概要
カルデアは大規模特異点『トラオム』にて大きな犠牲を払い、信じられないモノを目撃した二日間のインターバルを置いた後に南米異聞帯に向かう予定であった。
しかし、若きモリアーティが餞別として残した映像記録により、異星の神の目的が今の自分にとっての不確定要素を総て潰せる新たな体として、TYPE-MOON世界における物理最強生物『ORT』と融合する事だと判明した。
『異星の神』がORTとの融合に成功すれば、妖精國で鋳造された聖剣のエッセンスから作られた対『異星の神』用の決戦兵器たる「人理定理・未来証明(ヒュームバレル・レイプルーフ)」さえ通用しなくなるらしく、カルデアに逆転の可能性は無くなる。
シオン曰く、現在のカルデアの戦力をレベル50とするなら異星の神はレベル1000であり、ORTと融合すればレベル10000になるという。その為シオンから見てみれば「する必要のない戦力増強」であり疑問を持たれたほど。
したがって南米異聞帯への突入は大至急案件になった。
そしていざ到着したこの異聞帯は、到着直後の映像でそもそも人類の生存圏ではないとわかるものだった。
地上部分
シオンの見立てである「文明が死に絶えた世界」どころではなく、現在進行形で噴火する無数の火山と、空を覆いつくす黒雲から地表に降り注ぐ無数の雷で構成された荒野。まるで天変地異で全生物が絶滅した直後のような状況。ゴルドルフの第一印象は「火山の冬、異聞帯と言っても限度がある」シオンからは「生物圏(バイオスフィア)1とはとても呼べない。異聞帯が『打ち切られた人類史』だとしてもこれは逸脱しすぎている」
さらにその地表の輪郭の形状は、地球上の全大陸がひとまとめになった「超大陸パンゲア」そのものを形作っていた。これは汎人類史でいうところの6600万年前にあたる陸地の形状である。
したがって人類史の可能性としてこんな世界があることを疑うのは当然であり、汎人類史では人類の始祖が600万年前に誕生したとされるため、人類が誕生する素地が最初から成り立っていない。
原因は太古に衝突した隕石であり、地表が焼き尽くされてこのような風景になった結果、生物たちは避難することになった。しかし、同じく隕石落下が契機となった第一異聞帯と比較してなお、地域は6600万年が経過した現在に至るまで隕石落下当時と同じ天変地異が続いているのは明らかな異常事態である。
そして敵対者の警備体制は、ストーム・ボーダーの来訪だけでも確たる異常と判断した「異星の神」が自らやってくるというものだった。
偶然上機嫌だからという理由で直接攻撃こそされなかったが、上機嫌な理由は人類の最高峰とされるグランドサーヴァント7騎を倒したためである。
そのうえ、主人公はとある理由でマスターとしての資格を喪失することになり、一切の令呪が使えなくなる(マスタースキル欄は禁止されていない)。そのうえ、この影響で一度に召喚できるサーヴァントの数に著しい制限が加わるため、苦戦は免れないだろう。
地下空洞「ミクトラン」
『黄金樹海』とも呼ばれる。地下に広がる筒状の縦穴構造をした世界であり、重力が側面(筒の壁部分)に対して働いているという、宇宙コロニーに似た仕組み。
汎人類史の常識では「地表に見える」かのような熱帯雨林もその一部。その全土は百万㎢の広さを持ち、下方向への距離は1000㎞以上。
もはや汎人類史の地質学は根本的に役にたたない。
汎人類史では地下に掘り進めた最高記録が12㎞、大陸地殻さえ40㎞、そのさらに地下はマントルになっているとされるため、ここは真に地下の世界と言えよう。
ゲーム中のワールドマップも、ジャングルで出来た筒を通り抜けるような構造になっている。そして、この筒を先に進むほど「異なる層へ渡る」ことを意味する。作中では先の層へ進むことを「下の層へ行く」と表現しているが、重力の方向は下には向いてないので、下に進むといってもそれは「落ちる」という感覚ではない。例えるなら、上は「北」、下は「南」のように言い換えればわかりやすいかもしれない。
