運命を受け入れろ
概要
MARVELコミックスによる同名のアメリカン・コミックス『スパイダーマン』を原作とした初の実写映画。『死霊のはらわた』で有名なサム・ライミ監督による3部作である。
後に制作された別シリーズの実写映画スパイダーマン作品と区別するため、監督の名前を取って「サム・ライミ版スパイダーマン」、略して「ライスパ」ともいわれる。
1作目は2002年、2作目は2004年、3作目は2007年に公開。
トビー・マグワイアを主演に据え、カルト映画で人気を博したサム・ライミが監督したシリーズ。
潤沢な予算から生まれる大迫力のCGは、摩天楼を飛び回るスパイダーマンの姿を完璧に再現し、高い評価を得た。また、原作コミックに比べてもさらに冴えない青年として描かれたピーターが、悲惨な運命に巻き込まれながらヒーローとして成長して行く物語も評価が高く、いまだにアメコミ実写化作品の最高傑作に挙げられることも多い。
運命にピーターやヴィラン達が翻弄され苦悩する姿に軸が置かれているため、常にどこかシリアスで悲壮な雰囲気が作品中に漂っているほか、ウェブの発射にウェブシューターを使わない(肉体の能力として、手首からウェブを射出する)、スパイディの軽口もほとんど聞けないなど、割と原作からかけ離れた面も見られるが、作品全体の完成度が非常に高いこともあって原作ファンにもかなり好意的に受け入れられている。
北米での興行収入1億ドルを公開1週目で達成した史上初めての映画作品。3作合計で全世界24億ドルという凄まじい興行収入を記録している。
この大人気により当初は3部作の予定だったが、最終的には『6』までの製作が発表された。しかし、いろいろあって結果的に予定通り『3』で完結(打ち切り)となってしまった。ライミの考えでは、『4』でピーターは恩師(リザード)や実の父(ヴァルチャー)と戦うことになってしまい、自らの活動について考えた末にスパイダーマンであることを捨てる、という結末を迎えて完結する予定だった。……とはいえ、伏線らしい伏線はリザードのもの以外は残っておらず、『3』の時点でも割ときれいに完結している。リザードとヴァルチャーの設定は、後年の シリーズに活かされた。
打ち切りの理由は、出演キャラのチョイスでライミとソニーピクチャーズが衝突した末の決裂と言われているが、2013年にライミが語ったところによれば、この出演キャラの問題を含めて脚本執筆があまりに難航し、そのうちにスケジュールの余裕も失われて「これではもう自分の満足のいく作品には出来ない」と彼の方から中止を申し出たというのが本当のところで、激しい衝突などはなかったとのことである。
ただライミとしては、3作目の出来にはいろいろと不満が残っており、そのリベンジマッチとして4作目にやる気満々だったため、この製作中止はかなりの痛恨事だった様子。2019年のインタビューでは「スパイダーマンの新作映画を見るたびに『スパイダーマン4』のことを思い出さずにはいられない」と漏らしている。
…しかし、なんと2021年に公開されたMCU作品『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』でグリーン・ゴブリンとドクター・オクトパスとサンドマン、およびスパイダーマンが別のユニバースから訪れたという設定でまさかのオリジナルキャストでの再登場を果たし、多くのファンが涙した。ライミもこの映画を「最高に楽しかった。」「自分にとって新鮮な作品だった。」と絶賛している。
同作の脚本上では、ライミ版の世界(アース96283)を「ライミバース」と表記、マグワイア演じるピーターの表記は「ライミバース・ピーター」となっている。
シリーズ一覧
単独映画として
2002年5月3日全米公開、同月11日日本公開。
メインヴィランはグリーン・ゴブリン。
ピーターが蜘蛛の能力を手に入れ、ベンおじさんを失い、グリーン・ゴブリンとの戦いを通じて一人のヒーローとして成長する過程を描く。
ノーマン・オズボーン / グリーン・ゴブリンを演じたウィレム・デフォーの怪演は、今でも評価が高い。
ストーリー
科学好きで奥手な冴えない高校生ピーター・パーカーは、ある日新種の蜘蛛「スーパースパイダー」に噛まれ、視力が良くなり、身体能力が向上したうえ、手首から糸を出したり壁を這って動けるなど蜘蛛のような超能力を得る。
最初は小遣い稼ぎのために能力を使っていたピーターだったが、自分が見逃した強盗が叔父のベンを殺したことから、叔父が言っていた「大いなる力には、大いなる責任が伴う」という言葉を痛感し、高校卒業後、正義のヒーロー「スパイダーマン」となる。
一方、ピーターの親友ハリー・オズボーンの父で、ピーターとも仲が良く、息子を誰よりも愛する科学者だったノーマン・オズボーンは、軍事目的で開発した身体能力増強薬の結果を急かされた事で、恐怖心を抱きつつも自らに服用してしまう。その結果、肉体は無事強化されたものの、副作用によって善良なノーマンの人格の中に凶悪な別人格が誕生する。別人格に意識と肉体の主導権を完全に奪われてしまったノーマンは狂気のヴィラン「グリーン・ゴブリン」へと変貌してしまう。経営するオズコープ社が軍事兵器のプレゼンに負けそうになったり、重役たちによって会社から放逐されたことを受けて精神を病んでいたノーマンを支配したグリーン・ゴブリンは「ノーマンの私利私欲を満たす」という理由を盾にしてニューヨークの街を恐怖に陥れる。
遂にニューヨークを舞台に、スパイダーマンとグリーン・ゴブリンの、運命の戦いが幕を開ける。
余談
ニューヨークを舞台としているが、撮影の真っ只中(2001年)に9.11が発生、既に途中まで撮影していた映像に映り込んでいたワールドトレードセンターをすべてCG等で消去しなければならなくなり、完成すら危ぶまれたという。劇場用予告映像や先行ポスターにも9.11が起きる前はワールドトレードセンターが入っていたが、事件後は全て差し替えられた。
ライミは後に、MCUにおいて『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の監督を務めた。
関連タグ
MARVEL スパイダーマン サム・ライミ トビー・マグワイア
実写映画シリーズ
サム・ライミ版→アメイジング・スパイダーマン→MCU版