「メッチェ…優しいな、貴公は…」
概要
ザンスカール帝国ラゲーン基地の司令官。階級は中佐。22歳。
ギロチン執行人の家系出身で、自らもギロチンによる処刑を行っていた。常にムチを携帯している。
モビルスーツのパイロットでもあり、主な搭乗機はリカール(指揮のみ)、ザンネック、ゲンガオゾなど。
人物像
ベスパに所属する女性軍人。
軍人らしく勝ち気な性格で、ギロチン執行人としてはオイ・ニュング伯爵の拷問時には両目にテープを貼って無理矢理開かせ猿轡を付けてLMの情報を吐き出させようとするなど非情でドSな人物。
しかし本人も若いため、敵対組織の挑発にあっさり乗っかってしまう短気な面がある。
その一方、普段は面倒見の良い部分も持っている。
不祥事を起こしたクロノクル・アシャーを悟し、ある街を訪れた時に自分を死んだ姉と間違えたスージィにチョコレートパフェをご馳走したり、ウッソ達にも戦場になるから街から逃げるようにと警告する等、子供を戦争に巻き込む事を嫌う良識的で慈愛の精神を持つ一面も存在した。
腹心であるメッチェ・ルーベンス(CV:森川智之)とは最高のパートナーとも呼ぶべき間柄で、序盤ではファラの乗るリカールのパイロットを務めた。
劇中での活躍
物語には第1話から登場しているが、時系列的な初登場は3話から。
序盤は同じくラゲーン配属となったクロノクル・アシャーがテストパイロットを務める予定だったシャッコーを鹵獲されてしまう大失態をやらかしてしまった件に振り回される羽目になり気苦労の絶えない人物だった。
そんな中、ゴッゾーラのLM基地強襲のどさくさでクロノクルがカテジナ・ルースとオイ伯爵の誘拐に成功。
民間人のカテジナは見逃された一方、オイ伯爵はLMのリーダー格として拷問にかけたが、この時伯爵の挑発に乗った事で無断でギロチンの刑に掛けてしまう。この事は軍内部でも早々に問題となった。
その後は一般人を装い街を放浪し、上述の通りLMの子供達と邂逅するなどしていたが、アーティ・ジブラルタルでLMと運悪く再会。再びリカールで何度か戦火を交えることとなるが、オリファー・イノエとマーベット・フィンガーハットの乗るVガンダムとの交戦に敗れ、メッチェの気遣いで脱出ポッドで自分だけは逃がされクロノクルのトムリアットに回収されたまま機体は爆散、メッチェは戦死してしまう。
そのまま宇宙へ向かったファラはタシロ・ヴァゴ大佐にギロチンの件を咎められ、宇宙漂流刑に処されてしまった。
「くっそおおおおおおおおおお!」
この話がVガンダムの舞台が宇宙に切り替わる15話で、彼女もそのまま行方不明になるかと思われたが…
戦場のファラ
物語も終盤に入った40話。故郷のカサレリアに戻ったウッソの休息も束の間、不穏な鈴の音とともに、超高空からお皿に乗った謎のモビルスーツがラゲーン地区を攻撃。リガ・ミリティアも交戦し、一度追い払うことには成功する。
この時点ではパイロットは誰なのかは分からなかったが、シャクティはウッソの自宅地下の本棚に向かい「鈴はギロチンの家系が身につける風習がある」という情報を得る。
その情報から謎のMSに乗っていたのは『あの女』ではないかという疑惑をかけながら、謎のモビルスーツ迎撃のためLMは宇宙に上がり、物語は41話へ。
「んっふふふ…寄って来る寄って来る。ハチがミツに寄るように上がってくる。ギロチンの家系がつけなければならない鈴がザンネックの鈴になる。その鈴がマシーンの動きの周波数に連動してあたしの頭の中に敵の姿を感じさせるんだよ」
やはりファラでした。
宇宙漂流刑から2日目、すでに精神的限界まで疲弊していたファラは所持していたナイフで自殺を図ろうとした既の所で、タシロの部隊に救出されていた。実はタシロは元からファラを救助する予定で、いずれカガチから組織のトップの座を奪うために行った芝居だったのである。