ジャングルの気温は昼間だと汎人類史の砂漠より過酷で、礼装の冷却機能を最大にしても体感温度38℃を記録するほど。
ただし人工天体としての太陽が存在するため、地底世界とはいっても汎人類史の地上同様に外は明るい。太陽の祭壇でエネルギーを蓄え、全ての層を一巡する形で各地を照らしたのちに再び祭壇へ戻ってくる循環を繰り返す。
樹海一辺倒ではなく平原や都市も存在するが、筒のところどころが「冥界」と呼ばれるエリアになっており、磁場が歪んだミクトランの異常地帯。そのうえ死者が闊歩する試練の層のため、外来者が通るにはさらに大きな危険を伴う。
「冥界」は、クリプター・デイビットやカルデア陣営がここを訪れた影響か、周囲の地形が大きく変わり、以前と比べて突入することさえ困難な道のりになっている。同時に汎人類史の影響を受けており、カルデア陣営にとっては召喚のルールが緩くなる。この空間は編纂事象かつ剪定事象という状態になっているので、人理定礎値が常に変動し続けている。
層
9つの層は以下の通り。
- トラロカン。地上への天井が絶壁になっている。
- 赤の冥界トラトラウキ。終わりなき河があり、巨大イグアナが住む。デイビッドが連れてきたテスカトリポカによって魔境と化している。それ以来、冥界は死者が完全なる死を迎えるため踏破させられる試練の地となった。試練を乗り越えたという自覚がない限り克服できないので容易な踏破はできない。
- 黄金都市チチェン・イツァー。太陽神ククルカンに守られた、実りある大平原を持つ都市がある。
- 白の冥界イスタウキ。刃と風の谷であり、骨捨て場。
- トゥーラ。大地の血管であり、血と鳥の湖。メヒコシティという都市がある。
- 青の冥界ソソアウワキ。銀河砂丘にして、真空雷園。
- 天文台メツィティトラン。歌うイルウィカトル。ミクトランの天文台で、ここの歴史を知ることができる。
- 黒の冥界ヤヤウキ。太陽なき地底山脈。ここから先は生物を死に至らす霧に満ちているため、太陽が360回目の休憩に入ってから再起動までの5回期の間だけ晴れる隙を狙うしか通れないらしい。
- 恐怖の地シバルバー。大樹たるセイバの麓。
住民たち
最初の上陸地点は汎人類史の風景にも通ずる熱帯雨林だったのだが、住民の風貌は根本的に違っていた。
- 恐竜人類「ディノス」
ここでは進化した恐竜である「ディノス」が、世界の運営を任された霊長として、汎人類史での人類にあたる生命体として暮らしている。地表が焼き尽くされた結果、地下に移住して現在に至る。
翼竜や首長竜といった本来は恐竜ではない古生物を起源とする個体も存在するが、それらの古生物も含めて彼らの祖先を便宜上、『恐竜』と表現している。
大多数のディノスは、知識欲を持たない。肉体がそもそも頑丈であるため脅威がなく、人類と違って知性で肉体の脆弱さを補う進化の必要に迫られなかったからである。たとえ老いても死ぬまで身体能力が衰えることがない。ただし知性そのものは高く、必要とあれば知識を運用段階へと迅速に活用する。
ディノスは「満たされた存在」なので、色々と不足している(具体的には肉体を動かす栄養や精神を充足させる幸福など)汎人類史の人間とは異なり、奪い合いや争いをすることがない。そのため露店では必要な商品を持っていく際に対価というものを必要としない(故に秦、オリュンポス同様貨幣制度は存在しない)。必要なものを必要な分だけ調達こそすれ、過剰に物を独り占めするような心配などないからである。
