曖昧さ回避
- 夢野久作の小説。代表作でもある。本項にて解説
- 漫画『文豪ストレイドッグス』のキャラクターが使う異能力。本項「余談」にて記載。
- pixivユーザーの1人・西公太朗氏によるイラストのシリーズ。本項「余談」にて記載。
- 『マジンガーZ』の漫画版に登場する機械獣。→ドグラ・マグラ(機械獣)
- 漫画『君は008』に登場するテロ集団。→ドグラ・マグラ(君は008)
- 漫画『ONEPIECE』に登場するカーリー・ダダンの子分である2人組。→ドグラ・マグラ
概要
巻頭歌
胎児よ
胎児よ
何故躍る
母親の心がわかって
おそろしいのか
精神病患者を題材とした「狂人の開放治療」を下地に、10年の長きに渡る構想・推考・執筆の末に完成した。作者自らは「これを書くために生まれてきた」と公言していたという。ちなみに発売年の翌年に作者は亡くなっている。
大正15年頃の日本を舞台に、記憶を失い自分が誰なのか分からなくなった主人公が、自分の目覚めた大学病院の精神病練内で記憶を甦らせる為に奔走するという物語。文章の大半は書簡体形式で構成される。
あまりにも奇抜で混迷を極めた内容から『読むと発狂する小説』として有名。文学界においては、小栗虫太郎の『黒死館殺人事件』、中井英夫の『虚無への供物』と合わせて「日本三大アンチミステリー(三大奇書)」の一つに数えられている。
これに竹本健治の『匣の中の失楽』を加えて四大奇書、さらに舞城王太郎『ディスコ探偵水曜日』を加えて五大奇書と呼ぶ場合もある。
タイトルの由来に関しては、「戸惑う・面食らう」などがなまった言葉や、ある種の方言ではないかという説があるが、定かではない。
主な登場人物
私
記憶を失った主人公の男性。後述する教授『若林』の助力により、記憶を取り戻すべく行動を起こす。
モヨ子
主人公が物語の最初に声を聞く人物。主人公が戦慄を覚えるほどの美貌の持ち主。
若林によると『私』の従妹であるらしく、彼のことを「お兄様」と呼んでいる。
『私』が記憶を取り戻すと同時に、彼と共に自由の身になれるというのだが……。
若林鏡太郎
主人公の目覚めた大学病院における法医学の教授。
『私』の記憶を復活させる手助けとして、モヨ子に面会をさせたり資料の提供を行う。
正木敬之
若林の大学時代の同級生。彼とはライバル関係にあたる存在だったようだ。
奇行の多い人物として知られ、『キチガイ地獄外道祭文』『胎児の夢』といった独特なタイトルの論文を書いていた。
『私』が目覚める一か月前に自殺したらしいのだが……。
呉一郎
過去に三件の殺人を犯し、生母、婚約者、自分と同じ病院の患者2名を殺害した19歳の青年。彼の起こした事件の謎を解く鍵が、「私」の失われた記憶の中にあるらしいが‥‥。
発狂するといわれる理由
本作に対して、おどろおどろしい噂が広まっているのは、ひとえにこの小説が「内容の要約があまりに困難」という評価が下されやすいことに由来する。
作中で主人公は記憶復活の為の行動を起こすが、そこから終盤までの過程には様々な事件の回想や、作者による精神科師の現状を憂いた主張などが繰り返され、ストーリーの解説が非常に困難なのである。
当然それは読者が物語を読む際にも影響を及ぼし、読者によっては自身の理解をはるかに超えた内容に困惑させられる場合もある。
こういった事情から発売当時「この物語を一度に全て理解するには正気をもってしては不可能」とされ、読むと発狂するという伝説が生まれたのだった。
しかし逆に言えば、読書好きであれば再読を繰り返し考察を重ねることにより一定の理解の余地は生まれ得るということでもあり、現代で言えば「中毒性」のある味わいを醸し出す作風にもなっている。
映像化
「映像化など到底無理」としか思えない当作だが、何と1988年に実写映画化されている。監督は松本俊夫、脚本は松本と大和屋竺(大和屋暁の父)。「私」を松田洋治、若林博士を室田日出男、そして正木博士を桂枝雀が演じている。
複雑極まりない原作を可能な限り忠実にわかりやすくコンパクトにまとめ、また正木役の桂枝雀の怪演などもあって、原作ファンにもそうでない観客にも概ね好評な佳作に仕上がっていた。
また2012年にはCGアニメ化されたが、こちらの方は何故か舞台を未来の宇宙に置き換えたSF作品に……いやはや、どうしてこうなった?
余談
- 漫画『文豪ストレイドッグス』において、夢野久作の異能力として登場している。
- その内容は原作に忠実で、「自身を傷つけた相手を呪う」という精神操作及び幻覚に該当する。呪われた者は敵味方構わず、発狂しながら襲いかかる。また、この能力の厄介な点は本人の意思では能力の解除が出来ない点であり、あらゆる異能を無効化させることが出来る彼の力なくしてドグラ・マグラは止められない。
関連タグ
ドグラマグラ(表記ゆれ)
ミステリー 本作のジャンル『アンチミステリー』についてはこちらを参照。
角川文庫(米倉斉加年による印象的なカバーイラスト)