「異端の魔術師は……排除する……」
プロフィール
概要
『Fate/strange Fake』に登場するアサシンクラスのサーヴァント。
ハサン・サッバーハになることが出来なかった少女。名無しの暗殺者。
故に本来のアサシンたるハサンの代名詞とも言える髑髏の仮面を付けておらず、ローブから素顔を覗かせている。
死徒にして魔術師のジェスター・カルトゥーレによって、スノーフィールドで行われる「偽りの聖杯戦争」に召喚されるも、彼が聖杯を求める存在であることを確認すると、突如マスターである彼を殺害、歴代の頭首たちを惑わした聖杯戦争そのものを破壊するために独自に行動を開始する。
召喚後しばらくは本来の霊衣である教団の民族衣装に身を包んでいたが、セイバー陣営と(一応の)同盟を組んでからは、下記イラストの様な服へと装いを変えた。
真名
暗殺教団の中で歴代18人のハサンのザバーニーヤ全てを会得した人物。若い頃に信仰の証としてハサンの名を求め、様々な苦難に耐えて努力を積み上記の偉業を成した狂信者。
通常なら1つ習得するのに一生を修行に費やさねばならない奥義を、たった数年で18個も習得してしまった才能は素晴らしかったが、"オリジナルの業を生み出せなかった事"や"教団の者すら恐れたその才能と狂信振り"、そして後述する性格等数々の理由からハサンの座に就かせてもらえず、そのまま歴史の闇に消えてしまった人物(この時代わりに19代目となったのが第四次聖杯戦争のハサン)である。
しかし、彼女は誰かを羨む事も憎むこともしなかった。全ては自分の責任だと彼女は己を恥じた。過去の長達の御業を穢してしまった未熟な己を恥じただけ。自分以外を恨む事無く、ただ己を磨き続けた。その果てに何も得られなかったとしても。
今回の参戦においても、過去のハサン達を恨む事無く、彼らを惑わした異教の儀式である聖杯戦争を激しく敵視している。
人物
一人称は「私(わたし)」。
前述の様に彼女は"狂信者"であるが、当の本人はそれなりの良識を持ち合わせた人物であり、決して残虐な行為に手を染める事は無い。実際に、聖杯戦争に無関係な人間を戦いの巻き添えにしないよう気遣いを見せたり、偶然とはいえアヤカの命を救い、年端も行かぬ少女の自己犠牲を目の当たりにし、そんな生き方を選ぶような育て方をした両親に対する義憤から怒声を上げる、形はどうあれシグマの過酷な過去を静かに聞いた後に慈愛に満ちた眼を向けるなど、狂信者である事を除けばアサシンというよりは義賊的な性格をしている。
また、その気遣いは本来相容れない存在である魔術師や異教徒にも向けられており、小説版第2巻でスノーフィールドに入り込んでいた魔術師たちに接触した際にも殺害したのは己に明確に殺意を向けた者だけであり、物見遊山気分で入り込んできた者には忠告だけして見逃し、自分を懐柔して聖杯戦争に参加しようとした者も舌を刺す程度に済ませている。同巻で登場した異教徒の神父に対しても中立なら攻撃を加えないと判断している。
なお、これらの明確な排除対象以外への気遣いは、「彼らの中に同胞がいるかもしれない」「今後心を改めて改宗し同胞となり得る存在がいるかもしれない」と言う判断から来るものである。
更に戦闘においても、暗殺集団の一員でありながら、不意打ちや闇討ちではなく真っ向からの奇襲等を好むなど、どちらかと言えば「暗殺者」と言うより「俊敏な戦士」という言葉が似合う。
実は、彼女がハサンになれなかった理由の1つがこの性格であり、もしも彼女が組織の長になったら組織全体が「暗殺集団(隠れしもの)」と言うあり方を失い強制的に表舞台に引きずり出されかねないと組織の上層部が判断したのである。
以上の事からか、現状『Fateシリーズ』で召喚されてきたハサンの属性が皆「悪」であったにもかかわらず、彼女は「善」に属している。
能力
歴代ハサンたちの18もの「ザバーニーヤ」を習得している為に様々な状況に対応する事が可能(唯一習得していないのが、同期にあたる19代目のハサンのザバーニーヤ)。
しかし上述の通りあまりにも強すぎる自負と崇拝から、一切の戦況や勝算を無視して正面から突っ込んでしまう欠点があり、基本的に言う事も聞かないため戦略的な運用はまず不可能。
同様に宝具である「ザバーニーヤ」も全力で使いまくる故、マスターの魔力負担は極めて重くなるという、まるでバーサーカーのような性質のアサシンとなっている。
ただし劇中の描写を見る限り、自らの状態や周囲の状況を的確に理解・判断する能力自体はむしろ相当に高く、同時にマスターも後述の通りクソ野郎だったため、それらを分かった上で無視しているといった傾向が強い。
