概要
日本国内において市販車をベースにしたレースとしてはSUPERGTもあるが、こちらは「外観だけ市販車に見せかけたプロトタイプカー」や「魔改造と呼んで差し支えのない市販車」ばかりが跋扈するカテゴリに対し、スーパー耐久は「市販車をベースにオリジナルに限りなく近い形を維持したまま製作されたレース車両」が多く参加するシリーズで、SUPERGTでは数を減らしてしまったプライベーターチームが数多く参戦するレースとして人気を博している。
近年では国内外でも人気のあるグループGT3やTCR規定などのメーカー謹製のレース車両も参戦可能になるなど、バラエティに富んだ車両が見られる数少ないレースでもある。
特徴
耐久レースの名を冠する通りレース時間が3~5時間とSUPERGTやスーパーフォーミュラと比較しても非常に長く、最低ピット回数制限も設けられる上、ピット作業時の作業人数制限もあるのが特徴。
1チームに3~5人のドライバーが登録されるが、「F1やSUPERGT、スーパーフォーミュラの出場経験者(=プラチナドライバー)」に対する乗車制限(1チームの全プラチナドライバーの合計運転時間上限、一部クラスはAドライバー登録不可)や、ジェントルマンドライバーの最低周回数(または時間)の義務付けがあるなど、クラス間での均衡を図られている。
歴史
元々は『N1耐久シリーズ』というレースシリーズで、その名の通り市販車から安全装備の装着のみが認められた「グループN(N1)規定」のツーリングカーで争われていた。
その後、冷却装置の強化を始めとする「弱点を補う改造」が認められ『スーパーN1耐久』に、エアロパーツの追加などを認可する過程でレギュレーションがグループNの範囲を外れる(所謂N2規定)ことから、『スーパー耐久』と改称された経緯がある。
改造範囲こそN1規定よりやや広く取られているものの、エンジン本体は市販車のものから消耗品以外の変更が許されておらず(バランス調整や部品の搭載位置の一部変更は可)、モノコックはアルミやカーボンなどの軽量素材の使用・外板の薄肉化等も認められない為(ドアや空力部品等は市販品であれば使用可)、市販車の名残を色濃く残すレース車両の様式が今日まで受け継がれている。
2018年にはスーパー耐久としては10年ぶり、開催地の富士スピードウェイとしても半世紀ぶりの24時間レースが開催された。
クラス分け
FIA(国際自動車連盟)やその関連組織によってホモロゲートされた車両を除いて、原則的に排気量と駆動方式によって大別される(ガソリンターボ車は排気量に1.7のターボ係数をかけた数字でカテゴライズ。)
ST-X
グループGT3規定に準拠したクラス。公認取得期間を超過した車両でも参戦可能。
世界的に隆盛を極めているGT3カテゴリから比較すると参戦チームは多くないものの、非常に多くのメーカーが出揃っている。
直近の参戦車両:
レクサス・RC-F 日産・GT-R ホンダ・NSX メルセデス・AMG GT3 アストンマーチン・ヴァンテージGT3 ポルシェ911GT3 マクラーレン・720S
ST-Z
グループGT4(SRO-GT4)規定に準拠したクラス。競技専用車ながらアマチュア向けの低価格車両で、スパ24時やニュル24時などでも採用されているカテゴリ。
日本では同規定を採用するレースが殆ど存在しないこと、2021年からはスープラGT4が投入されたこともあり、参戦チーム数はスーパー耐久全体でもトップクラス。
直近の参戦車両:
トヨタ・GRスープラGT4 メルセデス・AMG GT4 ポルシェ・718ケイマンGT4 BMW・M4 アストンマーチン・ヴァンテージGT4 アウディ・R8 LMS ジネッタ・G55
ST-TCR
世界スポーツコンサルティング(WSC)が制定するツーリングカー規定、「TCR」規定に準拠したクラス。
新設当初はアウディ・RS3、フォルクスワーゲン・ゴルフ、ホンダ・シビックタイプRなど参戦メーカーが多かったが、同規定のレースシリーズ「TCRジャパン」の開催以降は参戦台数が減少傾向にある。
ST-Q
2021年シーズンから新設された、スーパー耐久を運営するスーパー耐久機構(STO)が認めた「メーカー開発車両、または各クラスに該当しない車両」がカテゴライズされる。この出自から同クラスは賞典外となる。
