響凱
きょうがい
「小生の血鬼術も……鼓も……認められた………」
CV:諏訪部順一
概要
「鼓屋敷」の主である鬼で、屈強な肉体に肩・腹・両腿から鼓が生えたような怪人。実は背中にももう一つあったが失くしてしまった。
人間だった頃は文筆家だったようで、特に『里見八犬伝』を好み、自身も伝奇小説を書いていた。しかし周囲からは評価されず、ある知人に至っては彼の作品を「美しさも儚さも凄みもない 全てにおいてゴミのようだ」「紙と万年筆のムダだから、もう書くのはよしたらどうだ」などと散々に酷評した上、原稿用紙を踏みつけにした事でついに彼の怒りを買い、鼓の斬激で惨殺してしまった。
その際「最近は昼間全く外に出てこない(だから君の作品はつまらないのさ)」と言われているが、これは既に鬼化していて太陽の下に出られない体になっていたからである。
鬼舞辻無惨に素質を認められて十二鬼月(下弦の陸)になったものの、だんだんと体が人肉を受けつけなくなっていった為に見限られ、その証たる"下陸"の数字が書かれた右目と共にその地位を剥奪されていた。瞳が見えないのは目を裏返しているためで、瞳自体は青く、右目の「下陸」には細いバツ印がついている。
初期の炭治郎(しかも矢琶羽と戦った傷が癒えていない)に比較的あっさり倒されてしまった辺り、人を喰えない事で力が衰えてしまっていたと思われる。
週刊少年ジャンプ2020年39号のスペシャルインタビューにて、演者の諏訪部氏は響凱については、「鬼となり人を喰らっていたのは裁かれるべき事ですが、どこにも己の居場所を見出せない心の苦しみを思うと、自分の事のようにひどく胸が痛みました」と答えている。
人物
一人称は基本的に「小生」だが、「俺」になった場面も。
ぼそぼそと小声で呟くようにしゃべるのが特徴で、プライドが高いという典型的根暗。
また土足で家に上がり込んだ鬼殺隊の面々や他の鬼達に苛立ちを見せており、礼儀にうるさい一面も持つようだ(神経質なせいもあるだろうが)。
文筆家をしていただけあってかそれなりに頭は回るようで、「数多くの人間が食えないなら、少量でも力がつく稀血の人間を食う」という解決案を思いつき、さらには実際に稀血の人間を自力で探し出して、その場で食わずに自分の住処まで攫う等、かなり計画的で賢明な面も。
能力
血鬼術『鼓』
体に埋め込まれた鼓を打つ事で、自身のテリトリーである屋敷の部屋を回転させたり、爪痕のような斬撃を加えたりできる。
もう一つ背中にあった鼓は空間転移能力を持っていたが、他の鬼と争った際に抜け落ちて、清少年(後述)の手に渡っていた。
自身の肉体から生み出したとはいえどうやら再生能力の範囲外のようで、再生することはなかった。
また鼓は彼が死ねば消滅するが、屋敷は元々存在するものなので彼が死んでもそのままであった。
ただ、回想より席位剥奪時点では腹の斬撃以外の鼓を持っていない事が確認できるので、部屋を操る血鬼術は剥奪された後に身につけた物と思われる。
- 尚速鼓打ち
体中の鼓を高速で交互に打つ技。「爪」の数が三本から五本に増えて攻撃力が増している上、グルグルと目まぐるしく回転する部屋の中で斬撃を回避せねばならないという厄介な技。
活躍
「稀血」の人間を喰う事で十二鬼月に復帰するべく、稀血である清(きよし)という名の少年を攫って自身の住処である鼓屋敷に持ち帰るも、血の匂いを嗅ぎつけてきた他の2匹の鬼と清をめぐって争いに。
その中で攻撃をうけて落とした鼓の空間転移能力で清少年に逃げられるばかりか、竈門炭治郎や我妻善逸、猪の皮を被った謎の剣士などが屋敷に乱入してきた為、彼の苛立ちと鬱屈は頂点に達していた。
そして炭治郎との一騎討ちとなり、彼が先の矢琶羽戦の負傷の影響で本調子でなかった事もあって、前述の血鬼術で大いに苦しめるが、最後は一瞬の隙を衝かれて頚を刎ねられる。
