彗星
すいせい
天体の彗星
太陽系内の天体の種類の一つで、氷や塵でできたもの。華やかな見かけとは裏腹にその核は「石炭よりも黒い」マイナス230℃以下の冷たい天体である。軌道が太陽に近づくと氷(揮発性物質)が溶けだして塵を巻き込みながらジェットとして噴出し、コマ(大気のようなもの)や尾が大きく輝く。彗星核の性質はしばしば「汚れた雪だるま」と形容される。
多くが太陽系の周囲を周回しており、短いものでも数十年単位、長いものだと数百年単位で周回を繰り返している。
一過性の非周期彗星も存在し、実はこのタイプの方が観測された数では多い。
彗星の「氷」は「水(H2O)の氷」とは限らない
天文学的な意味での「氷」は様々な種類の揮発性物質の総称として使われる。彗星から揮発し放出されるガスには、水、二酸化炭素、一酸化炭素、アンモニアなど様々な成分が含まれている。
それぞれの物質は異なる温度(=太陽からの距離)で揮発を始め、例えば一酸化炭素の放出は多いが水は少ないなど彗星ごとに個体差があるため、彗星の明るさの予測が困難な原因になっている
彗星から放出されるガスや塵は実際には非常に希薄だが、彗星の周りの宇宙空間はそれよりもはるかに希薄で真空に近く、ガスや塵の流れを妨げるものがほぼ存在しないため、広大な広がりを持った尾が発達し、暗黒の宇宙を背景にその様子を観測することができるのである。
流星のように空を瞬時に横切ったりすぐに消えたりはしない。もちろん寿命も存在し、周回を繰り返す中で自身を構成する氷塵が一定まで融解しきると、自身の速度や太陽風の影響に耐えられなくなって砕け散る。
太陽への接近距離が近い彗星で初回の接近でいきなり崩壊して消滅してしまうこともある。
近年では大彗星と期待されながら太陽接近時に粉々に崩壊して関連グッズクラッシャーと化した非周期彗星のアイソン彗星 (C/2012 S1)が記憶に新しい。
公転周期の短い周期彗星は頻繁に観測できるので一見目立ちそうだが、揮発性物質の枯渇が早く進み、勢力が衰えるのも早く、暗く目立たない彗星になりがちである。この種の彗星としては公転周期3.3年のエンケ彗星が代表的。それとは逆に非周期彗星は太陽に接近した経験のない「新鮮」な彗星が多く、大量の揮発を生じて大彗星になりやすい。ハレー彗星は周期彗星かつ大彗星という稀有な例である。
彗星は基本的に多孔質で自己重力も非常に弱く物理的に脆い存在であり、氷が融け切った彗星は大抵が崩壊するが、運よく崩壊せずに残るものもある。これは「枯渇彗星核」や「彗星・小惑星遷移天体」と呼ばれ、もはや彗星としての活動を示すことはなく観測上は小惑星と区別がつかなくなる。
周期彗星の場合、楕円軌道で惑星の軌道を横切る軌道を取っているため、惑星と接近して重力により軌道が大きく変わることがしばしばある。その際に惑星に衝突したり惑星に捕獲されて衛星になったり、加速されて太陽系外へ飛ばされたりして周期彗星でなくなったり消滅したりすることが多い。周期彗星の数が非周期彗星よりも少ないのはこのことが一因になっている
1994年に発見された「シューメーカー・レヴィ第9彗星」は、木星に接近した際に木星に捕獲され、さらに木星を周回している間に多数の破片に崩壊して、最終的に木星に次々と衝突して消滅した。その破片の一つの衝突痕(衝突雲)は地球一個分に相当する直径にまで拡がった。
列車愛称の「彗星」
国鉄・JRグループが運行した夜行列車に付けられた愛称。天体の彗星にちなむ。寝台特急の「彗星」は1968年から2005年まで京阪神と日豊本線方面を結ぶ列車として運行された。
なお、20系・14系・14系15形・24系・24系25形・583系と国鉄が設計・新製したすべての寝台特急用車両が使用された列車である。