、2019年12月20日からはストリーミング配信が開始された。
タイトルは桑田佳祐が撮影で鎌倉市を一泊した際に浮かんだものであることが語られている。
総レコーディング時間は1,800時間を費やし、発売が当初の予定より半年ほど延びた事が語られている。この事をメンバーは「セミが鳴いているときにレコーディングしていると思って外に出たら雪が降っていた」「雪が降っているときにレコーディングしていると思って外に出たら町中の人はタンクトップを着ていた」と例えている。CMでのキャッチコピーでは『国民待望の2枚組』と紹介された。
2枚組になったことについてはメンバー・識者側とスタッフ側で見解が分かれており、当初は普通に1枚のアルバムを作る予定だったものの、制作していくうちに桑田が作る曲が増えてきてしまい、それらの楽曲をすべて収録したいという意向で2枚組としてリリースすることとなり、このアルバムの制作でサザンとしてできる事を当時の時点ですべてやりつくしてしまったというエンジニア・マニピュレーター側の見解と、本作のコンセプトがそもそも2枚組であり、メンバーの構想として2枚組として出す考えが何となくあったという桑田や識者による見解が存在している。
YMOや佐野元春の作品の影響もあって当時出始めたサンプラーやデジタル・シンセサイザー、ドラムマシンなどが多く使用されている。これら電子楽器やプログラミングの担当として、YMOのアシスタントを務めた藤井丈司が参加している。
このアルバムの発売直後に富士通の協賛のもとライブツアー『KAMAKURA TO SENEGAL』を四か所の会場(中京競馬場、大阪スタヂアム、西武ライオンズ球場、横浜スタジアム)で開催した。このライブではセネガルからTOURÉ KUNDAがゲストとして出演した。また、原由子は当時産休中のため参加していない。
本作の累計売上枚数は95.3万枚(オリコン調べ)を記録。第27回日本レコード大賞では優秀アルバム賞を受賞した。
このアルバムのリリース後は桑田と松田弘が参加したKUWATA BANDを皮切りに各メンバーが1987年までソロ活動を行い、サザンとしては1988年に再開されるまで活動が行われなかった。
収録曲
Disc 1
01.Computer Children - 富士通テレホン CMソング。ディスクの音飛びと勘違いされないよう歌詞カードに説明書きがなされた程の独特なアレンジが特徴。
02.真昼の情景 (このせまい野原いっぱい) - 野沢秀行によるパーカッションの生音とシンセサイザーを融合させたアフリカ色の強いアレンジとなっている。
03.古戦場で濡れん坊は昭和のHero - 4分の7拍子の楽曲。歌詞には鎌倉市の極楽寺が登場している。
04.愛する女性とのすれ違い - 恋愛における心の”ゆらぎ”が描かれたポップな曲調のバラード。タイトルの女性は「ひと」と読む。
05.死体置場でロマンスを - 歌詞の内容はサスペンス小説に影響されたものであり、一部が台本のト書きのような書き方になっている。ライブでは2番の冒頭が野沢秀行をイジる内容に変更される。
06.欲しくて欲しくてたまらない - スウィング・ジャズ風の楽曲。レコード盤ではここからがB面。
07.Happy Birthday - 誕生日をテーマにした楽曲で、アレンジ面はスクリッティ・ポリッティに影響されたものと語られている。
08.メロディ (Melody) - 23枚目のシングル。このアルバムのCMにも使われ、桑田からのオファーで明石家さんまが出演。口パクでこの曲を歌いながら赤い涙を流す内容だった。
09.吉田拓郎の唄 - 当時引退の噂が囁かれていた吉田拓郎へのメッセージソング。吉田本人は後に引退を撤回した。現在も桑田と吉田は良好な関係である。
10.鎌倉物語 - 作者の桑田が高校時代を過ごした鎌倉市が舞台になった曲。原由子がボーカルを担当しており、当時は産休中であったため自宅でのレコーディングとなった。
Disc 2
01.顔 - 歌詞中の「女人瓜売僕助平(にょにんうりうりぼくすけべい)」は桑田の造語である。
02.Bye Bye My Love (U are the one) - 22枚目のシングル。USA for Africaの「We Are The World」へのアンサーソングとして制作された。
03.Brown Cherry - 日本語が英語に聴こえるように作られたエロティックな内容の歌詞の曲。
04.Please! - アウトロではエリック・クラプトンが在籍したバンド、クリームの「Sunshine of your love」のイントロが借用された。
05.星空のビリー・ホリデイ - 人種差別や薬物依存症、アルコール依存症と闘ったジャズ・ボーカルの巨匠・ビリー・ホリデイの人生を唄った曲。
06.最後の日射病 - 作詞作曲とボーカルを関口和之が担当した曲。レコード盤ではここからがB面。
07.夕陽に別れを告げて 〜 メリーゴーランド - 桑田が青春時代を過ごした鎌倉学園高等学校での思い出を唄った曲。ライブでは「メリーゴーランド」の部分は割愛されている。
08.怪物君の空 - 大塚製薬「オロナミンC」CMソング。反戦のメッセージが込められたハードロック調の曲。
09.Long-haired Lady - 多重録音による輪唱が用いられたバラード曲。
10.悲しみはメリーゴーランド - 桑田出演の三菱鉛筆『EXCEED』のCMにキーを変えたインストゥルメンタルが使用された。先述の「メリーゴーランド」に歌詞がついたフォークソング調の曲。1994年の桑田のソロツアー『さのさのさ』や1996年のサザンの年越しライブ『牛』ではハードロック調のアレンジに変更して演奏された。