「―生きる資格―について・・・どう思うかね・・・
はっ ”生きる資格”だよ・・・ほら・・・
万物すべてが持ち得ている 人間にも・・・ そして 魔族にもな・・・
(中略)
己の存在を確認するための理由みたいなものだろうが・・・
何でお前らがそんな資格持つことができた思う?
それはな・・・ 私が”与えて”やっているからだ
私が”殺さない”から生きていけるという・・・ 資格をな・・・」
解説
魔王軍の支配者。名前の由来はオーケストラ(王+ケストラー)のもじりである。
天使と人間のハーフである聖女パンドラの夫であり、魔族のハーフのハーメルと天使のハーフのサイザーの父親。さらに『続ハーメルンのバイオリン弾き』ではヴォーカルも自身の息子であることが判明。
彼が魔王軍の支配者である最大の理由はケストラーの魔力は全ての魔族に永遠の命と魔力を与えられるため。ゆえにケストラーが封印されている状態では魔族達、とりわけ通常時仮初の姿で魔力の消費を抑えている軍王及びその副官と言った上級魔族は真の姿で全力で戦えば瞬く間に魔力を使い切り、身体がヒビ割れて死んでしまう。
性格
冷酷無比で卑怯かつ残忍、無慈悲で傲岸不遜であり、どこまでも自己中心的な独裁者。プライドや面子などにもまるで頓着せず、どんなに汚くて、セコい手段であっても躊躇なく行う。良くも悪くも勝つためならばどんな手も使うタイプだといえる。「小賢しい」が口癖。
自分以外の存在は魔族ですらただの駒もしくは餌としか考えておらず、他の魔族たちも恐怖で縛り付けており、助けることもあるがそれはまだ道具としての価値があるからにすぎない。
パンドラと子供を作ったのは聖杯を増やすためだけでそこには微塵の愛もなく、自身と同じ血が聖女と掛け合わされた際に出来上がる血を欲したからにすぎなかった。
ある意味、何の辛い過去も有さずにこれほどまでに純粋な悪の心を持てるのは一種の才能であり、共感出来るような生やさしい感情を一切持たず、只ひたすらに純粋なまでに”邪悪”を貫いたその様は正に【魔王】である種の清々しささえ感じさせる。
作者によれば魔族の悪さがエスカレートしていくに伴い、ラスボスであるケストラーは「考えうる限り一番ワルい奴にせねばならない」ことに頭を捻りすぎて、完結時には「悪役でさえケストラーよりは好き」「もうケストラーを書かないで済むと思えば気が楽」とさえ、発言している。
そんなケストラーだが番外話の過去編ではデザインが決まっていない状態でコミカルに描かれていたりする。
戦闘能力
- 封印されているにもかかわらず、寝返りを打っただけで北の都に壊滅的な打撃を与える
- ハープ=シコードを瞬き一つで消滅させる
- 城外に展開された数万の兵を自身から垂れ流された瘴気だけで皆殺し
- (ケストラーを除けば)魔族最強のオーボウを軽々とねじ伏せた
- 地球全土を絨毯爆撃
- 魔族化したハーメルが山すら一撃で破壊可能な攻撃を放つがノーダメどころかハーメルの腕が砕け散る
- 上記のような手段で人間を殺せば殺すほど、「聖杯」でエネルギーを吸収しその都度回復・強化される
もはや最強どころの話ではない。
唯一の弱点と呼べるのは怒りや憎しみを込めた攻撃で力を増幅させる体質ゆえに聖なる力を宿した純粋な神の力や楽器を用いた賛美歌、信頼の力の前では逆に弱体化してしまうことにある。
作中の動向
本編開始前
500年前、勇者ヴァイ・オリンを中心とした人類軍との戦いにおいて、オリンが作った聖なる箱(後のパンドラの箱)に封印されてしまうも自分が封印されることも見据えていた為、保険として、聖杯要員を各地に配置するという抜かりのなさを発揮。
封印から400年後、箱に綻びが生じたことを機に完全ではないものの外に出ることが出来た後、箱の封印を解くための聖なる者の捜索を開始。82年後、妖鳳王オーボウが聖なる者であるパンドラを見つけたことを知ると分身を作り出し、その分身はパンドラの心を射止め、新たな聖杯要員であるハーメルとサイザーを作り出すことに成功。