他者と自分を比べる思想、即ち『比較』が存在しないので異文化への偏見や反感などあるはずもなく、その満ち足りた心は、悲しさや悔しさを知性では理解しつつも心では悲劇や理不尽とは捉えていないレベルで、怒りも憎悪も抱かず、ただありのままを受け入れている。この点は、同じく幸せに満ちていたために悲嘆を理解しない中国異聞帯の民衆と共通点がある。(コヤンスカヤは「当人たちはそれで過不足ないのでしょうが、隣人となる生き物はやるせない」と発言していた)
その外見どおり、ディノス自体はこの世界が作られた当初に地上から移り住んだ存在で、恐竜のうち汎人類史でいう獣脚類にあたるものがほとんど。
ただし人類にはない弱点として、多種多様な食物を吸収する雑食性はなく草食。しかも口に出来るのは極特定の植物に限られる。肉を食べようものなら毒素を分解できず知性を失って死亡する。
そんな頑丈な彼らであっても、第9層への踏破に成功した者はいない。
一応彼らにもククルカンを太陽神として扱う概念はあるが、神という概念そのものも本来は言語あって初めて存在しうるもの。
知識欲のないほとんどのディノスは、クリプターの来訪以前は言葉による意思疎通さえあまり行わなかったので、ククルカンそのものはいても、それを「ただそこにあるもの」としてみていた。
それが、言語を多用する生物たる人間であるクリプターの来訪を境にして、言語の取り扱いが増えた結果、「特別な存在」としてククルカンを神と扱うようになったことで、自分たちの世界に「物語」もまた初めて生まれたのだった。
また、命に差別をせず、外見に囚われず心の在り方を重視するという精神性の高い社会を営み、生命以上の大きな価値観のために生きているので個人的な死はともかく種としての絶滅を恐れない。またいざという時に自身を冷凍保存する技能や、生体波動を使っての物理衝撃遮断という技能も可能とする割に、一律草食である点などから、汎人類史の地球環境化ではなしえない進化であり、したがって汎人類史にないタイプの遺伝子操作技術で作られた存在のようだ。
草食ではなしえない活動エネルギーの補充方法は光合成であり、生物と植物のハイブリッドである。彼らが太陽神ククルカンと共に生きるのも道理。
一方その完成されたシンプルな生態ゆえか歴史の積み重ねや物語がなく、だからこそ「歴史の積み重ねや物語があったからこそ発生しうる」ような、例えば計略で家族を失ったり、同じ種族で騙したり憎んだり殺し合うといった「残酷な出来事」には精神が耐えられない側面もある。(物語として聞くのであれば耐えられる)無論、戦争など起こったはずもなく、体験したこともない。
その中でもカルデア陣営が最初に出会った個体は、彼らの中では異端と言えるほど高い知識欲を持つ。
「汎人類史」「異聞帯」の情報を耳にしても、事実を事実として受け入れる、色眼鏡のない視野を備えているうえ、知識の吸収力も人類でいえば天才の領域。
また、これまでの異聞帯の住民と違っているのは、その事実を前提とし、そのうえ他の異聞帯ではカルデアを自分たちの世界を消す存在として素性を知られれば現地住民が敵対するとまで知りながら、自分たちはそんなカルデア陣営を「客人」とみなし迎えた。
もともと満たされた文明を築いてきたディノスではあり、カルデアの戦いが自分たちのやるべきことをやりに来たという事実さえありのまま受け入れ、自分たちの世界の行く末と並列に考えることのできることを教えられればすぐに理解するが、特に彼はそれを張本人との対話のみで成し遂げた。いわばこれまでのどの異聞帯よりも(そして汎人類史よりも)特に理知的な住民と言える。
空想樹切除によって異聞帯が消えることさえ、「世界は滅ぶというただの事実」「自分達とは前提が違う」として認識している。
ここにきてカルデア陣営は、「世界を滅ぼすための戦い」を初めて現地住民から肯定された。
ひょんなことから同行者となった者から言わせると、汎人類史の人類より「数段上の存在」である。
他の異聞帯にも、大多数の住民と違う変わり者はいたが、別種の生態をするほどの変わり者というのは全異聞帯を通しても前例がない。
