スーパー!
すーぱー
フランクにとって、人生の輝かしい瞬間は二つしかなかった。一つは、美人妻のサラと結婚したとき。もう一つは、街で立っていたときにたまたま犯罪者の逮捕に貢献したとき。それ以外はいじめとコンプレックスにまみれた、うだつのあがらない人生を送ってきた。
サラの心はすでにフランクから離れており、ある日家を出て浮気相手の元に行ってしまう。相手は生粋のチンピラ、それも地元では有名な麻薬ディーラーのジョックだった。
「妻を悪党にさらわれた」と脳内変換したフランクは、子供番組にヒントを得てお手製のコスチュームでヒーローに変身。《クリムゾンボルト》と名乗り、レンチを鈍器に街の悪党を叩きのめす自警活動を始めるが、世間的にはただの通り魔であった。
しかしリビーは違った。コミックオタクでセックス依存症の彼女は、クリムゾンボルトの正体を見破ると、サイドキックになりたいと立候補したのだ。
なんの特技もないさえない男が、自前の衣装でアメコミ風のヒーローに変身し、過激な暴力の世界に身をとしていく。
同時期に公開された映画『キック・アス』との類似性が指摘されるが、今作の作風はむしろ『キック・アス』のコミック版の方に近い。
コミカルな導入ながら暴力描写は陰惨極まり、低予算映画であるがグロテスクな部分には力が入っている。また、主人公のおっさんが宗教体験をするシーンでは触手責めに遭い、脳を切開される。
監督のジェームズ・ガンは、B級カルトメーカーのトロマ出身。今作では劇中劇『ホーリー・アベンジャー』の悪役で出演もしている。
本作以後『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』などのヒーロー映画の監督をする事になったガン監督だが、ヒーローを題材にしたオリジナル映画として『ブライトバーン』を制作した際には、ラストでクリムゾンボルトがカメオ出演している。
ちなみに、ジェームズ・ガン本人が脚本を作る上で影響を受けたと公言しているのは「宗教的経験の諸相」という哲学書である。(なお、ジェームズ・ガン監督は熱心なカトリック信者でもある)