曖昧さ回避
1.オリオン大星雲中心部の星生成領域にある散開星団。ラテン語で「台形」(不等辺四角形)を意味する。
2.高山一実による小説。本項ではこちらを解説。
概要
『トラペジウム』は、高山一実による小説であり、当時乃木坂46に在籍していた高山が構想4年、制作2年をかけてアイドルを目指す女の子について綴り、雑誌『ダ・ヴィンチ』の2016年5月号から2018年9月号まで連載小説という形で掲載されていた。自分の思いを書いたメモ、学生時代の出来事を思い出しながら構想を練った。
執筆にあたって、対面する機会があった朝井リョウや羽田圭介からアドバイスを受けており、そのアドバイスを参考にしながら執筆を進めていった。
ちなみに、タイトルは上述の「1.」を主人公達に例えて名付けられた。
2018年11月、単行本化(KADOKAWA)。書籍化に伴い大幅に加筆修正された。2020年4月、文庫本化(角川文庫)。翻訳版として、韓国語版、台湾版、中国語版も発売された。
2023年12月にアニメ映画化が発表。制作はCloverWorksで、高山も原作者として演出、シナリオ、衣装監修を担当している。主題歌はMAISONdesの「なんもない feat. 星街すいせい, sakuma.」。翌2024年5月10日に公開された。
アニメ化に際して、展開や登場人物が一部変更されている。
映画に合わせて、公開直前である4月に百瀬しのぶによるノベライズが角川つばさ文庫から刊行。
また8月にコミカライズ化が予定され、作画は和遥キナが担当する。
あらすじ
帰国子女の主人公・東ゆうはカナダにいた頃、録画テープに記録されていた歌を通じてアイドルを知る。星を指す『トラペジウム』の書名は、そのアイドルが放っていた光に由来する。その光に感動したゆうはアイドルになりたいと願う。高校進学後、アイドルになるために4箇条【①SNSはやらない、②彼氏をつくらない、③学校では目立たない、④東西南北の美少女を仲間にする】を課し、高校生活を送るゆうは、地元城州の東西南北からアイドルを志すメンバーを集め、4人組のグループを結成する。
作風
本作は「手紙」をコンセプトに、作者の高山が作中にメッセージをしのばせている。元同期の西野七瀬曰く、「登場人物には自分を含め乃木坂46のメンバーの面影が感じられる。」とのことで、高山も「アイドルを辞めるときの3つの要素である恋愛、お金、夢を登場人物に込めている。」「メンバーがモデルというわけではないが、メンバーがいたからこそ書けた作品。」と語っている。
舞台となる東西南北の学校は四神から発想を得ている。
また、「アイドル」という夢に向かって突き進むストーリー故に明るい印象が強い一方で、アイドルが持つダークな一面も描いており、高山が10年近くアイドルとして活動していた経験もあってか、かなりリアルに描写されている。
本人曰く、「いい子しかいなかったら物語はいい方向にしか進まない」「『トラペジウム』は『不等辺四角形』を意味するから、それを登場人物達に当てはめて人間の不完全さというか、"ぐちゃぐちゃ"を表現したかった」と語っており、狙ってこの展開を描いたことを認めている。
登場人物
東西南北(仮)
主人公。アイドル志望の女子高校生。カナダに在住していたためか英語が得意。プロデュース能力を持つが、心の中ではかなりの毒舌家。また、自分本位な性格であり本人も後に「他人のためとは言っておきながら結局全部自分のため」「優しい自分を取り繕って都合が悪くなると他人を傷つける」と独白している。
西地域に住むロボットコンテストに熱中する工業高専の工学少女。いつも長袖シャツやパーカーを着用しており萌え袖になっている。男性が好む「かわいい」を詰め込んだような子。人前に出る事が苦手。
南地域に住む縦ロールの似合うTHEお嬢さま。テニス部に所属しており、お蝶婦人のような雰囲気を持つ。しかし、テニス部の中では実力は下位らしく、本人も「誰よりもテニスが弱い」とコンプレックスを抱いていることを認めている。
実家はプライベートプール付きの豪邸。
北地域に住むゆうの小学校の同級生であり、陰のオーラをまとう黒髪ロングの女子高生。ボランティア活動をしており、「にこきっず」というボランティア団体に所属している。
ゆう曰く小学校時代と比較すると雰囲気も顔も変化しているようで、一目で彼女だとは気づかなかった。