そんな彼らだが、この世界そのものが有する「マィヤ」によって波長・言語・認知基準の調整を受け、外来種とも対等に会話をすることが可能。つまるところ「自動翻訳機が世界全土に仕掛けられている」のである。
「マィヤ」とはこの世界をよりよく運営する「気持ち」、つまり「善意」であり、ここ9つの層に分かれたディノスの地底世界たる「ミクトラン」の、すべての源にして指針。しかしその「マィヤ」の恩恵も冥界には届かない。
自然との調和を重視する点においては、汎人類史のアステカ文明との類似点がある。
自分たちの要となるものとして、ミクトラン全体を貫く宇宙樹なる存在がある。その頂点にあるものこそが太陽の祭壇であり、その祭壇を擁している場所こそが彼らの居住地の中心である第3層の黄金都市チチェン・イツァーとなっている。
また、生命体として単純に上回る相手に対しては苦手意識が非常に強く、該当する唯一の存在であるカマソッソの活動に対しては、オセロトルが相手なら行なっていた防撃戦闘さえ一切なりを潜め、ただ逃げ回り家に立てこもるのみである。
ディノスが絶滅を恐れない理由として「死は逃避するものだが絶滅は違う、それは生命が主体の考えであり、自分たちは『もっと大きなもの』のため生きているから」「我々には歴史や物語が無い、だから絶滅を日課として受け入れられる、それを辛いことと記録して無いから」とのこと。
ちなみにデイノニクス11兄弟のように自分たちの基になった恐竜の種名を知っている個体もいるが、どこからそんな知識を得たのかは不明である。なぜなら、そもそもデイノニクスという単語自体がラテン語である為。
一部の個体の名称はマヤ神話の登場人物に由来している。
- 人型生物「オセロトル」
一方でここにいる敵性生物としてはジャガーを意味する「オセロトル」がおり、そちらは人型の形をして豹のような顔面を持ち、銃で武装した存在。クリプターとともにやって来たようで、戦いと称してディノス狩りをしつつ、5つ目の層に大都市メヒコシティを築いている。
デイビットが第1章プロローグで言っていた「コフィンの中ではできなかった作業のような殺傷行為」とはおそらく彼らの活動と思われる。
リーダーの「イスカリ」はディノスの根絶を目論んでいるとも言われ、その狩りの本質はどうやら利益のためらしい。
体型、武器、そして肉を剝いで皮を加工するなどの行為、そうした活動を組織だって行っている様相、そもそも生物学的な特徴が、まるで汎人類史の人間とよく似ている。
被害を受けたディノスは、ただ殺傷される場合もあれば、毒によって知性を失い暴走する形で滅ぶこともあるらしく、カルデア陣営もそうした存在と遭遇している。
「オセロトル」はいわば「強き者の心臓をテスカトリポカ神に捧げる」という新興宗教のような活動で、ディノスに肉食という名の毒を投与している。
ミクトランにおいてORTやカマソッソのような例外を除けばディノスは最強の存在であるため、強き者として標的にされ、自身の運営する都市でディノスの心臓を剝いでいる。そのため野に生きているディノスはかなり数を減らしたようだ。
これまでの異聞帯の大半が多かれ少なかれ人間にとって過酷な世界だったのに対し、ここはいわば人間が他者に過酷な環境を与えている世界である。
ディノスにはない闘争心の高さと好戦的な性格が特徴であり、そして彼らが崇拝するテスカトリポカ神の考えを象徴するかのように「死に対する悲しみ・悼み」が存在せず、相手の死と同様に自分たちの死も等価だからこそ殺戮をする。そもそも悲しみ・悼み以前に、自分たちの仲間に対して感情を向けること自体なく、感情とはテスカトリポカ神の一挙手一投足に対してのみ反応するもの。感情の発生はテスカトリポカ神にすべて任せている、とも言い換えられる。また自分たちの命はテスカトリポカ神への供物なのである。