ただ、縦横無尽に伸ばしつつ操作した髪の毛による切断や相手を操る歌声など、悪用すると無差別殺戮などに繋がりかねない宝具もあるため、聖杯戦争と無関係な者たちを巻き込む事にあまり頓着がないうえに、彼女への尊厳破壊や心中などをしようと躍起になっているマスターの令呪で強制使用させられた場合の危険度は無視し難い。
ステータス
マスター | 筋力 | 耐久 | 敏捷 | 魔力 | 幸運 | 宝具 |
---|---|---|---|---|---|---|
ジェスター | C | B | A | C | D | B+ |
保有スキル
気配遮断(A−) | アサシンのクラス特性。自身の気配を消す能力。完全に気配を断てばほぼ発見は不可能だが、攻撃態勢に移るとランクが大きく下がる。マイナスなのは気質故か。 |
---|---|
狂信(A) | 特定の何かを周囲の理解を超えるほどに信仰することで、通常ではありえぬ精神力を身につける。トラウマもすぐに克服し、精神操作系の魔術に強い耐性を得る。 |
宝具
幻想血統(ザバーニーヤ)
- ランク:E〜A
- 種別:対人・対軍宝具
- レンジ:−
- 最大補足:−
肉体を自在に変質させ、過去に紡がれし18の御業を再現する能力。
実際は過酷な肉体改造なども行われていたが、英霊化にあたり肉体を自在に変質させる形となった。
オリジナルの御業と比べ威力が上か下かはケースバイケースとなる。
また、ウォッチャー曰く、新しい宝具を使う際に一瞬動きが止まり、隙ができるとのこと。
妄想心音(ザバーニーヤ)
- ランク:C
- 種別:対人宝具
- レンジ:3~9
- 最大捕捉:1人
『呪腕』と呼ばれたハサンの宝具。
オリジナルが自身の右腕をシャイターンのものに置き換えていたのに対し、こちらのアサシンは背中に移植して第三の腕としている。
空想電脳(ザバーニーヤ)
- ランク:不明
- 種別:不明
- レンジ:不明
- 最大捕捉:不明
敵の頭を爆弾に作り変える。
第三次聖杯戦争のハサンの宝具だが、『hollow ataraxia』で描かれた「繰り返される四日間」において初めて描写された。
夢想髄液(ザバーニーヤ)
- ランク:不明
- 種別:不明
- レンジ:不明
- 最大捕捉:不明
『strange Fake』において初めて存在が確認された宝具。何代目のハサンの宝具かは不明。
可聴領域を超えた歌声で相手を操る業。オリジナルの業を超えた力を持つ。
大人数を対象とした場合、脳を揺らし魔術回路を暴走させる等の効果を持つ。
一人に対象を限定すれば、並のサーヴァントの膝をつかせ、人間ならば脳そのものを支配して操る事ができる。
更に場面描写から、人体発火を誘発させる効果もある模様。
狂想閃影(ザバーニーヤ)
- ランク:不明
- 種別:不明
- レンジ:不明
- 最大捕捉:不明
髪の毛を自在に伸縮させて操り、相手の捕縛や切断などを行う業。
実際の使い手は、髪の毛一本一本を糸の如き細さに変質させ数里先から誰にも気付かれることなく相手の首を跳ね飛ばす事も可能だったらしい。
『Fate:Lost Einherjar 極光のアスラウグ』において、長く伸ばした髪を己の肢体に巻きつけ髑髏面を被る女のアサシンが登場しており、この宝具のオリジナルのハサンである可能性が高い。
断想体温(ザバーニーヤ)
- ランク:不明
- 種別:不明
- レンジ:不明
- 最大捕捉:不明
己の皮膚を『魔境の水晶』の如く硬化させ、銃弾をも弾く護りを得る業。
妄想毒身(ザバーニーヤ)
- ランク:C
- 種別:対人宝具
- レンジ:0
- 最大補足:1人
『静謐』と呼ばれたハサンの宝具。
本来は、あらゆる体液、爪や皮膚、吐息すら含め、己の全てを猛毒とする業。また、自身の耐毒性を高める効果もある。
彼女の場合は無差別に被害が広がることを恐れたため、毒の濃度はオリジナルより低下してしまっている。自身の血に毒を集中して、一時的に使用する程度に留まる。
瞑想神経(ザバーニーヤ)
- ランク:不明
- 種別:不明
- レンジ:不明
- 最大捕捉:不明
魔力・水・風・電気などのエネルギーの流れを完全知覚する業。
このザバーニーヤのみ、『そのような業を使うハサンが居た』という伝聞があるだけで、本当に同一の能力なのか、そもそもこの能力は実在したのか等不明な点が多い。
ただ、『strange Fake』にはこの業を使用していたと思われるハサンが登場しているが……?