しかし、戦闘の最中でありながら、自身の書いた手書きの原稿用紙に敬意を表して踏みつけるのを避けた(もっとも、これが自身の攻略の糸口を掴む切っ掛けを与えてしまうことにもなったが)上、トドメを刺す瞬間「君の血鬼術は凄かった!!」と称賛の言葉を贈られた事で、「ようやく自分は認められた」と嬉し涙を流しながら消滅していった。
ある意味、鬼の中ではまだ救われた最期と言えるかもしれない。
5巻にて設定が明かされた。
教師として高等部の音楽を担当しており、オールバックと特徴的な顔の模様はそのままにきちんとネクタイとシャツを着ている。
やはりというか鼓を使って授業するが、長唄やお囃子といった古典的なものばかりやるので、響凱の生徒達は最近の教科書に載っている曲をちゃんと歌えないらしい。
また原作では物書きだった彼だが、こちらの世界ではミュージシャンとして和楽器バンドを組んでいる。外伝小説のエピソードによると彼のバンドの演奏は海外の評論家からも高い評価を得ている程だという。
誰かに認められたいという悲願が叶った世界ともいえる。
なお最強ジャンプ連載の『キメツ学園!』(作画:帆上夏希)では、巻末オマケ漫画にて美術共々好きな教科に音楽を挙げた炭治郎に「好きと得意は違うのでは……」と本編を知っていると何ともコメントし辛い指摘をしている他、学校にピザの配達を注文した杏寿郎にキレちらす実弥を「何か事情があったのでは?」と宥めるも、直後杏寿郎の説明に「なかった」と否定せざるを得なかったり、教員に分ける杏寿郎に義勇の所在を聞かれ、「(職員室には)いません」と答えたりしている。
また本編では人食い鬼として炭治郎(鬼殺隊)に討伐されたが、こちらでは学園の教員という、本編において柱をはじめ鬼殺隊側だったキャラが大半を占める善人ポジションとして登場している。上記の通り本編の響凱は悲劇的な側面も持ったキャラであったが、彼の他にも十二鬼月を含めて本編でのエピソードが悲惨で同情の余地のあった鬼は、キメツ学園の世界では幸福な形で描かれていることが多く、これも一種の救済と思われる。
ただ教員なのは響凱くらいで、上記の4人のほか、同じく救済枠として出てきたと思われる朱紗丸がバレー部、矢琶羽が弓道部の部長(なぜか「豆腐屋の息子」という設定つき)として、全員生徒になっている。
逆に元から同情の余地が一切なかった悪鬼については、こちらの世界でも邪悪な存在として描かれる傾向にあり、無惨は悪徳議員、魘夢や沼鬼は変質者、童磨は詐欺師、半天狗と玉壺に至っては「学校の妖怪」とろくでもない立ち位置にされている。
外部出演
コトダマン
光属性・魔族のコラボユニットとして登場。
イベント期間中、常設の降臨ボスとして登場するのを撃破する事で入手できる。進化できないユニットの一人で、育成難度は低い。
特性はヒールブロックへの与ダメージ増加と魔族特効があるが、他の鬼滅コラボユニットと比較すると強みに欠ける。また、鬼滅コラボ出身ユニットでありながら「鬼殺の同士」の効果を持っていないので(鬼なので当たり前だが)鬼滅コラボの恩恵を受けにくいのが難点。
なお、進化可能な鬼滅コラボユニットの必要進化素材には藤襲山バージョンの炭治郎を除く全てに響凱が含まれており、鬼滅ユニットを育てるプレイヤーからは何度も頸を斬り落とされる事になる。
南無阿弥陀仏……
余談
無惨に力を見限られて右目の数字を奪われた彼だが、後に現役の十二鬼月の下弦で既に倒された伍とその邪悪な性根と忠誠心を認められた壱以外が、弱いという理由で無惨に処刑された(壱もあくまで助かる可能性を残してそれで生き残れただけであり、実質的な処刑)あたり、片目と地位を奪われただけで済んだ響凱はかなり気に入られていたと思われる。