魔族の呪いを受けたために魔族に追われているという設定とベースを初めとした配下たちに実際に襲われることでパンドラに打倒魔族のための箱を開けさせ、ケストラーは完全復活を果たす。しかし、オーボウの反逆とパンドラが箱を再び開けたことでケストラーは二度目の封印をされることになる。二度目の封印は以前にも増して、屈辱的なものだったが封印を免れたベースたちに命じ、天使のサイザーを拉致して、魔王軍で育て上げ、魔族のハーメルを人間社会に置くことで迫害からの大魔王化を仕向けるとここでも抜け目のなさを発揮する。
ちなみにケストラーは知らぬことだがパンドラはオリンの娘である為、ケストラーは間接的にだがオリンへの復讐を果たすことが出来た。さらにオリンがイライラムラムラわき上がる衝動を抑えきれなかったためにパンドラが生まれたわけなのでパンドラはケストラーに関わる以前からして、呪われていたといえる…
本編中
ハーメルが何度かケストラーの血で暴走した影響でパンドラの箱の中のケストラーも目覚めていくがパンドラの箱の中はいつしか封印した魔族を消滅させる効果を持つようになっていた。
ケストラーの二度目の封印後にサイザーの手で封印された妖凰軍は消滅しながらもケストラーは何とか完全消滅だけは避けられていたが因縁のあるヴォーカルの手で解放されたケストラーは左上半身のみと化していた。当初はオル・ゴールが体裁のために用意した幻影で隠していたがグロッケン・シュピールの命と引き換えの火の精霊で幻影部分を吹き飛ばされて以降は隠すのをやめ、完全復活のために活動するようになる。
最初にパワーアップした超獣王ギータを吸収したことで左足を再生させることに成功。以降も配下たちに集めさせてきた聖杯や各地の聖杯要員を用いることで右目を再生させ、ハーメルとの戦いにおいて、ついに完全復活を果たす。
ハーメル一行だけでなく、人類軍も追い詰めていくがフルートが真の力に目覚めたことでハーメルたちは復活。「怒りや憎しみではなく、信じる力で戦えばいい」ことに気づいたパンドラの指示の許、ハーメルとライエルが第九を演奏し、2人の合体マリオネットで人類軍はパワーアップし、逆にケストラーは弱体化していく。ハーメルもまた、自身の魔族の血を克服し、サイザーのように天使の翼を展開させ、ケストラーに真の決別を込めたパンチを放つ。
破れたケストラーはいつものように「小賢しい…」を口にしつつも魔族の寿命が尽きた状態と同じようにヒビが入ると動かなくなり、オリンが作った改良型パンドラの箱を用いたフルートに封印されるのだった。
そして、10年後。ハーメルとフルートの間に生まれた子供たちの中にはケストラー似の次男の姿もあり、次男は祖父同様に「小賢しいな~」が口癖ではあるが幸いにも祖父のような悪人ではなかった。善ケストラーとも呼べる存在を出したことに関しては後述のアニメ版を意識したのかもしれない。
アニメ版
CV:上田祐司
原作と全く逆。
穏やかな人物で妻・パンドラのことも心から愛しているのだが自身の身体に流れる大魔王の血の衝動に苦悩している。
容姿に関してもハーメルが大人になったような姿をしており、演者も同じ。
オリンが未登場だった為、魔族のハーフのハーメルだけでなく、天使のハーフのサイザーが生まれたことに関してはケストラーが魔族であり、天使でもある存在とされた。
大魔王の存在に関しては個人というよりも因子といった趣が強く、魔族側からは無限に魔力を出してくれる油田か何かだと思われ、この辺も原作とは逆に魔族に利用される存在となっている。
完全に変わり果てる前にパンドラに封印してもらい、後に彼が封じられた箱はパンドラの遺言に従ったサイザーの手で開けられながらもそこには化石のような亡骸と大魔王としての魂しか残っておらず、ハーメルが新たな大魔王に変貌していくがフルートの手で封印されるのだった。
ケストラー自身の魂はあの世でパンドラに再会できたかもしれない一方でエピローグでは遅かれ早かれ、フルートの手でハーメルの封印が解かれる事が示唆されている…