概要
2022年放送のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の登場人物の一人・後白河法皇は、作中で幽閉の憂き目にあった第3回以降、毎回のように「源頼朝の夢枕に生霊のごとく現れる」という形での登場が定番となりつつある。
このくだりに、脚本を手掛ける三谷幸喜の過去の監督作である『ステキな金縛り』との近似性(法皇役の西田敏行は同作の主演の一人であると共に、その役柄が落ち武者の幽霊であった)を見て取ったファンの声がSNS上でも少なからず見受けられた。
記事名ともなった台詞は、前年度の大河ドラマにおいて同様に視聴者の斜め上を行く定番のパートであった、徳川家康の登場時の挨拶に引っ掛けたものである。
キャスト発表に際し、三谷は本作における法皇を「『スター・ウォーズ』でいうところのレイア姫」と説明しており、法皇が赤や緑のライトアップと共に夢枕に立つ姿も、同作でレイアがホログラフィを通してルークに助けを求めるシーンを意識しているのではないか、と指摘する向きもある。
作中での「夢枕」
前述したくだりの初出である第3話では、アバンタイトルで院近臣が平家打倒の策謀をめぐらしていた事がバレ、その結果法皇が平家に幽閉されるという流れがまず語られている。
それと同じ頃、挙兵に及ぶのか否か煮え切らない態度を取り続けていた伊豆の頼朝は、ある晩夢枕に立った法皇から
「1日も早く助けてくれ。
清盛入道に散々ひどい目に遭わされて、今は福原に幽閉されておる。
清盛の首を取れ。平家の奴らを都から追い出してくれ。
それができるのは頼朝、お主だけだ」
と、妙に馴れ馴れしい態度で平家打倒を懇願されてしまう。どういう訳か頼朝は金縛りにあったように身動きが取れず、文字通り「揺さぶり」をかけてくる法皇に対しても「お願いだから、揺らさないで・・・」と、弱々しく反応する事しかできずにいた。
実際のところ、これが法皇本人によるメッセージであるとは作中でも全く明言されていないのだが、折しも以仁王と源頼政による武装蜂起が鎮圧され、同じ源氏の一族である頼朝の身辺にも危険が迫りつつあった事、そしてこれまた本人のものか怪しい法皇の「密旨」が、三浦義澄から北条時政を経て頼朝の元に渡った事なども重なり、挙兵すべきか迷っていた頼朝の背中を推す格好となったのは、紛れもない事実である。
――平安末期はそういう時代である。(第3回の語りより)
・・・これだけならば単に、物語の流れを変えたターニングポイントの一つとして終わる訳なのだが、どういう訳だかこれ以降も法皇は同様に、頼朝の夢枕に立っては「平家を討て」と、再三に亘って催促を続けていたようである。そのあまりのしつこさたるや、悲鳴ととともに飛び起きた頼朝が「毎晩・・・つらい・・・」とこぼす程である。
そしていざ挙兵に及んだ後、石橋山の戦いで手ひどく打ち負かされ洞窟に身を潜めていた頼朝が夢の中で見たのも・・・やはり自分に叱咤激励を送ってくる法皇の姿であった。
2022年10月12日放送『歴史探偵』「3代将軍 源実朝」
鎌倉幕府3代将軍・源実朝の生涯を特集した同番組に『鎌倉殿の13人』で実朝を演じる俳優・柿澤勇人が緊急出演。中国渡航を夢見て挫折した実朝の無念も描かれた。
柿澤は、実朝にとって中国渡航は「一番大きな夢」と触れると「夢で言うと、(大河で)僕の最初の放送があって、寝てる時に夢に三谷(幸喜}さんが出てきた」と実朝が初登場を果たした夜に柿澤の夢に三谷氏が出てきたと切り出した。
そして「ダメ出しされたんです。柿澤さんダメです。僕の脚本ちゃんと読んでますか?全然ダメです、という夢を見て。本当に嫌な感じで朝起きた」とコメント。「そしたら翌日、本当に三谷さんからメッセージが入って。何も心配いりません、大丈夫です、と」と本当に三谷氏からメールが届いたと振り返った。
番組MCの佐藤二朗は「ある意味、予知夢。内容は真逆だけど」と驚くと、柿澤も「ドキッとしました」と苦笑い、この一連のやり取りにネット上では
「夢で柿澤勇人にダメ出しをする三谷幸喜、後白河法皇感ある」「柿澤さんのエピが、まんま鎌倉殿の13人序盤で後白河法皇の夢枕に振り回される頼朝で笑っちゃった」などのコメントが寄せられた。
第42回「夢のゆくえ」
今回のアバンタイトルではいきなり後鳥羽上皇が
「私だよ。上皇様だよ。」
と、前に出てきた後白河法皇を彷彿とさせるセリフで源実朝の夢枕に立った。