彼のみこのような比較的甘い処分で済んだ理由は諸説あるが、上述の下弦処刑の直前「十二鬼月に数えられたからといって終わりではない」「より人を食らい、より強くなり私の役に立つ為の始まり」と述べているため、『体質的な問題で大量に人を食えなくなった』が『それを言い訳にせず(効果はなかったが)無理をしてでも人を食らおうとした』、そして見限られてからも『食える量が少ないのならより効率の良い稀血を食えばいいだけ、と思考と努力を止めなかった』と、元々向上心と忠誠心が高かったからという説が一般的。
さらに言えば無惨は配下である鬼の思考を読むことができるため、虚言や面従腹背といった無礼は決して通じないし許さない(実際他の下弦の鬼にはそれで無惨の怒りを買ったことが処刑の引き金になった者もいる)。それを考えれば響凱は力不足については見限られて処分を受けたものの、その上で生存と自由な活動については許された辺り、無惨から忠誠心の高さや精神性については相応に気に入られていたことはほぼ間違いないと思われる。
実際に、無惨の(比較的)お気に入りの鬼は基本的に向上心の高い者が多い。
また、上記の通り十二鬼月の地位を剥奪された時点での姿(鼓の数)から、この頃はまだ屋敷内の空間を支配・操作する能力を有していなかったと思われる。これが正しければ彼が数字剥奪後も腐ることなく、清以前から稀血を食うなどして血鬼術を磨き、昇華させたことの証といえ、その意味では生存を許した無惨の期待にもしっかり応えていたといえる。
結果としてこの時点の炭治郎に敗れているため、単純な戦闘力という意味ではあまり向上することはなかったと思われるが、建物内の空間を支配するという性質は、当初は十二鬼月とは別枠で無惨から重用されていた鳴女の能力に類似しているため、鳴女と同じく十二鬼月とは別の意味での「便利な駒」、もしくは「十二鬼月の補充要員候補」程度には期待され続けていた可能性は十分にある。鳴女も補充要員として後に「上弦の肆」の数字を拝命したが、直接の戦闘力については皆無に近い。それでも鳴女に対する無惨の評価は「便利であるためお気に入り」であったため、響凱もその方面では無惨から期待されていたとしてもおかしくはない。
実際に作中に登場した下弦の中で、数字が右目に刻まれていたのは彼だけであり(外伝に登場した前の下弦達も例外なく数字は左目である)、これは彼が特別に期待、重用されていた証ではないかという考察もある。また、彼を始めとする十二鬼月内の無惨のお気に入りの鬼は右目に文字が刻まれている事が多い(最も他の例は全員上弦だが)。
また、彼は鬼となった後も自身の家に留まり、人間時代の知人との交流や小説の執筆、趣味の鼓も続けていた。
このことから、人間だった頃の記憶や人格をほぼ完全な形で留めていると思われるが、これは鬼になってまだ日が浅いということを差し引いても非常に稀な事例であり、作中で他に明確にそうとわかるのは無惨と上弦の上位2名くらいである。
体質的に人間の血肉をあまり喰らえなくなってしまったために伸びしろが期待できないとして見限られたものの、そういった面では類稀な素質の持ち主であり、稀血の人間を食らうことでその問題を克服できれば、化けた可能性もあるだろう。
また、殺害した知人に小説だけでなく鼓の腕前も「人に教えるようなものではない」と酷評されているが、鼓という楽器は素人には音を出す事もままならないくらいに扱いが難しい楽器である。それを響凱は作中一つたりとも(最後の尚速鼓打ちで連打している最中であっても)失敗する事無く音を出している。その知人がどの程度音楽に秀でていたかは不明だが、響凱をこき下ろす台詞の中で口に出された評価であり信憑性は薄れている。また直接関係は無いだろうがキメツ学園では音楽に関して高い評価を得ており、本当に腕前が悪かったのかどうかは疑問が残る。