小栗虫太郎
おぐりむしたろう
※文豪ストレイドッグスの登場人物については小栗虫太郎(文豪ストレイドッグス)を参照。
1901年3月14日、東京生まれ。本名は栄次郎。
電機商会事務員、印刷所経営、父親の遺した骨董品売り食い生活を経て、
1933年『完全犯罪』で当時の主力探偵小説雑誌〈新青年〉において異例の新人巻頭デビューを飾る。
(当初執筆予定の横溝正史が結核で倒れ、持ち込み作品だったこれが穴埋め起用されたことによる。ちなみにこの時書かれなかった作品『死婚者』は、後に初期代表作のひとつ『真珠郎』として完成されている)
翌34年、同誌に『黒死館殺人事件』を連載。
その後は(戦争色が濃くなり探偵小説が弾圧の対象となった時局のせいもあってか)「新伝奇小説」と銘打った秘境冒険物などに移行。
1946年2月10日、疎開先の信州で急逝。享年45。「闇酒のメチルアルコール中毒死」説が流布しているが、遺族によれば「完全なる脳溢血」。
戦後執筆を計画していた作品のほとんどは書かれないままに終わり、それによってぽっかり空いた雑誌連載の穴を今度は横溝が「弔い合戦のつもりで」長編作品二本(『本陣殺人事件』と『蝶々殺人事件』)を二誌並行執筆するという荒技で埋め、借りを返したエピソードはミステリファンの間で有名。
『黒死館』に代表されるルビ、横文字、活字にない文字、ルビがないと誰にも読めない漢字、ルビがあっても誰も意味を解し得ない熟語、作者と作中登場人物以外には誰一人として解読できっこない奇ッ怪な謎暗号、ひどく回りくどく複雑で異風すぎる情景描写‥‥等々をこれでもかと多用しゴテゴテ積みあげた難読文章と、一体どこからその知識を得た、お前の言っていることはどこまで本当のことなのか? と激しく首をひねり頭を抱えたくなる博覧強記‥‥ならぬ博覧狂気な衒学趣味(事実ホラ知識も多数含まれている)が特徴。わざと難しく書いている、そうやって読み手を拒絶することで逆に作品価値を高めようとしているのでは? という評論もあった程。
ミステリ小説としてのトリックも江戸川乱歩に「大部分具体化に耐えない」とハッキリ断言されたように、いわゆるトンデモなそればかり。よってこの作家の探偵小説を探偵小説として読むのは大間違いで、最初から論理性・整合性・現実性その他に期待しない小栗ワールドともいうべき異世界夢想物語、だと割り切って挑むのが正しい態度であろう(という見解は乱歩をはじめ多くの評論家・研究者達の一致するところで、「逃避主義」とも呼ばれた)。
ただそういう芸風(?)の作品ばかりではなく、例えば若い少女二人の百合恋愛を事件絡みで綴った異色作『方子と末起(まさことまき)』などは、本当に小栗の作品かこれ? と疑いたくなるほど平易な調子で書かれている。
創作姿勢に妥協は全く無かったようで、「原稿締め切りを遅らせた挙句、30枚だった約束が80枚になる」「400字詰め原稿用紙の欄外まで文字で真っ黒になるまで書き込み、実質600字詰め相当になってしまう(だが原稿料は1枚幾らの計算なので、結局損をしている)」ということも多々あったという。
英仏語など外国語に通じ、商業誌デビュー作『完全犯罪』や後期の『人外魔境』シリーズ等において様々な異国や秘境の情景をさも自分で見てきたかのように妖しく生き生きと克明緻密に書いた作家だったが、実は40歳の時に軍の文士徴用でマレーシアに赴くまで洋行経験どころか関東平野から一歩も外へ出たことが無かった。生活費を犠牲にし、原稿料収入の大半を注ぎ込んでまで蒐集した和漢洋の膨大な書籍がその創作のタネで、特にナショナルジオグラフィック・マガジンを重宝していた。
別名「書斎の冒険者」。
大の雷恐怖症で知られ、外出時なら雷音と反対方向へ歩き出してデパ地下等へ逃げ込み、自宅なら押し入れの中で布団をかぶり震えていた。
神経質で気難しそうな表向きのイメージに反し、童心溢れる無邪気な一面もあった。「自宅で亀やナマズ、イモリなどの小動物を沢山飼い、変な名前をつけて嬉々としながら毎日餌をやる」「自分の息子達とテニポン(自宅廊下をコートにしてピンポンラケットで行うテニス)や紙相撲に本気になって興ずる」などの逸話がある。
当時の作家仲間達の証言も「最初とっつきにくい難物だと思ったが、つきあってみると案外以上に親切でいい人だった」「少年のように純真な心根の持ち主だった」という評価が多い。
1935年1月に東京で行われた『ドグラ・マグラ』出版記念会に出席し、その際夢野久作に会っている。しかし両者共に相手の印象や評価については、ほとんど詳しく書き残していない(ただ子息の証言によると、小栗は生前「尊敬できる先輩作家は乱歩と夢野だけ」と言っていたという)。
この時代の文士・知識人としては珍しく(?)、大の共産主義(と酔っ払い)嫌いだった。但しその理由は「頭のいい人間と悪い人間を一緒くたにされてたまるか」。
だからといって帝国・軍国主義にも迎合することもなく、軍を批判する作品を書いて憲兵とやり合ったり、また大のヒトラー嫌いでも有名だった。
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