デートリンデ・エッカルト
でーとりんでえっかると
「大いなる蛇の力で扉を開き、別の世界があると知った時……そこに我々を凌ぐ力があると知った時! わたしは……怖くて怖くてたまらなくなった。そして滅ぼさなくてはならないと思ったのだ!!」
「わかるものか! 姿形は同じでも別の世界の……化け物だ!!」
CV:かとうかずこ
錬金術世界とは別の世界である現実世界、1923年のドイツでトゥーレ協会の会長を務める美女。
戦争に勝利して世界を支配するためにまだ一政党に過ぎなかったナチスと結託、伝説の理想郷である“シャンバラ”の強大な力を手に入れようと暗躍している。現実世界には存在しないシャンバラ=錬金術世界の技術に興味を持ち、それを手に入れるためには手段を選ばない。
終盤でエンヴィーとホーエンハイムを通行料として「真理の門」を開き、航空部隊で現実世界から錬金術世界へと飛ぶ(なお、エッカルト以外の鎧の軍団たちは全員転移中に圧死しゾンビ化したと思われる)。
飛ばされた際には魔法(恐らくノーモーション錬成)を会得し、その世界にいた人々を「姿形は同じでも別の世界の化け物」と決めつけて機銃掃射で無差別に殺傷していたが、エドとアルによって阻止される。
そしてエドと対峙した際、なぜいきなり無差別攻撃をしたのか問われた際に、冒頭の発言を行う。錬金術世界の技術や大いなる蛇の存在を知るにつれて、いつしか異世界への憧憬と好奇心は恐怖心にとってかわり、己が不安を拭い去る為に錬金術世界を滅ぼすべきだという身勝手極まりない目的を抱くようになっていたのだ。ナチスの野望のために錬金術世界のノウハウを手に入れるという本来の目的は、もはや彼女にとってはどうでもいいものと成り果てていたのである。
エルリック兄弟に敗北して再び「真理の門」を経由したことにより異形の姿へと変えられて(実際は黒い異形の物体が張り付いているだけ)飛行機もろとも現実世界へと落下し、その場にいた人々からは「化け物」と畏怖された挙句、同じくその場にいたマース・ヒューズ(現実世界)に射殺されるという、これ以上ないほど皮肉な最期を遂げた。
「人は自分と違うものを認められない」
「拒絶し、畏怖する。それが戦争の始まりだ」
「わたしには……おまえも化け物に見える。だから、殺せる!」
自分とは異なる存在を恐れ、それを排除しようという考えは特別なものではないとはいえ、彼女の傍迷惑なエゴのために一方的に襲撃される人々はたまったものではないだろう。
そのような意味では、ノーアとある意味で似た者同士。
ナチス黎明期の幹部であるディートリヒ・エッカートがモデルであるが、本作では架空の女性に変更するなどアレンジされており、ミュンヘン一揆後に病没している。トゥーレ協会の一員でもあって、反ユダヤ主義、民族主義における思想本をいくつも出版している。アドルフ・ヒトラーに大きな思想的影響を与えており、彼が我が闘争を執筆するにあたって、エッカートへの敬意を前文で表明している。