まだ見ぬ理想郷を求めて、うさぎたちは旅に出る──
概要
野生のうさぎ達の生活を描いたイギリスの児童文学。著者リチャード・アダムス(アダムズとも表記される)の処女作にして代表作。アダムスはこの作品で1973年にカーネギー賞、ガーディアン賞をダブル受賞している。
1972年に初版が発行。日本では神宮輝夫が翻訳を担当し、1975年に旧訳版、2006年に新訳版がそれぞれ刊行された。
登場するキャラクターは一部を除き「うさぎ」だが、思考・生態・文化などは感情移入しやすいように人間調にデフォルメされている(本作のうさぎは共通言語であるlapine languageを使って会話する設定だが、そもそも現実のうさぎには声帯が無い)。
また一部描写には宗教的なバックボーンが存在する。本作はキリスト教的もしくはリーダーシップ的な寓意(アレゴリー)を含んだ寓話とも評され、類似する作品に『ナルニア国物語』『指輪物語』等が挙げられる事がある。
1996年、続編作の『Tails from Watership Down』という短編集が展開された。
英語圏での人気は非常に高く、映画化・TVアニメ化・舞台化の他、近年でもNetflixでリメイク作品が制作されるなど、世代を超えて根強い人気を保っている。
1978年公開のアニメ映画版はトラウマものと名高く一見の価値あり。一方、映像作品全体の傾向として原作改変が多く(特にTVシリーズ)、オリジナル展開・キャラクターの改変(一例:性別転換)はもはや恒例。
2024年11月30日、日本で映画版(1978年公開)のHDリマスターが上映されることになった。
あらすじ
イギリスのハンプシャー州にあるサンドルフォード繁殖地の巣穴に住むヘイズルは、弟・ファイバーの「サンドルフォードを災厄が襲う」という予知を聞いた。ヘイズルは群れの長スリアラーに予知の内容を説明したが聞き入れて貰えず、現状に不満を抱く仲間を集めて群れを離れる。
行く先々の困難を退けていく内、ヘイズルは群れの長として仲間に認められた。やがて彼らは定住の地ウォーターシップ・ダウン(丘陵)へと辿り着き、そこに住居(穴)を築く。
しかし集落には牝がいなかった。彼らは繁栄のために他の所から牝を確保(誘致)することになり、最終的に「うさぎの集落同士の抗争」にまで発展していく。
登場キャラクター
キャラクター名は植物とlapine言語(うさぎ語)に由来する。何名かはlapineと英語の二つの呼称が設定されている。
ウォーターシップダウン
ヘイズル、ファイバー(フライルー)、ビグウィグ(スライリ)、ブラックベリ、ダンディライアン、ホリー、ピプキン(フラオ)、ストロベリ、シルバー、ホークビット、バックソーン、スピードウェル、エイコン、クローバー、ボックスウッド、ヘイスタック
エフラファ
ウーンドウォート、ハイゼンスレイ、キャンピオン、ブラッカバー、バーベイン、オーキス、スノードロップ、チャービル、ネルシルタ、セスシナング
神話/伝説
エル・アライラー、インレの黒うさぎ、フリス、ラブスカトル、虹の王子、ロウズビイ・ウーフ、ハフサ
その他
キハール、スリアラー、カウスリップ、ルーシー、シルバーウィード
注意喚起
2002年以降、ガンダムシリーズの作品『ADVANCE OF Z』における機動兵器に本作から名前が引用され、日本でもそれを機に本作の名前が再浮上するようになった。
これが日本でマイナー気味な本作の知名度向上に大きく寄与していることは間違いないが、一方でpixivに限らずネットでキャラ名・関連用語を調べるとガンダム関連で埋め尽くされてしまう(いわゆる「検索汚染」である)。
検索の際には植物由来は勿論のこと、lapine由来の名前であろうと作品名の併記・一致検索・マイナス検索(例 -ガンダム -AOZ -TR 等)を利用するなど工夫する必要が生じている。
本サイトでは、本来であればウォーターシップダウン関連になるはずの記事をガンダム関連が独占していた時期があった(現在では半ば解消されている)。今後の棲み分けは慎重に行って頂きたい。