タシロ部隊に救出されたばかりの頃は時はまだそれなりに正気だったが、「周りの大人達の都合ごときに自分は宇宙漂流刑にかけられた」理不尽な事実から性格が完全に破綻してしまい、顔も大分老け込み、さながら狂人のように変貌してしまう。
復帰後はタシロ直属の部下となり、全身にギロチンの家系であることを示す鈴を付けるようになる。
そして彼女の復帰後の狂いっぷりは
- 宇宙漂流刑前はまずしなかった顔芸を連発する。※22歳です
- ピピニーデンを『若造』呼ばわりし、ピピニーデンがLMを倒したらその後明確に「叩く」とまで宣言する。
- ザンネックキャノンの射軸に味方兵もいるにもかかわらずキル・タンドンに撃てと強要。
- キルをザンネックのビームを細く絞りすぎた(『メガ粒子砲は粒子一つに直撃されても人間は即死(=味方だって簡単に死ぬ)だから』という至極当然な理由なのだが)のを理由に『お前はメッチェの代わりにもならん』と射殺。 ※そもそもファラの要求自体が滅茶苦茶であり、生前のメッチェどころか漂流刑前のファラ本人でも多分やらない。
- キスハールのリグ・シャッコーが顕在なのを見て安堵するカリンガに『白いやつは何でも使ってくるんだ。敵のモビルスーツを使うなど得意なところなんだよ』と対立煽りに持ち込む。
- ウッソを執拗に追い回し、油断しているシャクティを高笑いしながら誘拐する。
- シャクティをアドラステアに連れてくシーンも中々に狂気。「んふふ…姫様…姫さんか…姫さんや…あははははは!」
と、後のカテジナにも匹敵するほどだった。※カテジナが我々の良く知るカテジナさんになるのはファラ退場後である。
その圧倒的なプレッシャーでウッソらを苦しめるが、エンジェル・ハイロゥ攻防戦に於いてウッソとの交戦中、援護に来たマーベットのお腹にオリファーの新たな生命を宿していることを察知し、これに動揺したところをウッソに撃墜され、命を落とした。
死に損ないのファラ
終盤の狂いっぷりが何かと目につくファラであるが、彼女が特に悪意ある態度を見せたのは
- 『最高のパートナー』だったメッチェには到底及ばない新たなパートナーのキル
- ウッソと生命線のような関係にあるシャクティ
- ピピニーデンと最良の腹心とされているルペ・シノ(実際は違ったが)
- 戦後に結婚する予定だったカリンガとキスハール
と「仲睦まじく見えている男女」にまつわるものばかりで、いずれも「二人の間柄を壊そうとしている」ような意図が見られる。
それら言動からは『メッチェがもうこの世にはいない喪失感』の裏返しの感情が読み取れ、どこか物悲しさを感じさせる。実際の所、ファラが狂ったのは宇宙漂流刑によるいざこざだけではなく、メッチェを失い自身の存在意義を失ったからではないか?という説も濃厚になっている。
刑から生き延びた彼女は「死に損ない」と陰口を叩かれていたが、本人こそが死に損ないである自覚があったからこそ自分の都合だけで刑にかけたタシロに恨みもしなかったのかもしれない。
そのような一人の女としての複雑な感情をウッソから「あなたは女性でありすぎたんです!」と看破され、倒された後は鈴の音から開放され穏やかな顔で、他の女性キャラよりかは救いのある最期を迎えた(いかんせんこの作品は女性であろうがビームで全身を蒸発させられたり、全身を強打して命を落とす女としてどころか人として扱われないような末路のキャラが非常に多い)。
ファラ最期の言葉は「メッチェ…今行くからね…」だった。
小話
- TVシリーズでは明言されていないが、復帰後の狂いっぷりやサイコミュ兵器搭載型のザンネックやゲンガオゾといったMSを乗りこなす描写から、小説版やゲーム等では強化人間として扱われることが多い。
- さらには小説版では明確にタシロの愛人として書かれているなどさらにおぞましいことになっている。
- 演じる折笠愛氏は、ネス・ハッシャーも演じている。