周辺人物
くるみと同じ工業高専に通う、カメラ好き男子。ロボット研究会の幽霊部員でもある。ゆうの計画の協力者。
- 水野サチ(CV:木野日菜)
ボランティア活動の中でゆう達が出会う少女で、両足が義足の為車椅子に乗っている。アイドルが大好き。
- 伊丹秀一(CV:内村光良)
ボランティアの中でゆう達が出会う老人で、翁流城案内の通訳ボランティアをしている。現役時代には貿易関係の仕事をしていたため6か国語を話せる。ゆうの事を「アジマさん」と呼ぶ。
- 老人A(CV:高山一実)
- 老人B(CV:西野七瀬)
翁流城案内の通訳ボランティア。伊丹と並んで登場する。
- 古賀萌香(CV:久保ユリカ)
TV番組制作会社・エルミックスでADをしている女性。関西弁で喋る。自称「社会人3年目の崖っぷちAD」で、翁流城の取材で出会ったゆう達をスカウトする事となる。遠藤とも知己の関係。
- 馬場
不登校児や障がいを抱えた子供の居場所として「ババハウス」という養護施設を運営するふくよかな女性で元養護教諭。「にこきっず」というボランティア団体も運営している。
- 遠藤(CV:東地宏樹)
芸能事務所・マルサクトの社員。歯はインプラント。ADの古賀と親交があり、彼女の紹介でゆう達を自身の芸能事務所へ所属させた。
- アッコ
ゆうと同じ高校に通う同級生。ゆうとは別クラスではあるものの、「困ったことがあったら何でも言ってね」と声を掛けている。その一方で、陰でゆうの悪口を言っており、そのこともあってゆうは彼女を嫌悪している。
原作小説版のみの登場人物
- ミッツー
ゆうと同じ高校に通う同級生で、幼稚園から一緒の学校に奇しくも通っている。スポーツが得意。笑顔が「さまぁ~ずの三村に似ている」とゆうに思われている。
スタッフ
音楽
- 「なりたい自分」
東西南北(仮)のデビューシングル。アニメオリジナル楽曲。
- 「方位自身」
エンディング曲。原作者の高山自身が作詞を担当。本人が歌唱していない等変則的な形にはなるものの、乃木坂46のメンバー(OG含む)が作詞を担当し、それが音源化するのは白石麻衣、山下美月に続いて3人目。
音源化にあたって、デモ音源の歌唱を後輩メンバーの与田祐希が担当しており、デモ音源Ver.が同年5月18日にアニプレックス公式Youtubeチャンネルで公開された。
余談
(13:14~)
高山の後輩メンバーである賀喜遥香と井上和が「乃木坂配信中」でのCloverWorks潜入企画で目パチを体験しており、2人が担当したシーンが実際に映画本編でも使用されている。
・高山と、高山の同期で友人でもある西野七瀬が伊丹のボランティア仲間である老人役でCVを務めている。高山曰く「グループ在籍時になぁちゃんがおばあちゃんのモノマネをしていて、むちゃくちゃ上手かったのを思い出して…。」とのことで、それをきっかけにオファーしたとのこと。
・映画では、高山の出身地である千葉県が舞台であることがはっきりと描写されており、実際に南房総市や館山市、千葉大学が制作協力としてクレジットされている(ただし、主人公たちの住む地域、学校、翁流城はモデルになった場所はあるが架空の名称が与えられてる)。
・『乃木坂工事中』や『日向坂で会いましょう』に関する小ネタ、高山がファンと公言しているUVERWorldのボーカル・TAKUYA∞にまつわる小ネタもあるなど、高山ファン、坂道ファンにはクスリと笑えるちょっとした演出も豊富。
・東ゆうの強烈なキャラクター性など本作特有ともいえる癖のある部分に嫌なものを感じる人(特に原作未読勢が顕著)が少なくなかったため、公開早々にX(旧twitter)にて本作を酷評するツイートがバズるなど出足は厳しかったものの、次第にその癖が気になり何度も足を運ぶうちに本作のファンとなる人が続出した。このことから本作はファンから「遅効性の毒」と称されている。その「毒」にあてられたファンの熱量たるや、2024年の夏コミに総計100名以上が寄稿した合同誌が出されたという凄まじさである。
・ファンの間では、本作の観劇を「トラペジウム光線浴びてくる」と呼称する向きがある。ついでに言えば、かの光の国と星団としてのトラペジウムはいずれもオリオン座の領域に所在している。(トラペジウム星団はオリオン大星雲があるM42星雲、光の国はM78星雲)