我の拳は神の息吹!
“堕ちたる種子”を開花させ、
秘めたる力をつむぎ出す!
美しき
滅びの母の力を!
解説
CV:麦人
「我はグラーフ。力の求道者。うぬは力が欲しくないか?」
プレイステーションソフト『ゼノギアス』に登場する敵キャラクター。主人公フェイにとって最大の宿敵である。一人称は「我」(終盤のみ「私」)。
常に力を求める力の求道者。他者に力を与えてギアのジェネレーター出力やエーテル能力を無理やり上昇させる事が出来る。
また、生身での戦闘能力も凄まじく、空中戦艦やギアとも互角以上に渡り合える。
人類を滅ぼすことで人の呪われた運命を解放しようという思想を持ち、500年前ディアボロスと呼ばれる軍勢を率いて世界中を恐怖に陥れた張本人。これにより人類の98%が死滅した。この惨劇は「崩壊の日」と呼ばれている。
物語の最序盤から最終盤に至るまで登場し、たびたび主人公の前に立ちはだかり、時には能無しなオッサン(ハゲ)どもをドーピングし、時には自ら生身でギアを相手取れるほどの実力で戦ったりと、とにかく作中もっともアグレッシブに動くボスキャラ。
その為、印象の善悪にかかわらず否が応でもものすごく印象に残るキャラである。というのも敵幹部の中では最初に登場した上に、ラスダン出現直前まで退場せず、その正体と生き様、ラスボスも凌駕する劇中最強の強さ、そして一騎討ちというアツい最期などから非常に人気の高いキャラクターである。
ORヴェルトール(真ヴェルトール)
読みはオリジナルヴェルトール。グラーフの使用機体。アニマの器ナフタリを継承したギア・バーラーである。だがしかし、ギアの戦闘力以上に恐ろしいのはグラーフ自身の力と強さを引き出す想い(怒り)である。
ちなみに主人公が搭乗するヴェルトール(ヴェルトール2)は、このORヴェルトールの純粋なレプリカである。しかし最終盤では、グラーフの機体が「オリジナル」ではなくなったためか名称が真ヴェルトールに変化した。
ちなみにリミッターを掛けることで機体の外見を変えることも可能。
小説版「神屠る物語・序章」
ゲーム本編の三年前を描いた外伝であり、新たに肉体を得たグラーフが大遺跡に安置されていたORヴェルトールを手にするまでを描いた物語。主人公は「普通」の発掘屋であり、深く関わることになる。グラーフ自身が疲弊していたことや、主人公ダルガ・リシューナに埋め込まれたナノマシンの身体強化の影響もあり敗北を喫している。
本作に登場するゲーム本編のキャラクターは、グラーフとORヴェルトールのみ。またこの作品のグラーフは本編と口調がやや異なる。
ネタバレ
以下はゼノギアスの重大なネタバレが含まれます!
戦闘力
「地上人の少々の小賢しさなど、真の力の前には無力」
搭乗ギアのORヴェルトールは、『OR=オリジナル』の文字通りフェイの搭乗機であるヴェルトールの原型である。
終盤でグラーフの乗機するORヴェルトールと戦うことになるのだが、やはり鬼のように強いため、一方的に全滅させられるだろう(負けイベントだが倒せないわけではなく、事前に対策を練って祈れば倒すことが可能。倒すとレアアイテムが手に入る)。
ちなみにここで戦うORヴェルトールは、本作最強の敵でありラスボスも凌駕する強さを持つ。攻撃の殆どがカンストダメージの上、こちらの攻撃はまともに通らない。しかも回避率も高い。やり込みプレイで勝率を上げたとしても、勝てるかどうかは運の要素が強い。現在では攻略動画が多数投稿されている。
なお、ORヴェルトール戦後にフェイは戦意を挫かれ、「あんなバケモノみたいな機体に勝てるわけがなかった」と述べている。この時の彼とユーザーの心境のシンクロ率はかなりのものだっただろう。
本人自体の戦闘力もすさまじく、生身の状態で3機のギアや空中戦艦と互角以上に渡り合う。また終盤でミァンと組んでフェイたちと2対3の攻防を繰り広げるが、この時も有利に戦っている(フェイの肉体を奪おうとしたが、思わぬ横槍によって戦闘は中断となった)。
幼少のフェイを拉致した際は、カーンを一方的に圧倒していた。