非想巡霊(ザバーニーヤ)
- ランク:不明
- 種別:不明
- レンジ:不明
- 最大捕捉:不明
自身の周囲に色の濃い霧を纏いそれを媒介に幽精(ジンニーヤー)を具現化、使役し攻撃を行う業。
幽精は巨獣や大蛇、美女に男性の巨人など様々な種類が存在する。
なお、幽精たちは自己主張こそしないものの、自我があるらしく、彼女はこの宝具の始祖への敬意と幽精への情故に、この宝具による現出・使役などを“支配”呼ばわりされることを忌み嫌っている。
この強制や支配ではなく、自由意思に近い形で従っている点は、よくもわるくもマスターに服従しきれないリスクになるが、今作の偽聖杯戦争の場合、召喚者ジェスターの令呪による尊厳破壊を不発や不完全に終わらせられるメリットに成り得る。
ただし、ただでさえ英雄王を竦ませられるうえに、使い手の狂信すら僅かに上回る程の咆哮を放てる真バーサーカーが相手の場合、流石に分が悪い。
彼女と契約する場合について
彼女は考え得る殆どのマスター/魔術師と相性が悪いと言う、ある意味で最悪のハズレサーヴァント。
今までも扱いにくいサーヴァントは多くいたが、彼女はその比ではない。
「貴様が聖杯を求める魔術師か?」⇒「はい」⇒「なら死ね」
……となるため、通常のマスターならば即座に脱落してしまう。
本編のジェスターのような不死の存在であるならば、とりあえず殺される事も劣化する事もない。しかし、言う事を聞いてくれないので、まともな使用は不可能。
聖杯を求めていない、「聖杯戦争に巻き込まれた一般人」ならば性格的な相性はそこまで悪くないが、結局「聖杯を求める魔術師を過剰敵視している」事に変わりはない。そのため、Fate歴代主人公(衛宮士郎や岸波白野)がやったような同盟等を組む手は取れなくなる。
葛木宗一郎や雨生龍之介のような一般人かつ単独行動を行うマスターであって初めて、まともな運用が可能になる。
しかし、そういった一般人の場合は魔力の保有量が少ないため、「ザバーニーヤ」連発によって贅沢に魔力を消費する彼女とはやはり相性が悪い。
また雨生のように、無辜の人間を巻き込むことに頓着が無いマスターも、彼女の倫理観に反するためアウト。
つまり、これらを踏まえて考えると、彼女と相性の良いマスターは「聖杯戦争に参加しながら聖杯を求めていない」「聖杯を求める人間との同盟が不要である」「しかし魔力は十分に持っている」「そして多少なりともまともな倫理観がある」と言うのが最低条件となる。ハードル高すぎるだろ。
ちなみに、この条件を満たすマスターとして挙げられるのは、他ならぬ本作の主人公だったりする。また、聖杯戦争の崩壊そのものを狙っているティーネ・チェルク、生存本能から無意識にランサーを呼び出した“銀狼の合成獣”、そもそも参加している自覚すらない繰丘椿、そして途中で行動を共にした末に「聖杯戦争のシステムそのものの破壊」を目的に定めたシグマも候補となる。同作内で適性者が多いのは、因果としか言いようが無い。
さらに『Fate/Grand Order』においても協力的に動く可能性が高いと推察されている。
人類史の焼却/白紙化は「山の翁」の伝承の死滅も意味する為であり、加えて大半のケースでの目的が聖杯の"入手"ではなく"無力化"となっている主人公たち(特にノウム・カルデア以降)との連携も難しくないと思われるからである。
実装にあたっては特殊すぎる宝具のバランス調整や後述の「男なんぞに渡してなるものか」が原因のマイルーム台詞の変更が大変になりそうだが。
しかし、彼女以上に外れのサーヴァントも呼べるカルデアなら彼女も普通に呼べるのかもしれない。
関連人物
生前
同期にしてハサンに選ばれた暗殺者。