新設初年の開幕戦にトヨタワークスのROOKIERacingから「グループGT4規定のスープラGT4先行開発車両」、第3戦富士24時からは「水素燃料エンジンのカローラスポーツ」を、最終戦岡山ではマツダが「100%バイオディーゼル燃料のマツダ2」がスポット参戦。
2022年シーズンからは上記マツダ2のシリーズ参戦の他、「バイオマス合成燃料を使用したトヨタ・GR86/スバル・BRZ」の参戦、更にチューニングメーカーのエンドレスアドバンスが「前シーズンまで使用していたAMGGT4に自社製パーツを組み込んだ開発車両」を投入して参戦する等、自動車メーカーとそれを取り巻く企業による『走る実験室』として今後も目が離せないクラスである。
ST-1
後述の「ST-2~5」のいずれも該当しないクラス。
概ねST-2とST-3の排気量を上回る車両が登録される傾向があるが、同時に該当する車両が少なく、車両開発のコスト高からより上位のST-X・Zに移行するチームもあり、参戦チームは少なめ。
直近の参戦車両:
トヨタ・GRスープラ KTM・X-BOW GTX BMW・M2CS racing ポルシェ・911カップカー アストンマーチン・ヴァンテージGT8R
ST-2
排気量2401~3500ccの四輪駆動車で争われるクラス。2018年からは前輪駆動車も追加された。
このクラスはベース車からして該当する車両が少なく、永らくランサーエボリューションとインプレッサの2強が鎬を削り合っていた。
一時期はインプレッサすらフル参戦しなくなりランエボワンメイクの様相を呈していたが、2018年シーズンレギュレーション改定によりFF+ディーゼルターボのアクセラが参戦。2019年にはFK8型シビックタイプRがスポット参戦、2020年にはGRヤリスが初参戦するなど、少しずつ勢力図が変わりつつある。
2022年シーズンからは排気量下限が変更された。(2021年までは2001~3500cc)
直近の参戦車両:
三菱・ランサーエボリューション スバル・インプレッサ スバル・WRXSTI マツダ・アクセラSKY-D ホンダ・シビックタイプR(FK8型) トヨタ・GRヤリス
ST-3
排気量2401~3500ccの後輪駆動車で争われるクラス。
下位クラスの扱いを受けて入るものの全体的に排気量が大きく、駆動部品も四輪駆動車より少ないことからラップタイムではST-2を上回ることが少なくない。
国内外を問わず該当車輌は少なくないはずだが参戦チームが慢性的に少なく、特認車両を含めても参戦車両もあまり多くはない。
2022年シーズンからは排気量下限が変更された。(2021年までは2001~3500cc)
直近の参戦車両:
トヨタ・マークX GRMNトヨタ・クラウンRS レクサス・RC350 日産・フェアレディZ(Z34型)(特認車両)
ST-4
排気量1501~2400cc(駆動方式不問)の車で争われるクラス。
当初はホンダ・インテグラタイプR(DC5型)の事実上ワンメイクであり、その後もシビックタイプR(FD型・FN型)やS2000などが参戦していた。
このクラスは該当車輌が減少傾向ではあったが、トヨタ・86とスバル・BRZが登場するやホンダ車を次々と駆逐してしまい、2021年時点では遂に86のワンメイクになってしまっている。
2022年からはGR86/2代目BRZ発売に伴い、排気量上限が2400ccに拡大された。(2021年までは1501~2000cc)
直近の参戦車両:
ホンダ・インテグラタイプR(DC5型) トヨタ・86/GR86 スバル・BRZ
ST-5
排気量1500cc未満(駆動方式不問)の車で争われるクラス。
このクラスに限り「生産されてから10年以内の車両」のみ参戦可能という条件がある。
トヨタ・ヴィッツやホンダ・フィットなどのコンパクトカーや、特認車両のマツダ・ロードスターも参戦しており、最下級カテゴリながらもスーパー耐久で一二を争う参戦チーム数を維持している。
直近の参戦車両:
トヨタ・ヴィッツ トヨタ・ヤリス ホンダ・フィット マツダ・デミオ&マツダ・2 マツダ・ロードスター(特認車両)
公式動画
レース決勝日はYouTube公式チャンネルで無料配信もしている。