ちなみに序盤で空中戦艦の砲撃によってギアごと轟沈したと思われたが、その後イベントでは何事もなかったかのように登場し、ミァンと会話している。
正体
「俺は……一体……何者なんだ……?」
その正体はフェイの前世、ラカンの残留思念から生まれた存在。ラカンはただの絵描きに過ぎなかったが、幼馴染のソフィア(エリィの前世)から愛されていた。そのため彼女はラカンに自身の自画像を描かせていたが、ラカンにはその気持ちを受け止めるだけの覚悟がなかった(当時は劣等感の強い性格だった)。
その後、ソラリスとの戦いでラカンと仲間たちは窮地に陥る。だが、ソフィアが戦艦で敵艦に自爆特攻したことで活路が開かれ、ラカンと仲間たちは生還を果たした。そしてソフィアは、死の寸前に「生きて! ラカン!」と言葉を残していた。
愛する者の死に直面したラカンは激しい自己嫌悪に陥り、自分の弱さが彼女を死なせたと思い込むようになる。その後、ニサンに囚われていたミァンと出会い、彼女の導きによりゾハルと接触。しかし、不安定な精神状態(とソフィアを失った状態)だったが為に不完全な接触になってしまい、怒りで心を塗り潰し、もう一人の人格を生み出した。これがグラーフである。
暴走したラカン(グラーフ)はデウスの機動兵器端末群《ディアボロス》を率いて世界規模の破壊活動を開始。人類の96%を虐殺した《崩壊の日》という惨劇を引き起こした。しかし、ORヴェルトールが仲間たちによって大破したためディアボロスも活動を停止。
正気を取り戻したラカンは孤独な旅の中で息絶えたが、もう一人の人格(グラーフ)は残留思念として他者に憑依することで生き続けてきた(ゾハルとの接触で獲得した能力とのこと)。この能力はまさに、愛するソフィアが最期に遺した言葉である「生きて」を体現したものと言える。
これにより「グラーフ」は500年間生き続け、いずれ現れる自身の転生体「フェイ」に憑依し、本来の肉体を取り戻そうとしていた。
目的
「それでも尚、世に滅びが訪れないのであれば……俺がこの手で滅ぼしてくれよう!」
一言で言えばデウスと人類の完全抹消。エレハイムとミァンこそがデウスの本体だと考え、『母』を滅ぼそうとしている。しかし、世界中の女性がミァンの因子を持っているため「ミァン」を殺しても別の女性が代替わりしてしまう。更にグラーフの力が強力と言えどもデウスを倒すまでには至らない。デウスを倒すための力としてフェイの肉体を欲し、ゼノギアスによってデウスを破壊し、人類も抹消することで二度とミァンが生まれない世界を築こうとしていた。
デウスを倒すために一度は復活させなければならないので、ミァンやカレルレンとは手を組んでいる。また今でもカレルレンからは「ラカン」と呼ばれている。
殊更にグラーフをここまで駆り立てるのは愛する者を失わせた世界に対する「ラカンの怒り」によるもの。だが、グラーフの本心は他にもある(後述)。
グラーフにとってエリィもまたソフィアであるためか、序盤のイベントでピンチになったエリィを助けている(助けられたエリィはなぜグラーフが助けてくれたのか疑問に思っていた)。これはグラーフが単なる怒りの人格というだけではなく、ラカンの想いを持っているということの証左である。
ストーリーへの絡み
「さあ、拳を交えようぞ、フェイ!」
フェイが幼少の頃、彼の母カレンがミァンとなってしまう。彼女から連絡を受けたグラーフは転生体であるフェイを拉致するべく現れる。それを阻止しようとしたフェイの父カーンと一戦交え、圧倒的な実力で追い詰める。しかし、フェイの力が暴走し、カレンが犠牲となってしまう。その事実から目を背けたフェイは第二人格イドに切り替わってしまった。グラーフはイドを暗殺者として育て上げ、自身の技を教え込んだ。
