鉄人兵団
てつじんへいだん
概要
鉄人兵団とは「大長編ドラえもん・のび太と鉄人兵団」に登場するロボット集団のこと。メカトピア星から人間を奴隷とするためにワープを繰り返して地球に侵攻してきた。
生身で宇宙空間を突破可能で、恐らくタキオンを利用したと思われる通信網も持つ。
主戦力であるロボット兵を始め、個々の戦闘力はひみつ道具がなければ太刀打ちできないほどであるが、耐久力についてはそう高くはないらしく空気砲やショックガンで容易に撃破できる程度。
しかしその本領は物量作戦であり、「何千何万体壊されようと、代わりのロボットは無数にいる」と明言されている。
本編中で登場した地球侵攻部隊だけでも、僅か数人がハッタリを効かせただけのドラえもん達だけでは敵う筈がなく、一行を敗退寸前(かろうじて命はあったものの継戦能力は完全に失われており、実質的には全面敗北した状況)まで追い込んだ。
しかもリメイク版では攻撃力が跳ね上がっており、オリジナル版以上の列強と化していた。ドラえもんシリーズに登場した敵対勢力では、文句無しに最強クラスの軍勢である。
メカトピア星
鉄人兵団の出身地である、意志を持つロボットだけが住む惑星国家。
元々は3億年前、人間の醜さに失望したある科学者が移り住んだ無人惑星を起源としており、彼に作られた二機・アムとイムは博士の死後も新たなロボットを作り続け、ロボットによる理想郷建国を成し遂げた。
しかし繁栄の源として頭脳に競争本能を組み込まれた結果、子孫のロボット達も互いに優れた存在、上の存在になろうという押しのけ合いをするようになっていき、次第に貴族階級、労働者階級という、博士が遠のけた人間と大差ない弱肉強食の社会ができる歴史に至ってしまった。
更に時代が進んだ近年になって「ロボットは皆平等」という思想が広まり、奴隷制度は廃止されたものの、階級と差別・被差別の概念がなくなることはなかった。
そして神に造られた者から誕生した国であることから「ロボットは神の子、宇宙はロボットのためにある」という思想に至り、今度は人間を新たな労働力として奴隷化するという目論見に発展し、その第一歩として地球侵略に乗り出すことになっていく。
『新』においては、リルルの言及しか無かったメカトピアの背景や景色についても加筆されており、現メカトピアは完全な軍事国家であるため軍人機が一番偉く、諜報員であるリルルや土木工作員のジュドは下級扱いであった。
また、心を構成する3つの星型のパーツがあり、赤は『愛』、青は『願い』、緑は『思う』とされているが階級社会となり、地球侵略に踏み切った現代ではこの緑のパーツが黄色(誰かを思う心を無くした状態)に変わっている。
そして歌や音楽などの娯楽は、貴族ら支配階級にしか許されておらず、下層階級が歌っている事がバレれば容赦なくスクラップにされる社会であった。
鉄人兵団の「人間狩り」もいわば下層階級の更に下の、国民扱いすらされない家畜を連れてくることにより労働環境を改善しようとする政策とされている。
つまりは
- 旧鉄人兵団:国民の階級制度は無くなった→民衆間の差別意識も払底されたので、奴隷のように国民を働かせることが出来なくなった→だったらその代替手段として人間を奴隷にするぞ
- 新鉄人兵団:国民の階級制度は無くなった→だが民衆の間では旧来の差別意識は未だに残っている→差別意識から目を逸らす(上見て暮らすな下見て暮らせ理論)ために人間を奴隷にするぞ
という流れになっており、しずかちゃんからは「まるっきり人間と同じじゃない」と呆れられている。
どっちの社会体制にしろ、身体能力が鉄人たちより劣る(『新』でピッポが断言している)うえに食事や睡眠も与えねばならない人間を奴隷化するのは非効率的な気もするが…。
メンバー
地球攻撃部隊総司令官