一方知能がかなり低いため「敵対者の力量把握」「戦術的撤退」さえ出来ないレベルであり、
言語に関しても、細かな意思疎通には向かない、それどころか大雑把な「合図」程度のものしかないらしく、知的関心のないディノスから警告される時も言葉が通じるようわざわざ平易な言葉に言い直されるほど。
目の前に新しい銃を与えればすぐその相手を支持するなどの理由で、テスカトリポカ神からもイスカリからもある種呆れられている。
セリフは作中の表現だと象形文字のみで構成され、中にはアステカ文明のそれ(マヤ文字)も含まれている。これは表意文字であり、組み合わせることで複雑な意味を作り出せる仕組みなので、ラフム語のようにはいかない。
’23年1月に入ってユーザーからかなり解読されているようだが、解読しないと意味が分からない以上、彼らオセロトルは「マィヤ」の自動翻訳対象から外されている。
その正体は汎人類史のテスカトリポカの眷属ではなく、第七異聞帯の類人猿エイプであり、ミクトランにおいてはもっとも新しく、もっとも弱い種。そのためマィヤに無視同然の扱いをされてきたのである。ディノスからも、発生の経緯及び能力から『虫と同義の生物』としか認識されてなかった。
この、ディノスとオセロトルが内戦状態にあり、汎人類史のミクトランと違って「戦う者だけが生存を許される」のが、南米異聞帯である。その点では、戦わなかった者だけが死後楽園へと送られる汎人類史のアステカ神話の楽園とは逆である。
異聞帯としての総括
厳密には「中南米異聞帯」と言える。
3億年前より始まった恐竜時代が6600万年前に3度目の絶滅を迎えるポイントから、汎人類史と違うルートを進むこととなる。無論、分岐点としてはギリシャ・イギリス(1万4000年前)を遥かに凌駕する過去最古のもの。
大絶滅の原因となった隕石はわずかな起動のズレから汎人類史より2億5000万年早くユカタン半島に衝突。付着していた「宇宙から飛来した植物の芽」は地表へ寄生、大陸分断を植物の根によるネットワークで阻止、隕石によって滅びた大地を生物では不可能な規模で復活を成し遂げた。
この植物は情報伝達機能はあるが単独では知性の発展ができない。宿主になる生物に寄り添い、その生物を繁栄させるという共存関係によって生存権を確保する。南米異聞帯においてこの植物が共存に選んだ生物は、後に誕生する人間ではなく、恐竜たちだった。
南米異聞帯の生命を導くマィヤ(神の繊維)とはその植物のこと。汎人類史でも訪れる災害(ORT)に対し、マィヤは地底にシェルターを作って対処した。パンゲア全土のエネルギーを地底に集め、地底世界ミクトランという楽園を作った。
しかしその際に集めたエネルギーが100万年分にあたるものだったので、すっかりエネルギーが枯渇した地表は数千万年以上燃え続けている。
ミクトランにはディノス以外にもそれなりに繁栄した種はいたようで、2000万年前に類人猿プロコンスルが発生していたようだ。
時間の単位として「年」や「月」という概念がなく、過去の出来事は「“以前”という曖昧な言葉でのひとくくり」になっている。例えば100年前は『少し以前』、1000年前は『もっと以前』、創世記は『遥か遥か、遥か以前』という様な言い回ししかされない。
歴史を記録する必要性を感じていないため、汎人類史の王朝のように社会が複雑化することはない。異聞帯として成立した6600万年前から在り方は不変。同行者の1人はこれを人間社会とは比較にならない完全な理想社会だと評した。
だが彼女曰くミクトランの太陽はあと10回の往復の後、太陽は臨界を迎え爆発しディノスは絶滅、ミクトランは滅びが決定している世界である事が明かされる。そしてこの事実はディノス全員が知っていることが伝えられた。上記の「自分達とは前提が違う」という理由はこの事。
