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SCP-650-JP

ひとでなしでくにんぎょう

SCP-650-JPとは、怪奇創作サイト「SCP Foundation」に登場するオブジェクト(怪異)の一つ。

概要編集


アイテム番号:SCP-650-JP

オブジェクトクラス:Euclid


SCP財団日本支部が管理するSCPオブジェクトの一つ。メタタイトルは「人でなし、でく人形」。

ある日突然日本支部のとあるサイトに出現し、そのまま自らの意思で財団に確保された人物。人間として常識的な感性を持ち、ある日まで妻子持ちの一般人として人間社会の中で生きてきた、見るからにごく普通の成人男性。しかし、普通の人間とは決定的に違う特徴として、彼の肉体には生体反応が一切確認できない。彼の正体は、なんと秒間286回もの現実改変を起こし、生きている人間を模倣するように動き続けている「である。

これは要するに「現実世界でアニメーションと同じ原理で動いているだけの死体」ということ、更に言えば彼だけでなく彼が影響を及ぼした他のものも同様に動くため、例えばキャッチボールの様に軽くボールを投げた場合、そのボールは妥当と思える軌道を描いて飛んでいく(そして感覚的にも物理的にも正しい)のだが、その飛び方はコマ送りで瞬間移動しているため動いている様に見えているだけで、実際にはボールは飛んですらいない。


なおあくまで生体活動を模倣しているだけであり、これらの活動が部分的に停止したとしても彼の異常性そのものには問題は生じない。

なので、正確には「現実改変能力を持っている死体」というより「死体を自分と思い込んでいて、そこから離れられない現実改変現象そのもの」の方が正しい


常に現実改変を繰り返している上に自身が直接関与する実体にも現実改変の影響を及ぼすため、彼の周囲では現実性を示すヒューム値が大きく変動する。これにより耐性を持たない人間が彼に接近すると「現実酔い」を起こしてしまう場合もある。……何を言ってるのかよくわからないという人は、彼に近付くだけで乗り物酔いのような症状が出る人もいると思っていただければ大体合っていると思う。


彼自身の証言によれば、(「今思えば」と注釈しているが)彼は生まれながらにして死んでしまっていた(流産だったものと思われる)。しかしその段階から訳もわからず異常性を発揮し、顔を動かし、涙を流し、泣き崩れる母の真似をした。それは奇跡的に生きた赤ん坊が最初にする仕草と同じだった。

誰かが自分の胸を押し潰して何処かを動かそうとしていたので、1番近い臓器をとりあえず動かしてみたが、それは偶然その臓器の正しい動作と同じだった。

そして何かを吹き込んできているのでその動作を真似てみた。それは偶然人が常日頃やるべき行動と同じだった。

辛うじて生後間もない人間らしい姿と行動力を持った状態でこの世に生まれた。以後、彼は30年近く自身の異常性を異常と認識することなく、周りの人の真似をしてあくまで普通の人間として生活してきた、それは偶然にも「幼児が誰かの真似をしたがる」という情動と同じだった。


からだのふしぎという絵本を読み「なんでこの子は自分で自分の体を治さないんだろう?」というような疑問を持って質問したりもしたが、周りは「この子も自分の体なのに自分の思い通りにならない部分がある事を不思議に思うような年齢になったのだな」と優しく笑い、彼自身も「きっと自分が自分でやってると思い込んでるだけで他の人も自分と同じ感覚を持っているんだろう」と納得した


勉学に励み、数式をとき、出来なかったところを復習すれば出来るようになり身につく、朝起きて伸びをして運動をすればほんの少しだけ背が伸びる、そんな普通の生活を続け、大人になり、やがては職を持ち、家庭を設け、ごく平凡な幸せを手に入れた。

しかしある日、自分の娘が目の前で交通事故に遭いかけた瞬間。間に合わないとわかっている、届くはずのない腕を、それでも伸ばそうとしたとき、それを現実にできてしまった。

突っ込んできた車に向けて自らの腕を発射して叩き潰し、運転手を砂ねずみに変えて無力化し、自分や娘、車や元運転手の砂ねずみの存在を周囲の人間の視界から隠蔽した。そしてこの瞬間を以て、ついに彼は自分が人ならざる存在である事に気付いてしまった


