概要
伊豆急行2100系は、1985年から1993年に掛けて5編成(40両)が製造された電車である。
当初の計画では、100系をリニューアルした1000系の第3編成として製造される予定だったが、方針を転換し、社内全体での検討により本車両が開発された。製造は東急車輛製造。
リゾート21の愛称は公募によって決められた。
観光客向け車両のため、ドアが少なく座席配置も特殊。混雑時に壊れることを覚悟して設計したとの逸話もある。
基本的に、普通列車は7両編成、特急列車はロイヤルボックス(後述)を連結した8両編成で使用される。
特徴
- 先頭車両は半室構造で、運転席側の客席は映画館のような階段状の展望席となっている。フロントガラスは大型で、運転席の後ろから前面展望を楽しめる。なおこの区画の立ち席は禁止されている。
- 車両の海側と山側で側窓が異なり、海側は展望を考慮した大型の連続窓、山側は当時日本の鉄道車両ではほとんど採用例のなかったベクワラットタイプ(中折れひんじ式)とした。
- 普通車の海側の座席は一部を除いて窓側を向いたロングシート、山川の座席は2人掛けボックスシートで、車端部が4人掛けボックスシートである。
- デビュー当時は、R-1~R-4編成がホワイトの車体に海側にレッド、山側にブルーの左右で塗装が異なるデザイン、R-5編成が床屋の看板のように、レッドとブルーの斜めラインが交互に入るのデザインだった。
- ロイヤルボックスと呼ばれる特別車両があり、海側が1人、山側に2人掛けリクライニングシートが設置されており、トンネル内で天井がプラネタリウムのようになるギミックがある。(後述)
編成ごとの特徴
1次車(R-1編成)
1985年落成、同年代7月20日より運転開始。
一部の制御装置や主電動機を100系から流用。
100系との連結も考慮して、連結器が剥き出しになっている。
サハ2170形(2171号車)は1扉で、車内中央部に展示スペースがある。(かつてはこの部分にピアノが置かれていた。)
2004年に、下田開港150周年を記念して、黒船をイメージした黒色に塗装が変更され、車内で下田開港当時の資料を展示した「黒船電車」としてリニューアルされた。
2006年3月10日に引退。その後4日間さよなら撮影会が行われた。廃車。
2次車(R-2編成)
1986年落成。
一部の制御装置や主電動機を100系から流用。
この編成から先頭部の連結器が、スカート内に収納されるタイプに変更された。
1986年6月18日~22日までの5日間、PRも兼ねて新玉川線と池上線を除く東急電鉄各線を走行した。
サハ2170形(2172号車)は1扉で、車内中央部にイベントスペースがある。
2009年5月31日に引退。廃車。
3次車(R-3編成)
1988年落成。
この編成から、機器流用がなくなり完全な新車となった。
落成後、東急電鉄各線を走った他、同年4月20日に「快速リゾートライナー21」として、東海道本線東京駅まで乗り入れた。(私鉄車両では初)
サハ2170形(2173号車)は2扉で、車内中央部に車体中央を囲むように座席が配置されたサルーン区画がある。
廃車計画があったが延命。
2011年8月18日にオリジナル塗装での運行を終了。「リゾート21オリジナルカラーさよなら運転」が行われた。
2011年10月22日~2016年8月21日の間は、100系と同じハワイアンブルーの塗装となり、「リゾートドルフィン号」と呼ばれた。(メイン画像参照)
2017年2月4日からは、赤い車体にキンメダイのイラストがラッピングされた、「Izukyu KINME Train」として走っている。また、行先表示器がLEDに変更された。(冒頭のイラスト)
4次車(R-4編成)
1990年落成。
東海道本線乗り入れを考慮し、パンタグラフが従来菱形から下枠交差式に変更され、個数も減った。(後に増設)
また、フロントガラスが一枚窓に変更され、サッシがなくなった。
落成当初よりロイヤルボックスが連結されていた。
この編成から、速度計がデジタル式になった。
スカート形状や塗装もデビュー当時は異なっていた。
リゾート21EX(エトセトラ)と愛称が付き、「特急リゾート踊り子」に積極的に使用された。
2006年3月からは2代目黒船電車となっている。
2020年2月にはリニューアルが行われ、電源コンセントおよびUSBポートを設置された。また車内のQRコードでアプリをダウンロードすることにより、各号車のテーマの映像を楽しむことができるようになった。参照
5次車(R-5編成)
2003年落成。
車体が丸みを帯びたデザインに変更され、塗装も変更、アルファリゾート21と名付けられた。一見すると別の形式の車両にも見える。
パンタグラフは下枠交差形を3機装備。寝台車のような屋根をしており、パンタグラフの部分だけ屋根が凹んでいる。
ドアがプラグドアに変更されドアチャイムも設置された。ロイヤルボックのみ4枚折り戸を採用。
窓側を向いた座席が減り、4人掛けのボックスシートが増えた。
主幹制御器は唯一の横軸タイプを採用。
「特急リゾート踊り子」の主力車両として、同列車廃止まで使われた。
2007年には、前面にLED式行先表示器を増設。
2016年2月10日~9月の間は、リゾート21登場30周年を記念したホワイトをベースにした塗装になった。
2016年9月に運用離脱。
その後、ドーンデザイン研究所水戸岡鋭治が手掛ける団体臨時列車(クルーズトレイン)に改造されるため、東急電鉄長津田工場に入場。
2017年7月21日より、「THE_ROYAL_EXPRESS」として再度デビューした。
「THE_ROYAL_EXPRESS」については当該記事を参照。
基本的に横浜駅~伊豆急下田駅間のクルーズトレインとして使用され、13.5万円~20万円の旅行商品として扱われている。
また、「HOKKAIDO CRUISE TRAIN」として2020年夏には北海道でも運行されている。
ロイヤルボックス
1990年落成の4次車から連結。後にアルファリゾート21後に分も含め、5両が製造された。
ドアは4枚折り戸を採用。
座席は海側が1人掛け、山側が2人掛けのリクライニングシートで、45度ずつ回転が可能。シートピッチは1,340mmとかなり広い。
寝台車のようなハイルーフを採用し、トンネルに入ると特殊塗装とイルミネーションによる演出で天井が星空になる工夫がなされている。
車両ごとにテーマがあった。
2181号車 | ドリーム(星空と宇宙に浮かぶ地球) | サンド調(ゴールド) |
2182号車 | ロマンチック(星空と半島の港町の夜景) | ウッド調(グリーン) |
2183号車 | ファンタジー(宇宙と月・巨大な宇宙船) | ストーン調(ピンク) |
2184号車 | アドベンチャー(空想宇宙で爆発する流星群) | メタル調(イエロー) |
2191号車 | 海底散歩(スターダストルーフ) | シャンデリア装備 |
2003年3月で一旦営業が終了され、2182号車と2191号車以外の3両は解体された。
その後、伊豆急行線内のトンネルで演出が復活。
2182号車は黒船電車として現存し、基本的には使用されないが、不定期で連結され、その際は告知がされる。
2191号車は、THE_ROYAL_EXPRESS化改造にともない、車両は現存するものの、ロイヤルボックスとしては消滅した。