全身金色のセミに似た姿。長いマントを羽織っている。
リメイク版では容姿が全体的に派手になっていた(カブトムシに似ている)が、性格は変わらず部下を無情に切り捨て、窮地となれば自分だけ脱出するような冷酷非道な司令官である。
『ギガゾンビの逆襲』では終盤の雑魚敵ゴールドマスターとして出てくる。
巨大要塞
リメイク版に登場した鉄人兵団の移動要塞。蜘蛛のような形状をしており、足を閉じることで飛行可能。
でかい図体の割には量産型土木重機に過ぎないザンダクロス1機に投げ飛ばされ、足を捥がれて串刺しにされるなどイマイチ頼りない。
狙撃兵
最も多い部隊。ジャミラのように首と胴体がくっついており、ジェットスクランダーのような翼で空を飛ぶ。手にした熱線銃は一撃でビルを倒壊させるなど高い攻撃力を持つ。
『ギガゾンビの逆襲』では終盤の雑魚敵メタリッカーとして登場。
下級兵
全身が鋭利な突起になっている兵隊。武器を持たず、素手で襲い掛かってくる。
戦況考察
この作品での戦闘は、大長編・映画シリーズ初(にして現時点で唯一)の実質的な負け戦と言える。原作者の藤子・F・不二雄も「鉄人兵団は映画ドラえもん史上最強の敵であり、タイムマシンを使った歴史改変という反則技以外の勝利方法を思いつかなかった」と自嘲している。
終盤の決戦において、ひみつ道具をもって決死の抵抗を試みるドラえもん達だったが、絶望的なまでの数の差は覆せず完全に追い詰められてしまった。
仮に倒せたとしても、彼らは地球人捕獲を目的とした謂わば先遣隊に過ぎない。メカトピア本星には何のダメージもなく、それどころか今度は本格的な武力制圧に出る可能性もある。
※鉄人兵団は鏡地球の大都市を容易く壊滅させていたが、「隠れている地球人どもが、恐怖で飛び出してくるまで攻撃を続けろ」と言っているので、彼らにとっては威嚇程度の攻撃なのかもしれない。
リルルの決死の行動で過去改変が起こったことで鉄人兵団は消滅したものの、リルルの行動が少しでも遅れていたら、(大爆発の中心にいても身体が原型を留めていたり、深海底や太陽の至近距離にいても平然としている)ドラえもんはともかく、のび太達3人は皆殺しになっていてもおかしくなかった。
後の作品における戦闘でもドラえもん達が敵に追い詰められた事は少なくないが、いずれも状況の好転後はきっちり逆襲しており、逆転勝ちと言った方が正しいものばかりであり、逆襲もままならないままかろうじて九死に一生を得たのはこの作品の戦いのみである。
ただ、これはドラえもんが「空気砲」や「ショックガン」等の基本的な武器・防具のみを使用して鉄人兵団に応戦した結果である為、ファンの間ではドラえもんが容赦無く「ジャンボ・ガン」や「熱線銃」、「原子核破壊砲」等の強力な破壊兵器を使用したり、スネ夫が持つロボットアニメのロボットの模型を「ビッグライト」で大きくした物や「プラモ化カメラ」等で用意した現代兵器の実寸模型などを前作の戦車のように改造し、「ロボッター」や「無生物さいみんメガホン」等を使用して無人兵器にする、前作の戦車の残り2両を出撃させる、どのみち鏡世界なのだから各国の戦略原潜などを上述のように無人兵器にして核で叩く、「タンマウォッチ」や「狂時機(マッドウォッチ)」等の時間操作系ひみつ道具、「ソノウソホント」や「ウソ800」及び「しあわせトランプ」等の全知全能系ひみつ道具を使用・併用したり、極端な話、「どこでもドア」を使用してメカトピアに「地球破壊爆弾」を投げ込む等すれば、鉄人兵団相手に苦戦することなく完全勝利出来たのではないかと指摘されることも少なくない。
尤も、上記のような手段を行使すれば簡単に事件が解決して作品が成り立たなくなってしまう為、そのような指摘は野暮というものだろう(この場合以外にもひみつ道具が壊れる等の状況で同様の指摘がなされる場合もあるが)。