テペウは自分たちの生活を『絶滅寸前のもの』と色眼鏡で見られることを嫌った為あえて話していなかった。それに対し、ダ・ヴィンチは「太陽が爆発する環境下で何の暴動も起こさない人類はキミたちぐらいだ」とその精神性の高さに敗北感すら覚えたが、ハベトロットは「もう何しても絶対助からないなら最後にやりたい事ぐらいやるもんじゃないの?」と疑問を持った。
そして完成とは死の同義語。霊長が変革を起こさないなら、文明文化を成長させないのなら、新しい可能性を生まないのなら、未知の未来を作らないというのであれば、世界は剪定事象となるのが道理。
言うなれば「完成しているからこそ進歩や発展をしない世界」。1つの完成形に至った異聞帯なら第三異聞帯や第五異聞帯も該当するが、「最初から」完成していた点は決定的な相違点。
ディノスは全員が例外なく高い知性と屈強な肉体を持ちながら、ORTの脅威や太陽の寿命やカルデアの空想樹切除による再度の剪定にひとかけらの怖れを覚えない。いずれ訪れる絶滅を「それは仕方のないことだ」と自然に受け入れる。
知識欲はないが頭脳は全員がスパコン並で、戦いに興味はないが全員サーヴァント級の肉体性能があるうえ、過剰な欲を持たない精神性を併せ持つという、誰もが精神的・肉体的に完成されている世界が故に、これまでの異聞帯の中でも過去最大最長の歴史を持ちながら何一つ生み出さなかった。
グラン・カヴァッロ曰く「『知性を持ちながら何の発展もなかった』種族」「多くの神話において太陽が信仰されたのは『自分たちの想像を超えるもの』だから」「知性ある生き物は、あらゆるものに意味を見いだす。知性とは『偉大なものに近づこうとする力』」「知性のない生き物にはその力がないので、環境に適した進化しか行わないが、知性ある生き物であれば、必ず適応進化とは別の進歩を遂げる。」「その法則からディノスは初めから外れている」「高い知性を持ちながら、その共感力の高さゆえ『特別を』を見いださなかった」「工夫も憧れも、物語も必要とせず、生存のための文化を生みだす必要すらなく。マィヤが作り出した理想の生命環境で幸福な時間を過ごしてきた知性体」。
コヤンスカヤからは「成熟しきった知性体とはああいうものなのか、思ってた未来と違う」と若干の解釈違いを感じられる評価である。
ありのままに自然体として生きること自体が宇宙から剪定事象と看做されるディノスは、TYPE-MOON世界における宇宙の仕組みそのものと相性が悪い生物とも言える。
文明や人類としてどれほどの完成度を持っていようと、滅びを受け入れるこの異聞帯は、カルデアの敵にも、どの異聞帯の競争相手にもなりえない。
彷徨海に基地があったころにシオンがトリスメギストスⅡから立てた仮説である「文明が死に絶えたであろう、人類史にとって異例中の異例」という言葉はまさにその通りであった。
*ミクトラン史 |
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6600万年前 |
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2000万年前 |
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(太文字は本来は赤文字)
関連タグ
フォウ:妖精國同様今回も同行しなかった、コヤンスカヤからは「ORTに関わる気がない」と推測されていたが、実際は妖精國と同等かそれ以上にこの異聞帯では得る物が何もないと理解できたからだろう。事実最終決戦にてテペウが比較しないことが、決して正しいことではないという結論を出している。
セファール:直接の追及はされてないがその在り方およびこの世界の地上の有様を見て『文明ナシ』と判断し来訪しなかったのではないか?という予想、考察が多い。