あまりにも特異な為、彼女は彼、あるいは彼女の技を模倣できていない。
Fate/strange Fake
ひょんなことから共闘することなった魔術使い。
つたないながらも人生の先輩として彼に助言をしている。
一応、契約したマスター。
性格、在り方、目的など、あらゆる意味で相性が悪いため敵対している。
その他
高潔だが良くも悪くも非常に真面目で甘い英霊つながり。(『Zero』版の)本来のマスターとは内面の相性が最悪である一方、マスター代行者とは相性が良好な点・方向性こそ違うがロボット要素がちらつく好青年と関係が親密になる点・魔力とエンゲル係数の違いこそあるが、消費が嵩み気味な点でも共通している。
ただ、あちらのマスターが行っている尊厳破壊は、それ自体を目的として行っているものではない。そのうえ、接し方も、こちらは鬱陶しいほどに多弁かつしつこいストーキングであるのに対し、あちらは徹底した無視である。
余談
名前がないため、紹介文などでは便宜的に「狂信者」と呼ばれており、SNSをはじめとしたネット上ではそこから派生し「狂信者ちゃん」等と呼ばれている場合が多い。
ただし、彼女というキャラクターは知っていても、容姿については意外と知られておらず、SNS等では彼女の素顔を描いたイラストをその絵師のオリジナルキャラだと誤解されている事が、しばしば見られる。
これは小説版の挿絵では漆黒のフード付きローブを羽織った上で、口元も隠した姿でしか掲載されていないためであり、現状、公式に彼女の素顔が描かれているのは漫画版のみである。
その漫画版においては、腰元まである黒髪を二本の三つ編みで垂らした美人として描かれているが、いずれの場面においても大体鋭い目つきをしている。
余談だが、漫画版単行本の最後にあるおまけイラスト(『Fake』のキャラたちが楽しく戯れているあれ)に登場する彼女をよく見てみよう。何処とは言わないがしっかりと”ある”のが、どの巻のおまけイラストでも確認できる。
作者の成田良悟氏、奈須きのこ氏お気に入りのキャラクターらしく「男なんぞに渡してなるものか」という理由からヤツは「本当はオンナノコ」という設定にされた。
成田氏のtwitterによると、ハサン達に焦点が当たった『Fate/Grand Order』メインシナリオ第1部6章にもし彼女が登場した場合、「基本ずっと平伏してる」、「それ以前に序盤の段階で何が何でもトリスタン暗殺するウーマンになって円卓に突撃する」、「序盤に居合わせてない場合、多分どこかの村で凄い黙々と支援を続けてる感じ」との事。
※ 情報出典⇒成田氏のツイートその①、ツイートその②
演じるLynn女史はアニメ版『ロード・エルメロイⅡ世の事件簿』のフェイ以来の出演となる。
関連タグ
Fate/strangefake アサシン(Fate) サーヴァント
幸運E:そもそも暗殺教団からハサンとして認められなかったため、幸運値はDでも高すぎるくらいとのこと。
召喚したマスターが変態的かつ性悪なのも、薄幸ぶりに拍車をかけている。
ブラック☆スター:俊敏で神に対して並々ならぬ感情を抱いている暗殺者にして、相方を非常に選ぶうえに、目立つ挙動がかなり多い問題児繋がり。根は非常にまっすぐな点・相方が序盤から規格外の技能を持っているが、その技能を悪用する気が殆どない点・楽器演奏が得意な主人公と仲間になる点でも共通している。
ただし、神に対して向ける感情の方向性は異なるうえ、こちらの(代行的な)パートナーがスタミナに特出しているのに対し、あちらのパートナーは多様性と器用さに特出している。
死想顕現界域トラオム:彼女のように無名のサーヴァントが数多く登場するシナリオ。