世代宇宙船
せだいうちゅうせん
概要
相対性理論によると宇宙船は光速を超えることができないので、目的の恒星付近まで到着するのに最短でも数十年、場合によっては途方もない年月がかかることから考案された恒星間航行の手段の一つ。
都市もしくは国家一つが入るほどの巨大宇宙船を建造し(この規模でないと近親婚の問題が生じるとされる)、多数の家族を含めた男女が乗り込んで宇宙船内で世代を重ねて、最終的に搭乗員の子孫が目的地に到達するという概念である。
そのため宇宙船の内部には目的地到達まで、搭乗員達が安全で健康に生存できるように様々な事態に対応した設備や装備が設けられ、酸素や水、食料などが恒久的に循環するシステムも必須となる。
目的地到達まで時間がかかることから、いくら教育を施したといえど世代が進むにつれて自らが地球人であるというアイデンティティが失われていくという点が懸念されている。
また事故や故障、内乱などの不測の事態により、宇宙船自体はその堅牢さから無事であっても、知識の伝達などが途絶えてしまい、子孫たちが目的を失って宇宙船という概念が解らないほど退化してしまう可能性も考察されている。
なお創作作品によっては、搭乗員のストレスや葛藤を軽減するためという理由で、意図的にマインドコントロールも交えて宇宙船であることを伏せられている場合も存在する。
また、この手段が用いられるのはワープ航法や、コールドスリープ技術が実用化されていなかったり、あったとしても技術的に過渡期であり、併用する必要がある場合も多い。
地球を含め、いままで住んでいた惑星が何らかの理由で居住不可能になるため、急遽この手段をとらざるを得ないという設定が用いられていることもある。
また地球文明圏に、異星文明の世代宇宙船がたどり着くという展開のフィクションもある。
関連項目
関連作品
※SF小説としては古典的なアイデアであるが、オチとして実はこの世界自体が宇宙船などの人工物であったというネタバレもあるので、これより先読む場合注意。
- 「マクロス」シリーズ…世代宇宙船で地球から離れなければならなくなった、地球人および異星人によって作られたノンフィクションドラマや映画という入れ子構造である設定のシリーズ。
- 新スタートレック(TNG)…世代宇宙船そのものではないが、乗員の家族の居住区も含む、都市機能を持つ巨大宇宙船が舞台となっている作品。
- ガデュリン…OVA、ゲーム、小説最終巻ではOPにおいて遭難してたどり着いた地球人の主人公だけが知っている。
- 銃夢…舞台の時代より前に計画されていたが、太陽系内の紛争によって凍結されたという背景がある。
- 「ヤマトタケル」(アニメ版)
- ロバート・A・ハインライン…この設定の古典『宇宙の孤児』(1941年)を発表。
- ブライアン・オールディス…初の長編小説『寄港地のない船』は『宇宙の孤児』への返答であるという。
- 星野之宣…テーマにした短編をいくつも描いているSF漫画家。
- 小林泰三…同上のSF小説家。
以降物語の根幹としてのネタバレを含むもの