そして本編から3年前、機は熟したとしてイドの肉体に乗り移ろうとする。しかし、そこへ現れたカーンによってイドは記憶を封印されてしまった。まっさらになった精神に新たに生まれた人格が主人公フェイであった。主人格である「臆病者」は母を失った現実から目を逸らし、精神の奥に引っ込んでいるため表に出てくることはない。イドも記憶を封印されたため、その下位人格である主人公フェイが表に出ていた。こうしてカーンは息子を取り戻し、ラハン村の村長に預けた。フェイが使っている技の数々は、グラーフがイドに教え込んだもの。つまりグラーフはフェイの師匠と言っても過言ではない。
終盤では、デウスが封印された地マハノンにて初のギアバトルを繰り広げる。前述の通り、ここで戦うORヴェルトールは、ラスボスも凌駕する最強の敵。フェイたちでは歯が立たず敗北する(勝ってもストーリー上は負けたことになる)。グラーフはフェイの肉体を得ようとするがカレルレンによって止められ、デウスの復活を優先することに。その後、フェイたちを助けに来たエリィが拉致されてしまい、失意に陥ったフェイに対しグラーフは「腑抜けたお前など相手にする価値もない」と断じ、手を出すことなく立ち去って行った。このことからフェイはグラーフの強さの前の心を折られてしまったが、父の友人を名乗る男ワイズマンの励ましによって立ち直る。
エリィの救出に向かったフェイだが、彼女はミァンに肉体を乗っ取られてしまう。そしてフェイは、様々な事実から目を背けたことでついにイドに人格を乗っ取られてしまう。イドは母を殺したことで「破壊することでしか誰かとの一体感を得られない」と思い込んでいた。このためゾハルとの完全な接触を行い、世界を滅ぼす力を得ようとしていたのだ。それを阻むべく駆けつけた仲間たちと父カーンだが、既にヴェルトール2は真紅の機体へと生まれ変わっていた。新たな力を手に入れたイドには仲間たちも歯が立たず劣勢を強いられる。そんな中、イドの精神に飲み込まれつつあったフェイだが、仲間たちの言葉によって自分を取り戻し、逆に主人格とイドを説得。こうしてフェイは人格を統合し、波動存在との完全な再接触によってヴェルトール2をゼノギアスに変異進化させた。
フェイは父カーンの前に駆け寄るが、直後、「カーン」は「グラーフ」となって襲い掛かってきた。実は3年前、グラーフの肉体は限界を迎えており、フェイを取り戻しに来たカーンに憑依していたのだ。しかし彼の意識は思いの外強く、グラーフでも完全には支配しきれなかった。グラーフの支配が弱まった時だけカーンの人格が表出し、「ワイズマン」を名乗りフェイを導いていたのである。皮肉にもフェイと妻が多重人格になったように、カーン自身もグラーフという人格に乗っ取られていたのだ。
グラーフが言うには、カーンに憑依したのはイドが記憶を封じられ、第三人格フェイが誕生した後。そのためイドもフェイもこの事実は知らなかったのだ。
決着と最期
「今こそ我ら、真に一つとなる時!」
覚醒したフェイを取り込むべく戦いを挑むも、フェイはグラーフも父であることには代わらないと戦いを拒否。グラーフは「ならば仲間を殺す」と宣告し、フェイを否応無しに戦いへ引き込む。死闘の末、グラーフは敗北。だがフェイはトドメを刺さず、グラーフを父と呼び和解を望む。
「彼女たちを救ってやってくれ。頼んだぞ、フェイ……」
直後、接触者を取り込もうとするゾハルにフェイが飲み込まれそうになる。が、グラーフは彼を庇ってゾハルにORヴェルトールごと取り付く。
自分がラカンそのものではなく飽くまで残留思念に過ぎない事。そしてラカンの怒りや妄執だけではなく、後世の接触者であるフェイを鍛え導き、その身代わりとなって未来を託すというラカンの想いも背負っていた事を語り、更に父親として息子を守るというカーンの決意を明かす。フェイの身代わりとしてゾハルに取り込まれる直前、デウスの犠牲となったエリィやカレンを救ってほしいと息子に願いを託した。最期はソフィアが我が身を挺して愛する者を守ったように、グラーフもまた「父親」として息子を守り、消えて行った。
決戦の際は一人称が「私」になっており、「グラーフ」ではなく「父」であったことが窺える。
余談
設定やシチュエーションが非常に似通っているクロノクロスにもほぼ同じ設定のキャラクターが登場している。