その瞬間まで普通の人間として生活していた彼にとって、その現実はあまりにも大きなショックを与えた、彼とて思春期の頃には他の子供がやっているように「特別な力を得て悪と戦う」ような空想や「超能力を得て空を飛ぶ」ような妄想とてしたことはあった、だがそれが実際には出来なかったし、出来るなどとは本心ではかけらも思わなかったし思っていなかったのだ、まして自分が「やろうと思うだけでなんだって壊せて、誰だって殺せて、証拠すら残さない能力をもった化け物」だったなど受け入れられるはずもなかった。

何とか「普通」にできないかと手を尽くそうとしたものの、結局それは無駄な努力に終わってしまった、なんでも出来る彼の能力は彼の能力を消すことだけはしてくれなかった。


現実改変能力は「自身より周りのヒューム値を下げる」、或いは「自身が周りより高いヒューム値を持っている」事で「自分よりヒューム値の低いモノを自由自在に捻じ曲げる」能力であり、自分自身は「自分のヒューム値と同じ」であるため改変することはできない。(我々通常の人間が、自分に対して何がしかの現実改変を起こせないのと同じである)

「お前の撃ってくる銃は豆鉄砲」と定義し、外的要因に無敵になることはできても、「一度自分の心臓を銃弾が貫いた」後、それを無かったことにするのは出来ない(銃を消すことはできても自身の傷を治療する事は、少なくともこの方式の現実改変者には不可能である)し、まして「不死身の自分自身」も「ごく普通の自分自身」も、作ることはできないのである。(上述通り彼は死体に取り憑いているだけで「死体」は彼本人ではない。この場合「自分自身」とは「意思を持った現実改変能力そのモノであるナニカ」さんであり、その「ナニカが取り憑いている死体」ではないため、死体=肉体の状態の改変自体は可能な特殊ケースである。)


誰よりも普通の感性を持った誰よりも異常な能力者は自分自身に恐怖と絶望を覚えた。

彼は、自らを死なせてくれる場所を望んだ。その結果、彼は自らの居場所を改変し、財団のサイトに現れたのだった。


財団は今のところ、彼の肉体の破壊については「保留」としている。破壊する事自体は難しくはないはずだが、彼の肉体は元々死体であり、現実改変能力が死体に宿っているとは限らないため、破壊したとして彼の肉体の異常性が無力化される確証が無いためである。

必ずしも彼の望む結果に繋がるとは限らないし、更なる異常性を発揮してしまう可能性も捨て切れない、痛覚等も再現している以上本人の精神衛生やその悪化による能力の暴走などの危険もありうる、その辺りの確証を得られない限り、財団が彼の肉体を破壊する事は無いだろう。



しかし、確かに破壊に踏み切る場合もあるものの、SCP財団は基本的にはこの世の異常存在を確保・収容・保護する組織である。そして繰り返すが、彼は死に場所を探すためにワープして来た筈であり、彼ことSCP-650-JPの破壊も現状は保留中。破壊された場合にその肉体の異常性がどう転がるのかが不確定である限り、半永久的に財団の管理下に置かれ、保護され続ける事となる。


何故死にたがっていた彼が異常即破壊のGOC等他の要注意団体ではなく確保して保護する財団に現れたのか、それは財団に現れた本人にも分からない、ただ…


「わたしは自分を殺したいと思っているはずです。

 しかし、わたしはここに飛んできた。

 殺し屋の家でも、地雷舞い踊る戦場のただなかでもなく、

 研究施設であり、収容施設であるこちらに飛んできた。」


少なくとも一つわかることは


「ここがわたしをいつか殺してくれる場所なのでしょうか?

 それとも、わたしは自分が生きていてはいけない存在だというのに、

 本当は殺されることが怖くて、

 自分を守ってくれそうな所をいつの間にか選んで飛んできてしまった、意気地なしで…… 」





「……人でなしなのでしょうか?」


彼は誰よりも人でありたかっただけの死体(ヒト)なのだ。


関連タグ編集

SCP_Foundation


グレミィ・トゥミュー:宇宙空間や隕石すらも想像して実体化できる能力者、普段使用している肉体そのモノも想像の産物という共通点があり、本体は水槽に入った脳でしかない。意思を持った能力そのものである650-JPと違いグレミィは「脳が本体」で一応「生きている」ので脳が破損したり、衰弱すると死亡する。

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