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適応障害

てきおうしょうがい

ある特定の状況や出来事が、その人によってとても耐えがたいストレスに感じてしまう状態のこと。また、ストレスが原因で日常生活に障害を及ぼす状態のこと。
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概要編集

精神疾患の一種で、適応性障害ともいう。特定の状況や出来事に対し、それが強いストレスに感じてしまい、精神的に過敏になったり、心と体のバランスが崩れ体調が悪くなったりしてしまう状態のこと。ごく簡単に言えば、ストレスが原因で心がくじけてしまい、立ち直るのが難しくなっている状態のこと。類似する症状が見られるうつ病とは区別される(後述)。


発症の原因は様々だが、主に家庭内や学校、職場内など、日常生活で抱えた重度のストレスが原因となる。環境の変化も原因となり、転居や転職で新しい環境に慣れず発症することも多いとされる。特に家庭内では、保護者や配偶者からの虐待(DV)、またそれを見聞きすることが原因となりうる。→毒親アダルトチルドレンなどを参照のこと。


例えば、職場でのストレスが原因の場合、職場に行こうとすると気分が強く落ち込んだり、仕事をしているときに不安を感じ続け、思うように仕事ができなかったり、といったケースが見られる。適応障害の「適応」とは、生活におけるストレスに対する「適応=ストレスの処理・解決」であり、適応障害の患者はストレスがうまく処理できず、過剰に反応してしまう状態のことである。


症状編集

ストレスの原因となる状況・出来事に対してひどく憂鬱な気分になったり、強い不安、苦痛を感じるといったことが挙げられる。ストレスの原因に過剰に適応しようと強迫観念に囚われる、ストレスからの解放やうまく適応できない自責の念から、周囲への暴力や無謀な運転といった後先考えない破壊的・破滅的行動を取ったり、自傷行為をしたりといった、行動面での障害が目立つ人も多い。


うつ病と同様「抑うつ状態」が症状の一つに挙げられるが、適応障害は「発症の原因=ストレスの原因」がはっきりしているため、基本的にはストレスの原因を断ち切れば症状が改善し回復するケースがほとんどである。しかし、うつ病は原因がはっきりしない、あるいは幾つかの要因が複合的に作用しており、一つストレスが解決しただけでは症状が改善しないことが多い。


先の例に挙げた「職場でのストレス」で言えば、適応障害は休職や退職、転勤、配置換えといった環境の変化、つまりストレスの原因から離れることで症状が改善する。しかし、うつ病はこれらの変化があっても抑うつが続き、症状が大きく改善するということがない。もっとも、長期的にストレスに晒され続けることが原因で、うつ病やその他の精神疾患に移行するケースも珍しくない。また、初めに適応障害と診断されたあとに、症状を見て再度診察が行われ、改めて他の精神疾患と診断されることもある。


治療に関しては、まず第一にストレスの原因の除去が挙げられる。学校のクラスに馴染めないのであればクラス替えや保健室登校などをしてみる、職場の上司とうまく行っていないのであれば配置換えをしてみる、といったことである。場合によっては休学・休職で距離を置いたり、転校・転職、ときに退学・退職して精神的な余裕を持てるように落ち着ける環境を用意することである。無論、家庭内のように容易に離れがたい環境であれば、医療機関以外にも行政などのサポートが必要となる。


これに加え、本人のストレスの受け止め方を把握し、認知行動療法などで「ストレスとの上手な向き合い方」を指導し、身につけていくという資本づくりがある。また、他の精神疾患と同様、情緒・行動面での症状(たとえば、不安を強く感じる、眠れないなど)に対し薬物で対処していくといった治療法が主に行われている。


社会生活での動向編集

不登校非行、人間関係の軋轢や業務上のミスといった、日常生活でのトラブル、ストレスを心配して精神科・心療内科を訪れ、診断されるというケースが見られる。

また、知的障害自閉症スペクトラムADHDといった発達障害の特性から、集団生活に馴染めず、二次障害の一つとして適応障害となる場合もある。特に、「おとなの発達障害」(子供のうちに診断されることが多い発達障害だが、成人してから診断される場合)では、仕事のストレスなどで適応障害と診断されてから、改めて発達障害がわかるということもある。


日本では、皇后雅子様(※診断当時は皇太子妃)が2004年に適応障害だと診断されたことで一般にも知られるようになり、それを受けてか2000年代以降は芸能人や政治家といった、社会的立場のある著名人が(ときに不祥事を受けて)適応障害だと告白することも増えてきている。

特に芸能人では発声障害など、活動に影響のある症状が出たことで診断を受けるということもある。例として声優の石井マークは2019年に適応障害が原因で体調不良となり、発声障害が起こったと公表している。


先に述べたように、適応障害は「症状の起こっている原因」が明らかなことから、治療や日常生活への復帰も比較的順調に進みやすいと考えられている。このため、一部負担がかかる活動を縮小する形で精力的に仕事を続ける人や、回復が早く短期間で復帰できるような人もおり、これは著名人においても同様である。

一方、仕事からの引退、他の病気の療養生活などがストレスで発症に至るケースや、復帰後も体調が芳しくない状態が続くことは少なくない。


関連タグ編集

精神疾患 社会問題 強迫性障害 パニック障害 不安障害 過剰反応

いじめ 毒親 アダルトチルドレン ブラック企業 鬱病


関連リンク編集

適応障害(厚生労働省内e-ヘルスネット)

雅子妃、適応障害診断から学ぶ私たちの心の健康

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